転圧とは?種類、使用する機械、手順、注意点を解説
転圧(てんあつ)とは、土や砕石、アスファルトなどの地盤を締め固める作業を指します。道路や建物の基礎工事を行う際に、地盤を強固にするために欠かせない工程です。適切に転圧を行うことで、沈下やひび割れを防ぎ、施工の品質を向上させられます。
転圧には様々な種類があり、使用する機械や手順、適用する地盤の性質によって方法が異なります。 適切な方法を選ぶことで、効率的に地盤を締め固めることが可能です。
本記事では、転圧の種類や使用する機械、基本的な作業手順、施工時の注意点について詳しく解説します。転圧の基本を理解することで、より効果的な施工を実現しましょう。
目次
転圧とは?
転圧とは、土やアスファルトなどに圧力をかけて空気を押し出し、粒子同士を密着させて密度を高める作業です。
土は「土粒子」「水」「空気」の3つで構成されており、もともと粒子同士の間には大きな隙間があります。転圧を行うことで、この隙間が小さくなり、粒子同士がしっかりと密着します。その結果、土の強度が増し、水が浸透しにくくなるのです。
ただし、土に含まれる水の量が多すぎると、空気だけを押し出しても隙間に水が残り、密度は十分に上がりません。そのため、適切な水分量を保つことが重要です。水を含む割合が最も適した条件で、一定体積の土の塊に含まれる土粒子の量が最大となった場合に、最も強固な地盤が形成されます。
転圧が必要な理由
転圧は、地盤や舗装の安定性を確保するために欠かせない作業です。転圧の目的は、アスファルト混合物や土の粒子同士をしっかり密着させ、強度を高めることです。
転圧を適切に行わないと、アスファルトの中に余分な水分・空気が残り、強度が低下します。その結果、耐久性が落ちて、ひび割れ・陥没の原因になりかねません。施工後にひび割れ・陥没が発生すると、補修費用が増大する可能性があります。
特に道路舗装では自動車の重さが常にかかるため、適切に転圧を行わなければ、歪みや変形が発生しやすくなります。長期間にわたって安全で快適な道路を維持するためにも、十分な転圧が欠かせません。
転圧と締固めの違い
転圧と締固めは、どちらも地面をならして強度を高める土木作業の一種です。作業内容は似ていますが、厳密には以下のような違いがあります。
- 転圧(Rolling Compaction)
表層の圧密に重点を置くが、振動転圧や衝撃転圧を用いることで深部まで締め固めることも可能。転圧のみでは粒子の並びが不十分になる場合があり、より密度を高めるために他の締固め工法と組み合わせることが多い。 - 締固め(Compaction)
転圧を含む、地盤を強化するための広範な工法の総称です。静的締固め(ローラーによる圧力のみ)、動的締固め(振動ローラーやランマーなどの機械を使用)、水締固め(含水量を調整することで密度を上げる)などの方法がある。転圧よりも深層まで影響を与えられることが多く、大規模工事では複数の方法を組み合わせて行うことが一般的。
一般的には、締固めのほうが広い意味を持ち、転圧を含むさまざまな手法を組み合わせて地盤の強度を向上させる工程を指します。
転圧の種類
転圧は、大まかに以下の3つに分類されます。
- 静荷重による転圧
- 振動による転圧
- 衝撃による転圧
これら3種類の転圧について、順番に詳しく解説します。
静荷重による転圧
静荷重による転圧は、重機の自重(荷重)を利用して、地盤や舗装面を締め固める方法です。
他の転圧方法と異なり、振動や衝撃などを加えず、機械の重みそのものを利用して圧縮するため、比較的静かで安定した施工を可能としています。そのため、都市部の工事や騒音規制のある場所でも施工しやすいメリットがあります。
主に、粒子の細かい土壌(例:粘土質の土やシルトなど)や、すでにある程度締め固められた地盤の転圧に適しています。
振動による転圧
振動による転圧は、重機に搭載された振動機能を利用して地盤や舗装材を締め固める方法です。
振動を加えることで土粒子や砕石同士の密着度を高め、より高い密度と強度を実現できます。例えば、砂質土や砕石、アスファルト舗装などの転圧に適しており、深部までしっかりと締め固めることが可能です。
衝撃による転圧
衝撃による転圧は、大きな振動や衝撃を加えて地盤を締め固める方法です。特に、
深さ1m以上の軟弱な地盤 や大規模な造成工事で用いられ、表層だけでなく 地盤の奥深く まで均一に締め固めることができます。
ただし、軟弱地盤でも 過剰な衝撃を与えると逆に地盤が崩れたり沈下を引き起こしたりするリスクがあります。そのため、事前に地盤調査を行い、適切な振動強度を設定することが求められます。
また、強い衝撃によって 周囲の建物に振動や騒音の影響を与える可能性があるため、施工時には防振対策や騒音対策を講じる必要があります。
転圧で使用する機械
転圧には様々な機械が用いられますが、代表的な種類は以下の通りです。
- ロードローラー
- ハンドガイドローラー
- プレートコンパクター
- ランマー
それぞれの特徴を順番に詳しく解説します。
ロードローラー
ロードローラーは、ローラー式の締固め機械です。グラウンド整備に使う「整地ローラー」のような大きな車輪と、地面を転圧するための重い車体に特徴があります。ロードローラーにも多様な種類がありますが、ここでは「振動ローラー」「タイヤローラー」の2つを紹介します。
振動ローラーは、ローラー内部に起振機を搭載し、振動力と自重を利用して転圧する機械です。振動によって高い転圧効果を発揮するため、道路の盛土や空港の滑走路、宅地造成など、大規模な土木工事からインフラ整備まで幅広く活用されています。
タイヤローラーは、空気入りのゴム製タイヤを複数装着した構造の締固め機械です。ゴム製タイヤは鉄製ローラーに比べて軽量で小回りが効く点が特徴で、アスファルトやコンクリートの最終仕上げ作業に適しています。そのため、初期の転圧作業よりも仕上げに力を発揮するでしょう。
振動ローラーおよびタイヤローラーについて、詳しくは以下の記事で解説しています。
振動ローラーとは?土工用、小型など種類の特徴と用途を解説
タイヤローラーとは?特徴、ロードローラーとの違い、免許・資格を解説
ハンドガイドローラー
ハンドガイドローラーは、転圧作業に使用される手押し式の機械です。狭いスペースや端部の施工に適しており、砂利や砂の転圧にも対応できます。コンパクトな設計のため、大型のロードローラーでは作業が難しい歩道や狭い道路などでもスムーズに使用できます。
ハンドガイドローラーには鉄輪および本体に振動装置が搭載されており、静荷重だけでなく振動を利用した転圧が可能です。そのため、表面だけでなく、より深い層までしっかりと転圧できます。
以下の記事では、ハンドガイドローラーの特徴や用途、必要な資格について詳しく解説しています。ハンドガイドローラーの導入を検討している場合は、ぜひ併せてご覧ください。
プレートコンパクター
プレートコンパクターは、振動を利用して転圧を行う手押し式の機械です。機械の底面に取り付けられた振動装置(起振機)が振動を発生させ、その力で地面を締め固めながら自走します。
プレートコンパクターは表面の転圧に適しており、路床の砂や砂利、アスファルト舗装の仕上げや補修(パッチング作業)などで活躍します。
ランマー
ランマーは、エンジンシリンダーの回転による上下運動とスプリングの反動を利用し、振動を増幅させる機械です。プレートコンパクターに比べてプレートのサイズは小さいものの、強い転圧力を発揮するのが特徴です。
主に狭いスペースでの作業に適しており、ガス・上下水道・通信ケーブルの埋め戻しや、工事現場での基礎固め作業などで活躍します。
転圧の手順
ここでは、転圧の基本的な手順を以下の3つのステップに分けて取り上げます。
- 事前準備
- 転圧作業
- 仕上げ(密度の確認、追加の転圧)
それぞれの手順で行う作業を中心に、順番に詳しく解説します。
事前準備
転圧を行う前に、地盤の状態を確認し、必要に応じて整備を行います。
まず、地盤の確認や整地から開始します。軟弱な地盤や凹凸がある地盤の場合は、事前に整地して平らにしましょう。また、石や大きな木の根など、施工の妨げになる異物があれば取り除きます。
続いて、水分の調整です。土が乾燥しすぎていると十分に転圧できないため、適度に散水します。反対に、水分が多すぎる場合は、しばらく放置して自然乾燥させます。
転圧作業
続いて、転圧作業に移ります。まず、以下のような基準で、施工場所の広さや用途に応じて適切な機械を選びましょう。
- 広範囲の施工:振動ローラーやタイヤローラーを選択
- 狭い場所や小規模な施工:ハンドガイドローラーやランマー、プレートコンパクターを選択
以下に、転圧作業にあたって意識しておきたい主なポイントをまとめました。
ポイント | 補足 |
---|---|
一定の方向に進める | 無駄な重ねを防ぐため、一方通行で作業を進める。 |
適度に重ねながら転圧する | 通常、50%ほどローラーが重なるように動かしながら施工する。 |
適切な回数で踏み固める | 回数が不足すると締固めが不十分になり、強度が低下する。過剰に転圧すると「過転圧」になり、かえって地盤が不安定になるため注意が必要。 |
上記のポイントを実践することで、均一で強度の高い地盤作りにつながります。
仕上げ(密度の確認、追加の転圧)
転圧後の地盤の密度の状態をチェックし、必要に応じて追加の転圧を行います。地盤の確認は、以下の2つの方法で行うのが基本です。
- 目視チェック:表面にムラや凹凸がないか確認する
- 試験器具を用いた測定:現場の条件に応じて、密度測定や含水比試験を実施する
地盤の確認により、一部の箇所で締め固めが不十分な場合は、再度転圧を行います。また、必要に応じて水分を加えたり乾燥させたりして、最適な締固め状態に整えましょう。
転圧時の注意点
転圧は、地盤の強度を高め、施工の品質を向上させる重要な工程です。しかし、適切な方法で行わなければ、転圧不足や過剰な締め固めによる地盤の不均一化、施工後の沈下など深刻な問題が発生するおそれがあります。
転圧作業を安全かつ効果的に行うためには、以下の4つの点に注意しましょう。
- 適切な転圧機械を選定する
- 均等に転圧する
- 転圧後の養生を行う
- 安全確認を行う
それぞれの注意点を順番に解説しますので、実際に転圧作業に取り掛かる前に把握しておきましょう。
適切な転圧機械を選定する
転圧作業を成功させるためには、施工内容や地盤の種類に適した転圧機械を選定することが重要です。
不適切な機械を使用すると、十分な締め固めができず、施工後に沈下やひび割れが発生する可能性があります。適切な転圧機械を選定することで、作業効率が向上するだけでなく、均一に仕上げられます。
前述のとおり、転圧方法には「静荷重式」「振動式」「衝撃式」の3種類があり、それぞれ適した地盤が異なります。転圧機械の選定では、地盤の種類だけでなく、施工現場の条件や作業スペースの広さも考慮することが大切です。
転圧機械の主な選定ポイントを以下にまとめました。
- 広範囲の施工には、大型のロードローラーや振動ローラーが適している
- 狭小地や掘削後の埋戻しには、プレートコンパクターやランマーが有効
- 周囲に住宅や建物がある場合、振動の影響を考慮して静荷重式の転圧機回を選ぶ
施工現場の特性を正しく把握し、最適な転圧機械を選び活用することで、安全かつ高品質な施工を実現しましょう。
均等に転圧する
転圧作業では、圧力にばらつきが生じることがあるため、そのまま作業を終えてしまうと、後に強度不足が発覚し、改良工事が必要になるケースがあります。
例えば、擁壁(崖や盛土の側面が崩れ落ちるのを防ぐために築く壁)から1m以内の範囲については、大型の転圧機械が入り込めず、締め固めが不十分になりやすいです。
こうした問題を防ぐためにも、事前の現地調査をしっかり行い、現場に適した転圧機械を準備しておくことが重要です。
転圧後の養生を行う
土舗装の表面を転圧して仕上げた後は、適度にシャワー散水を行い、水分を保ちます。これは、転圧直後の土壌がまだ完全に密着しておらず、水分を適度に補給することで土粒子がさらに密着し、締固め効果を高めるためです。
その後、表面が完全に硬化するまでの間、立ち入りを防ぐためにバリケードを設置し、安全を確保した上で ブルーシートやフィルムで覆う「シート養生」 を実施し、乾燥や降雨の影響を防ぎながら均一に硬化させましょう。
養生の主な目的は以下の通りです。
養生の目的 | 補足 |
---|---|
ドライアウトの防止 | 転圧後の地盤は、水分が蒸発しやすい状態にある。散水した水が直射日光で急速に蒸発すると、土が正常に硬化せず、ひび割れの原因となるため、適切な水分管理が必要。 一方で、水を入れ過ぎると、泥化して締固め不足を引き起こし、施工後に沈下しやすくなる。 |
降雨による影響の防止 | 未硬化の固化材が雨で流されることや、土舗装の材料が硬化前に流出することを防ぐ。特に豪雨時には、地盤が削られて締固めが不十分になる可能性があるため注意。 |
均一な硬化の促進 | 養生をすることで、表面だけでなく内部まで均一に固めることが可能。水分を適切に保持することで、地盤全体の密度を均一にし、施工後の沈下リスクを低減できる。 |
養生シートは、施工後3日間程度設置するのが一般的ですが、天候や土の状態によって期間を調整する必要があります。特に 梅雨期や気温の高い時期は、乾燥が早いため 養生期間を延長する ことが望ましいです。
また、補修工事で再舗装を行う場合も、ブルーシートやフィルムを適切に使用し、降雨による流出や表面の乾燥を防ぐことが重要です。
安全確認を行う
転圧作業では、重機の操作や振動による周囲への影響を考慮し、安全対策を徹底することが不可欠です。適切な安全確認を怠ると、作業員の巻き込み事故や転圧機械の転倒、地盤の崩落などの危険が生じるおそれがあります。
以下に、転圧作業を安全に進めるために意識すべき主なポイントをまとめました。
- 転圧機械の運転者以外に作業員を乗せない
- 転圧作業に入る前に必ず周囲の安全を確認する
- 危険な場合は誘導員を配置する
- ローラでの転圧は、法肩(※1)から1m以上離し、法面と平行な方向で行う
- 作業箇所の下部に人が立入らないように、バリケード等で立入禁止とし、落下石防護用堰堤を設ける
- 転圧機械から降りるときは、キーを抜く
- 作業終了時は終業点検を行う
- 歯止め(※2)を確実に実施する
※1:平らな場所から、斜めに下りが開始される場所のこと。法面は自然の地形や宅地造成によってできた斜面のこと。
※2:タイヤと地面の間に何らかの物をかまし、止まっている車両などが自然に動き出さないようにすること。
上記のポイントを参考に、毎回の転圧作業で基本に立ち返り、安全確認を怠らずに万全の対策を講じて、安全かつ高品質な施工を実現しましょう。
まとめ
転圧は、地盤の強度向上や沈下防止、舗装の耐久性確保など、建設工事において不可欠な工程です。適切な転圧を行うことで、地盤や舗装の品質を向上させ、長期間にわたる安定した構造物を実現できます。
転圧作業を適切に行うためには、施工対象の地盤に適した機械を選び、適切な手順で転圧を行うことが重要です。作業時の安全対策を徹底し、事故を防ぎながら効率的に作業を進めることも求められます。安全で効率的な転圧作業を行い、高品質な施工を目指しましょう。