路面切削機とは?用途や使用するタイミング、免許・資格を解説
路面切削機は、アスファルトやコンクリート舗装の表面を削るための重機で、道路の補修工事やリニューアル工事などに欠かせません。老朽化した舗装の劣化部分を効率的に除去し、新しい舗装材を敷設するための下地を整える役割を担います。
路面切削機は、舗装の凹凸を均一に整えるほか、滑り止め効果の向上や排水性の確保といった目的でも使用され、高速道路や一般道、駐車場などの維持管理に広く活用されています。
本記事では、路面切削機の用途や使用するタイミング、操作や運転に必要な免許・資格について詳しく解説します。路面切削機の導入を検討している建設業事業者の方や、適切な活用方法を知りたい方にとって役立つ情報をまとめました。
目次
路面切削機とは?
路面切削機は、交通の影響で損傷した道路を補修する際に、表面を削り取るための重機です。轍(車の通行によってできたくぼみ)やひび割れ、凹凸などの劣化した路面を切削し、新しい舗装を施す準備を行います。
作業時は、車体中央部のカッタービットの付いたドラムが舗装表面を切削します。粉砕物は車体前面のベルトコンベアによって送り出し、ダンプトラックなどに積み込んで搬出します。その後に、切削された部分を再舗装する流れで作業を行います。
路面切削機は、一般道路や高速道路、空港の滑走路などの舗装工事のほか、鉱物採掘や岩盤の切削など道路補修以外の分野でも活用されています。特に道路補修においては「路面切削工法」として定着しており、効率的な施工を支える重要な重機だと言えます。
路面切削機の用途
路面切削機は、道路舗装工事をはじめとする様々な用途に活用できる汎用性の高い重機です。例えば、以下のような作業にも使用されています。
- テニスコートやグラウンドなどのクレイ舗装の撤去
- 土壌改良部分の掘削・除去
- 屋外スポーツ施設の解体・撤去
- 競馬場やパドックの既存土の回収
- 駐車場の砂利層の撤去
一般的な路面切削機は、アスファルトやコンクリートの切削に特化しており、土壌や砂利の撤去には向かないとされています。しかし、用途や機種によっては、砂利層の整地や土壌改良の掘削に用いられるケースもあります。
路面切削機を使用するタイミング
道路の寿命は一般的に10年程度とされ、劣化が進むと交通の安全性が低下し、事故のリスクも高まります。そのため、定期的な補修が不可欠です。
路面切削機は、道路の維持管理や補修工事で重要な役割を果たします。特に、以下のような状況では切削作業が必要となります。
- 道路の老朽化が進んだとき
- ひび割れや凹み、轍が発生したとき
- オーバーレイ工法の限界に達したとき
それぞれ順番に解説しますので、路面切削機を適切なタイミングで使用し、道路の劣化を防ぎましょう。
道路の老朽化が進んだとき
路面切削機の主な役割は、劣化した道路表面を削り取り、新しい舗装材と入れ替えることです。交通量や気象条件の影響で凹凸が生じた路面を平坦にするため、数cm単位で切削し再舗装を行います。
また、橋梁部分や重量制限のある道路では、オーバーレイ工法が適用できない場合があるため、切削工法が用いられます。
ひび割れ・凹み・轍が発生したとき
道路のひび割れや轍は放置するとさらに悪化し、走行時の振動や騒音の原因になります。
そこで路面切削機を使えば、部分的な補修や路面全体の修復が可能です。また、路面に発生したコブや歪みも切削によって整えられ、安全で快適な道路へと再生できます。
オーバーレイ工法の限界に達したとき
オーバーレイ工法(既存の道路に新たな舗装材を上塗りする方法)は、繰り返すと路面が徐々に盛り上がり、適正な高さ(一般的には数センチ〜10cm程度)を超えてしまうことがあります。特に、道路の勾配が変わることで排水性が悪化し、水たまりが発生するリスクが高まります。
そのため、オーバーレイを繰り返すことで舗装が過度に厚くなると、排水性の低下や道路の高さ制限の問題が発生します。適切なタイミングで、路面切削機を使って不要な舗装材を削り取ることが推奨されています。
切削後に新しい舗装材を敷き直すことで、適切な高さと強度を保ち、長期間耐久性のある路面を維持することが可能です。
路面切削機の免許・資格
路面切削機の操作・運転にあたって取得が求められる免許・資格は、以下のとおりです。
- 車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転技能講習
- 大型特殊自動車免許
それぞれの資格について順番に詳しく解説しますので、路面切削機の導入・使用前に確認しておきましょう。
車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転技能講習
路面切削機が属する車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)を使って作業するために求められる資格は、機体重量によって以下の2種類に分かれます。
機体重量 | 資格の名称 |
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3t以上 | 車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転技能講習 |
3t未満 | 小型車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)の運転の業務に係る特別教育 |
基本的に、路面切削機は車両重量が3t以上あるため、操作には特別教育ではなく技能講習の受講が必要です。業務で路面切削機を操作する場合、私有地で行う場合であっても技能講習の受講が求められるためご注意ください。
以下に、「車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転技能講習」の概要をまとめました。
資格の情報 | 内容 |
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費用 | 50,000円〜110,000円前後 |
日数 | 14時間〜38時間(2日〜6日間)前後 |
受講資格 | 18歳以上 |
申込先 | 都道府県労働局長登録教習機関 |
大型特殊自動車免許
基本的に、路面切削機は大型特殊自動車に該当するため、公道を走行するには「大型特殊自動車免許」の取得が必要です。
以下に、大型特殊自動車免許試験の概要をまとめました。
免許の情報 | 内容 |
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費用 | 教習所での取得:70,000~130,000円前後 一発試験での取得:6,000円前後 |
日数 | 1日〜17日間程度 |
受講資格 | ・18歳以上 ・視力:両眼0.7以上、片眼0.3以上(片眼の視力が0.3に満たない場合は、他眼の視野が150度以上 ※眼鏡・コンタクト可) ・赤、青、黄の色彩の識別ができる ・10mの距離で90dBの警報器の音が聞こえる(補聴器で補われた聴力も含む) ・自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある四肢もしくは体幹の障害がない |
申込先 | 大型特殊自動車免許の取得が可能な自動車教習所 |
参考:警視庁「大型特殊免許試験(直接試験場で受験される方)」
以下の記事では、様々な建設機械・重機の取り扱いにあたって必要となる免許・資格について、網羅的に紹介しています。路面切削機の免許・資格について理解を深めたい方や、路面切削機以外の重機の導入も検討している方は、ぜひ併せてご覧ください。
路面切削機の歴史
日本で路面切削機が導入されたのは、インフラ整備が進んでいた1970年代のことです。当時の日本では、欧米諸国の最新技術を参考にしながら、国内の道路事情に適した切削機の研究・開発が進められました。
当初、道路の補修は舗装面を加熱してグレーダなどで剥ぎ取り、再舗装する方法が主流でした。しかし、この工法では作業効率が低い上に、コストが高い点にも課題があり、より効率的な方法が求められていました。そこで、これらの問題を解決するために、専用の路面切削機が開発されるようになったのです。
その後、さらに改良が進みました。従来の路面切削機は2車線をふさいでしまうため交通渋滞を引き起こしていましたが、積込機能を一体化することで、1車線の交通規制で作業が可能になり、渋滞を軽減できるよう進化しました。現在では、この一体型の路面切削機が主流となっています。
近年では、以下のように様々な路面環境に適応する切削技術も開発されています。
- 光ファイバーが埋設された道路に対応するモデル
- 排水性舗装を考慮したモデル
- V字型のドラムを搭載し、Vカットが可能なモデル
- 鉄筋入り舗装を切削できる高圧ウォータージェットを使用したモデル
日本の路面切削技術は、今後もさらなる進化を遂げることが期待されています。例えば、中型から大型の路面切削機においては、熟練オペレーターの不足や施工効率の向上を解決するため、コンピューター制御を搭載した最新モデルの開発が急務とされています。
さらに、騒音や振動、粉塵の発生を抑えつつ、施工スピードを向上させることも重要な課題です。特に都市部や交通量の多いエリアでは、作業による渋滞を最小限に抑える工法が求められています。こうした問題を解決するため、高機能な路面切削機や新しい施工技術の開発が期待されているのです。
参考:一般社団法人 日本建設機械工業会「建設機械産業を知る|路面切削機」
まとめ
路面切削機は、舗装の劣化部分を効率的に削り取り、新しい舗装の品質を向上させるために欠かせない重機です。道路の補修や維持管理を行う上で、舗装の均一化や排水性の向上、耐久性の確保といった役割を果たし、安全な交通環境の維持に貢献します。
道路の老朽化対策や改修工事の現場では、高精度な路面切削が求められます。路面切削機を効果的に活用し、質の高い舗装工事の実現を目指しましょう。