ロードスタビライザとは?用途や種類、免許・資格を解説
ロードスタビライザは、道路の舗装工事や補修作業などの現場で使用される重機の一つです。土壌を粉砕しながら安定剤を混合することで、地盤を均質かつ強固な状態に整える役割を担います。
ロードスタビライザは用途や種類が多岐にわたるため、導入する際は役割や操作に必要な免許について理解しておくことが大切です。特に建設業事業者にとっては現場のニーズに合った機械選定や適切な運用方法を把握し、効率的かつ安全な工事の実現が求められます。
本記事では、ロードスタビライザの基本的な特徴や用途、種類について解説します。また、操作に必要な資格や免許についても触れ、現場運営に役立つ情報を提供します。ロードスタビライザの適切な活用を通じて、施工品質や作業効率を向上させるための参考にしてください。
目次
ロードスタビライザとは?
ロードスタビライザ(英語:Road StabilizerまたはSoil Stabilizer)とは、路上を自走しながら路盤を破砕混合する重機です。
舗装されている道路での路上路盤再生を効率良く作業するために、機体の中央部で強力なビット(刃)の取り付けられたロータが回転して路面を削り取ります。アスファルト層や路盤に接着効果を高める乳剤やセメント、石灰などを混ぜて均一に混合しながら敷きならし、前進していきます。
こうした一連の作業を1台で行えるのが、ロードスタビライザの大きな特徴です。
参考:一般社団法人 日本機械学会「機械工学辞典|ロードスタビライザ」
ロードスタビライザの用途
ロードスタビライザを活用すれば、道路の舗装工事や補修作業などの現場で効率的かつ精密に作業を進めることが可能です。
道路舗装は、アスファルト混合物層と路盤の2層構造で成り立っています。このうち路盤は、アスファルト混合物層からの荷重を支え、その荷重を下層の路床全体に均等に分散させることで、路面の安定性と耐久性を保つ重要な役割を果たします。
そのため、路盤は全体に均一な密度を保ち、荷重に耐えうる十分な強度と剛性を持つように構築しなければなりません。この状態を実現するために、粒度を調整した材料を用いた安定処理が重要となります。
そこで、路盤の支持力を均一にするため、粒度を調整した上でアスファルト乳剤やセメント、石灰などの添加剤を使用して安定処理(混合作業)が行われます。この際、現場で添加剤を攪拌・混合するために活躍するのが、ロードスタビライザです。
ロードスタビライザの種類
ロードスタビライザには、大きく分けて2つの種類があります。一つは、路上再生路盤工法用のホイール式と、もう一つは、接地圧が低く走行時の安定性に優れたクローラ式で、路盤の改良だけでなく、工場敷地などの軟弱地盤の安定処理にも利用されています。
ディープスタビライザ
ディープスタビライザは、軟弱路床の深い層を安定化させるための重機で、一般的にはロードスタビライザとは異なるカテゴリに分類されます。ただし、地盤安定化を目的とする点では共通しており、広義にはロードスタビライザの一種と見なされることもあります。
特に、軟弱な路床を安定させる際には、通常のロードスタビライザでは届かない深さまで添加剤を混合・攪拌する必要があり、この「深い改良」を可能にするのがディープスタビライザです。ロードスタビライザでは対応できない作業を補完する役割を果たします。
なお、現在は多くの道路で路上再生が完了しており、再生路盤が再び劣化することで、今後は再生路盤を再度活用する「再々生工事」の需要が増えると見込まれています。
再々生工事とは、既存の道路の路盤を補修・再利用し、路面の耐久性や安全性を向上させる工事の一種です。この工事は、資源の有効活用や環境負荷の低減を目的として行われます。
この変化に伴い、ホイール式・クローラ式を問わず、深い改良や広範囲の処理が可能な大型のロードスタビライザが必要になることが予想されています。
参考:一般社団法人 日本建設機械工業会「ロードスタビライザ」
ロードスタビライザの免許・資格
ロードスタビライザを操作・運転するためには、以下の2つの免許・資格が基本的に必要です。
- 車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転技能講習
- 大型特殊自動車免許
これらの免許・資格は、ロードスタビライザを安全に運用するために欠かせません。それぞれの免許・資格について詳しく解説しますので、ロードスタビライザの導入前にしっかり確認しておきましょう。
車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転技能講習
ロードスタビライザは、「車両系建設機械」に分類される重機です。車両系建設機械を操作するために求められる資格は、機体重量によって以下の2種類に分かれます。
機体重量 | 資格の名称 |
---|---|
3t以上 | 車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転技能講習 |
3t未満 | 小型車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)の運転の業務に係る特別教育 |
ただし、現在普及しているロードスタビライザの機体重量はほとんどの場合3t以上です。そのため、車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転技能講習を受講する必要があります。
この運転技能講習は、業務でロードスタビライザを操作する場合、私有地で行う場合であっても必ず受講してください。。
以下に、「車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転技能講習」の概要を紹介します。
資格の情報 | 内容 |
---|---|
費用 | 50,000円〜110,000円前後 |
日数 | 14時間〜38時間(2日〜6日間)前後 |
受講資格 | 18歳以上 |
申込先 | 都道府県労働局長登録教習機関 |
ロードスタビライザが属する「車両系建設機械」の定義や種類、免許・資格について理解を深めたい場合は、併せて以下の記事をお読みいただくことをおすすめします。
大型特殊自動車免許
基本的に現在普及しているロードスタビライザは、道路交通法の分類で大型特殊自動車に含まれます。そのため、ホイール式のロードスタビライザを公道で運転する場合、公道上での運転には「大型特殊自動車免許」の取得が求められます。
なお、クローラ式のロードスタビライザは、クローラ(履帯)を使用しており、道路を損傷する恐れがあるため、公道での走行が法的に禁止されています。
大型特殊自動車免許の試験概要を以下にまとめました。
免許の情報 | 内容 |
---|---|
費用 | 教習所での取得:70,000~130,000円前後 一発試験での取得:6,000円前後 |
日数 | 1日〜17日間程度 |
受講資格 | ・18歳以上 ・視力:両眼0.7以上、片眼0.3以上(片眼の視力が0.3に満たない場合は、他眼の視野が150度以上 ※眼鏡・コンタクト可) ・赤、青、黄の色彩の識別ができる ・10mの距離で90dBの警報器の音が聞こえる(補聴器で補われた聴力も含む) ・自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある四肢もしくは体幹の障害がない |
申込先 | 大型特殊自動車免許を取得可能な自動車教習所 |
ロードスタビライザをはじめとする建設機械・重機の免許・資格について、詳しくは以下の記事で解説しています。ロードスタビライザ以外の重機の導入も検討している場合には、併せてご覧ください。
参考:警視庁「大型特殊免許試験(直接試験場で受験される方)」
ロードスタビライザの歴史
日本におけるロードスタビライザの導入経緯には不明な点が多いものの、ロードスタビライザの技術は、ドイツのボーマク社から導入されました。
その後、日本国内の建設機械メーカーが独自の改良を加えることで、より日本の地盤特性や施工条件に適した形へと国産化が進みました。この取り組みにより、施工の効率化と高品質な道路づくりが可能になりました。
日本でロードスタビライザが本格的に普及したのは、昭和50年代のことです。当時、交通量が急増し、幹線道路の多くで路盤の破損や亀裂が目立つようになりました。
この課題を解決するために、既存のアスファルト混合物層と路盤層を直接混ぜ合わせ、同時に添加剤を加える「路上再生路盤工法」が採用されました。
1970年頃までは新設工事が中心でしたが、その後、道路の維持管理が主流となり、1988年には修繕工事の件数が新設工事を上回るようになりました。また、1987年には路上再生路盤工法の技術指針が策定され、この技術とともにロードスタビライザの普及が加速しました。
今後も、ロードスタビライザは日本の道路工事において重要な役割を担い続けるでしょう。
まとめ
ロードスタビライザは、道路の舗装工事や補修作業などの現場で重要な役割を果たす重機です。土壌を粉砕しながら安定剤を均一に混合することで高品質な地盤を作ることが可能で、施工の効率化や耐久性の向上を目指す建設業事業者にとって欠かせない重機として位置付けられています。
しかし、ロードスタビライザを効果的に運用するためには、重機の特性や操作技術に関する深い理解が必要です。その上で、事業者としては現場の状況や必要な性能を十分に検討し、適した機種を導入しましょう。