建設・土木支援情報 2024.08.19

建設機械・重機の購入・導入の補助金・税制優遇一覧

建設業界では、効率的な作業を行うために高性能な建設機械や重機の導入が不可欠です。しかし、これらの機械は高額となることが多く、その場合、購入には多大な資金が必要となります。そのような場合に、企業が負担を軽減するために利用できるのが、国や地方自治体が提供している補助金や税制優遇制度です。

本記事では、建設機械や重機の購入・導入に際して利用できる補助金や税制優遇制度について2024年6月時点の最新情報をもとに詳しく解説します。これから建設機械の購入を検討している方にとって、役立つ情報を提供しますので、ぜひ参考にしてください。

建設機械の購入・導入の補助金

建設機械の購入・導入に役立つ補助金

まずは、建設機械の購入・導入にあたって利用できる主な補助金を一覧にしてご紹介します。

  • ものづくり補助金
  • 高度安全機械等導入支援補助金事業
  • 二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金

ひとことに「建設機械の購入・導入の補助金」といってもさまざまな種類があるので、それぞれの特徴を把握し、自社で活用できるものを探して申請を検討すると良いでしょう。

ここからは、建設機械の購入・導入にあたって利用できる「補助金」の制度について、それぞれの概要を順番に解説します。

なお、本記事で取り上げている各補助金の制度に関する情報は、2024年6月現在の内容です。申請を検討する際は、必ず各制度の最新情報を公式HPでご確認ください。

ものづくり補助金

ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)は、中小企業・小規模事業者などが取り組む働き方改革、賃上げ、インボイス導入といった制度変更への対応のほか、革新的サービスや試作品開発・生産プロセスの改善など、生産性を向上させるための設備投資を支援する制度です。

中小企業庁および独立行政法人中小企業基盤整備機構によって運営されています。

ものづくり補助金の対象となる経費は、類型によって異なりますが、建設機械の購入・導入も対象に含まれています。

下表に、2024年6月時点で公開されている最新版(18次締切分 ※応募締切:2024年3月27日)の内容をもとに、ものづくり補助金の概要をまとめました。

補助金情報 概要
対象者 中小企業者、特定事業者の一部、特定非営利活動法人、社会福祉法人
条件
  • 以下の要件をすべて満たす3~5年の事業計画を策定していること
    • 計画期間中に、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加させること(特定の要件を満たす場合、1%以上の増加でも可)。
    • 計画期間中に、事業場内で最も低い賃金を、地域別最低賃金プラス30円以上に設定すること
    • 計画期間中に、事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加させること
  • 応募申請時点で、補助事業を実施する場所(工場や店舗など)を所有していること
  • その他の除外事由に該当しないこと

※上記のほか、各枠組みや類型によって追加の条件が設定されている場合があり

補助上限額(例)
  • 省力化(オーダーメイド)枠:100万円〜8,000万円
  • 製品・サービス高付加価値化枠:100万円〜2,500万円
  • グローバル枠:100万円~3,000万円
HP https://portal.monodukuri-hojo.jp/

なお、ものづくり補助金では、実際の採択事例も公開されています。下表に、建設機械・重機の購入・導入に関するものづくり補助金の採択事例をまとめました。

都道府県 青森県 山形県 鳥取県
企業名 株式会社山道建設 株式会社クリーンシステム 株式会社赤松産業
事業計画名 ICT搭載建機導入による革新的サービスと管理技術者の育成 特殊アタッチメント導入による木くず再生工程及び選別作業工程の作業効率化 過酷で危険な森林伐採作業を「オペレート作業」へと転換するためのハーベスタの導入
事業計画の補足 ICTブルドーザーの購入・導入 木くずの前処理作業の効率化を目的とした、重機用特殊アタッチメント等の導入 「生産効率の大幅改善」「危険作業の回避」を可能とする「伐採現場へのハーベスタ導入」
業種 総合工事業 廃棄物処理業 総合工事業
技術分野 材料製造プロセス
年度 平成29年度 平成25年度 平成29年度

参考:ものづくり・商業・サービス補助金事務局「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業公募要領(18次締切分)1.1版」
ものづくり補助金総合サイト「成果事例のご紹介」

高度安全機械等導入支援補助金事業

高度安全機械等導入支援補助金事業は、所定の建設機械に取り付けるための高度な安全性能を有する特定の安全装置を購入・改修する中小企業事業者等に補助金を交付する事業です。

ここでいう所定の建設機械とは、油圧ショベル、ホイールローダーなどを指します。また、積載形トラッククレーン過負荷防止装置の購入・改修経費の補助も行います。

下表に、2024年6月時点で公開されている最新版(令和6年度版 ※Web申請登録期間:令和6年4月10日(水)~令和7年1月24日(金))の内容をもとに、高度安全機械等導入支援補助金事業の概要をまとめました。

補助金情報 概要
対象者 建設業許可を有し、所定の条件を満たす企業(※)
条件 【油圧ショベル】
所定の補助対象機種であること【ホイールローダー】
所定の補助対象機種であること【積載形トラッククレーン】以下の3点を満たす積載形トラッククレーンの過負荷防止装置であること

  • つり上げ荷重が3t未満の積載形トラッククレーンに取り付ける過負荷防止装置であること
  • 過負荷となった場合に警報を発し、かつ、停止する機能を有するものであること
  • 一社)日本クレーン協会規格 JCAS2209-2018「積載形トラッククレーン過負荷制限装置の基準」に準拠する型式であること
補助上限額
  • 安全装置1機あたり100万円(補助率1/2)

【油圧ショベル、ホイールローダーの場合】

  • 安全装置が自動減速・停止機能を伴うもの:安全装置1機当たり100万円
  • 安全装置が監視・警告機能を伴うもの(複数カメラ):安全装置1機あたり50万円

※同一申請者からの申請上限は年度内500万円

HP https://www.kensaibou.or.jp/support/subsidy/index.html#anc08

(※)所定の条件は下表のとおり。

下記のいずれかを満たすことが条件
業種 資本金の額又は出資の総額 常時使用する企業全体の従業員数
①建設業、その他の業種(②~④を除く) 3億円以下 300人以下
②卸売業 1億円以下 100人以下
③サービス業 5,000万円以下 100人以下
④小売業 5,000万円以下 50人以下

二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金

二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金は、革新的な省CO2を達成することが可能な部材や素材(セルロースナノファイバー(CNF)や窒化ガリウム(GaN))を活用し、実際の製品への導入を図る事業者が商用規模生産のための設備投資等を行う事業に要する経費の一部を補助する事業です。

このうち、建設機械・重機の購入・導入にあたっては、「産業車両等の脱炭素化促進事業のうち、建設機械の電動化促進事業」を活用できます。

下表に、2024年6月時点で公開されている最新版(令和6年度版 ※公募期間:令和6年5月27日(月)~令和6年9月30日(月))の内容をもとに、二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(建設機械の電動化促進事業)の概要をまとめました。

補助金情報 概要
対象者
  • 民間企業
  • 独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第2条第1項に規定する独立行政法人
  • 一般社団法人・一般財団法人及び公益社団法人・公益財団法人
  • その他環境大臣の承認を経て協会が認める者
補助対象建設機械
  • 国土交通省が認定したGX建設機械(※)であること
  • 上記の認定機械を充電するために、当該GX建設機械の製造事業者、輸入事業者等からの申請に基づき事前に協会で審査・承認されたものであり、上記GX建設機械とあわせて調達するもの
  • 補助対象となる建設機械稼働時にCO2を無排出で運用できること
  • 申請対象建設機械が国の他の補助金を受けていないこと

(※)国土交通省が「GX建設機械認定制度」で認定した建設機械のこと。

補助上限額 【GX建設機械】
GX建設機械本体の購入価格-同規格の標準機械(従来建設機械)の価格)×補助率(2/3)【充電設備】
充電設備の購入価格 ×補助率(1/2)※上限額の詳細は、「一般社団法人 日本建設機械施工協会」に要問い合わせ
HP https://jcmanet.or.jp/hojojigyo-top/hojojigyo/

参考:一般社団法人 日本建設機械施工協会「令和6年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(産業車両等の脱炭素化促進事業のうち、建設機械の電動化促進事業)公募説明」

建設機械の購入・導入の税制優遇

建設機械の購入・導入にあたっては、事業者の経済的負担を軽減するために税制優遇も設けられています。

建設機械の購入・導入にあたって利用できる主な税制優遇を一覧にしてご紹介します。

  • 中小企業投資促進税制
  • 先端設備等導入計画

それぞれの税制優遇の概要を把握しておき、建設機械を購入・導入する際に有効活用しましょう。

中小企業投資促進税制

中小企業投資促進税制は、中小企業における生産性向上等を図るべく、一定の設備投資を行った場合に、 税額控除(7%※)もしくは特別償却(30%)の適用を認める措置です。

(※)税額控除の適用は、資本金3,000万円以下の中小企業者等に限定される

本優遇税制は従来の「中小企業促進税制」の一部見直し(対象業種の一部見直しなど)を行ったもので、適用期間が2025年3月31日まで延長されています。

また、本優遇税制は、2023年4月1日より新設された「生産性向上や賃上げに資する中小企業の設備投資に関する固定資産税の特別措置」(2025年3月31日終了予定)との併用が可能です。ただし、中小企業経営強化税制との併用はできません。また、レンタル事業者(レンタル資産)は対象外とされています。

下表に、2024年6月時点で中小企業庁から公開されている最新情報をもとに、中小企業投資促進税制の概要をまとめました。

税制優遇の情報 概要
対象者
  • 中小企業者等(資本金額1億円以下の法人、農業協同組合、商店街振興組合等)
  • 従業員数1,000人以下の個人事業主
対象設備(例)
  • 機械及び装置(1台160万円以上)
  • 測定工具及び検査工具(1台120万以上、1台30万円以上かつ複数合計120万円以上)
  • 貨物自動車(車両総重量3.5t以上)など
措置内容 【個人事業主、資本金3,000万円以下の中小企業】
30%の特別償却もしくは7%の税額控除【資本金3,000万円超の中小企業】
30%の特別償却
HP https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/tyuusyoukigyoutousisokusinzeisei.html

参考:コベルコ建機「中小企業等経営強化法に基づく優遇税制のご案内 2023年4月版」

先端設備等導入計画

先端設備等導入計画は、中小企業が設備投資を通じて労働生産性の向上を実現するための計画です。この計画は、設備の導入先となる市区町村が国に対して「導入促進基本計画」を策定している場合において、その市区町村より認定を受けることが可能です。認定を受けた中小企業では、税制や金融などの支援措置を活用できるようになります。

支援措置の例としては、2023年4月に新設された「生産性向上や賃上げに資する中小企業の設備投資に関する固定資産税の特例措置」が挙げられます。これは、先端設備等導入計画の認定を所在する市区町村から受けた事業者について、固定資産税の軽減措置によって課税標準を最大で5年間にわたり1/3に軽減する等の支援を受けられる措置です。

下表に、先端設備等導入計画の主な要件をまとめました。

主な要件 内容
計画期間 3年間、4年間又は5年間

※従業員に対する賃上げ方針の表明を計画内に記載した場合は、令和6年3月末までに取得した場合は5年間、令和7年3月末までに取得した場合は4年間にわたって1/3に軽減

労働生産性 計画期間において、基準年度(直近の事業年度末)比で労働生産性が年平均3%以上向上すること
先端設備等の種類 労働生産性の向上に必要な生産、販売活動等の用に直接供される下記の設備

【減価償却資産の種類】
機械装置、測定工具及び検査工具、器具備品、建物附属設備、ソフトウエア

計画内容
  • 基本方針及び導入促進基本計画に適合するものであること
  • 先端設備等の導入が円滑かつ確実に実施されると見込まれるものであること
  • 認定経営革新等支援機関(商工会議所、商工会など)において事前確認を行った計画であること

市区町村によって、対象設備及び地域等が異なる場合がある点にご注意ください。

参考:経済産業省 中小企業庁【中小企業等経営強化法】先端設備等導入計画について 令和5年4月
コベルコ建機「生産性向上や賃上げに資する中小企業の設備投資に関する固定資産税の特例措置のご案内 2023年4月新設」

補助金と税制優遇の特徴や違い、併用について

補助金と税制優遇の特徴や違い、併用についてリサーチする人

補助金は、国や地方自治体などが政策目的に沿った事業を行う企業等に対して、資金面を補助するために給付を行う制度です。主として、新規事業・創業促進・雇用の安定などが目的とされています。

これに対して、税制優遇は、一定の要件を満たした団体について、通常とは異なる税制措置がなされる制度です。主に生産性向上・経営強化などが目的とされています。

補助金には、返済義務はありません。ただし、後払いのため、補助事業を実施する時点では自力での資金確保が求められます。一方の税制優遇についても、そもそも金銭の給付がないため、当然ながら返済義務は生じません。

また、本記事でご紹介した補助金と税制優遇は併用が可能です。例えば、ものづくり補助金と中小企業投資促進税制を併用すれば、対象設備に対して最大8,000万円の補助が下りるだけでなく、取得価額の7%の税額控除もしくは30%の特別償却が適用されます。

さらに、ものづくり補助金では賃上げの実施により上限額が引き上げられますが、これと同時に先端設備等導入計画の税制優遇も活用すれば、それぞれ別個に賃上げを行う手間を省けるというメリットもあります。

ただし、要件変更が今後実施される可能性もあるため、補助金や税制優遇を活用する際は公式HPなどで要件を詳しく確認しておきましょう。

建設機械で補助金・税制優遇を活用する流れ

本章では、建設機械の購入・導入にあたって補助金や税制優遇を活用する流れを順番に解説します。

補助金

補助金を受けるためには、当然ながら申請する必要があります。国の補助金は定められたスケジュールでの申請期間が決まっており、経済産業省や総務省、厚生労働省といった省庁が予算を管理しています。必要なときにいつでも申請できるものではありません。

そのため、まずは補助金の条件を確認しましょう。自社が補助金を受給する資格があるのか確認をしておきましょう。大企業では補助金を受給できないケースもあるため、注意が必要です。

次に、申請する補助金を選択・申請します。申請する補助金が決まったら、必要書類をそろえて運営事務局に提出しましょう。以下に、申請時の必要書類の一例をまとめました。

  • 申請書
  • 事業計画書
  • 決算関係書類
  • 印鑑証明書
  • 納税証明書

必要書類は、申請する補助金によって異なります。すぐに用意できない書類もあるため、時間に余裕を持って取り組みましょう。書類に不備があると受給までに時間がかかってしまう可能性があるため、不備や不足点がないよう注意しましょう。

申請の書類を提出したら、運営事務局の採択を待ちます。無事に採択されたら、申請した事業内容に沿って建設機械・重機の購入・導入などを進めてください。

事業が完了したら、事業内容や経費について実績報告書を運営事務局に提出します。内容が適切であったと判断されれば、補助金が支払われます。支給される補助金の金額が大きい場合、複数年にわたって報告書の提出が求められる場合もあるため注意しましょう。

税制優遇

建設機械の購入・導入にあたって税制優遇を活用する際の流れは、それぞれの制度によって異なります。ここでは、中小企業投資促進税制を例に取って、制度を利用する際の大まかな流れをご紹介します。

中小企業投資促進税制を利用する場合、特別な手続きは必要ありません。確定申告書に必要書類を添付したり、必要事項を記載したりして申請を行います。ただし、法人と個人事業主で必要書類が異なることに注意が必要です。

法人が特別償却を申請する場合、確定申告書に以下の書類を添付します。

  • 特別償却の付表:取得設備の内容や償却額
  • 適用額明細書:税額又は所得の金額を減少させる規定を適用する場合、必要事項を記載

法人が特別償却を申請する場合、確定申告書に「中小事業者が機械等を取得した場合の所得税額の特別控除に関する明細書」を添付します。

一方で、個人事業主が特別償却を申請する場合は、青色申告決算書「減価償却の計算」の「割増(特別)償却費」の欄に、特別償却額を記入します。なお、個人事業主が税額控除を申請する場合には、法人と同様です。

建設機械で補助金・税制優遇を活用する際の注意点

建設機械で補助金・税制優遇を活用する際の試算をする人々

資金面での課題があり、建設機械の購入・導入が滞っている企業に対しては、補助金・税制優遇の積極的な活用をおすすめしますが、注意すべき点もいくつか存在します。

補助金と助成金は同一事業内で併用できない

補助金と助成金(※)は、基本的に同一事業内での併用ができません。ただし、同一事業であっても、申請のみであれば複数の補助金・助成金への申請が可能です。

また、地方公共団体やその他の団体が実施する補助金・助成金は、国の補助金などとの併用が認められる可能性もあるため、該当の地域でどのような制度があるのか調べてから申請することをおすすめします。

(※)景気悪化等により雇用の確保や労働環境の整備が難しい会社に向けて、雇用や労働環境、労務問題等の整備・改善を支援することを目的として給付される制度

なるべく早く検討・申請を行う

補助金や助成金には事前に申請の締切日が設定されているほか、予算の上限に達した時点で申請を締め切るケースも少なくありません。そのため、なるべく早い段階での検討と申請が大切です。

なお、助成金や補助金によっては新たに申請の受付が開始されることもあるため、国や東京都をはじめとする地方自治体の動向には常にアンテナを張っておきましょう。

必ず採択されるわけではない

補助金や助成金は、申請しても必ず採択されるとは限りません。申請手続きをしても審査が通らない可能性がある点には注意しましょう。万が一に、申請が通らなかった場合の対応策も考えておくことが大切です。

まとめ

建設機械や重機の購入には多額の初期投資が必要となるケースが多いですが、国や地方自治体が提供する補助金や税制優遇制度を活用すれば、資金負担を大幅に軽減することが可能です。

その結果、中小企業でも最新の建設機械・重機を導入しやすくなり、経営の安定化や作業効率の向上を図れます。また、環境に配慮した建設機械・重機の導入を推進すれば、企業の社会的責任を果たしつつ、環境保護にも貢献できるでしょう。

ぜひ本記事を参考に、最適な補助金や税制優遇制度を見つけてご活用ください。

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