ハンドガイドローラーとは?特徴や用途、資格を解説
ハンドガイドローラーは、地盤の締固め作業に使用される小型のロードローラーです。手押し式の設計が一般的で、オペレーターがハンドルで操作しながら施工します。
建設業界では、道路工事や駐車場の舗装、建物基礎の地盤整備など、多くの用途で使用されており、大型のロードローラーが使用できない狭小地や細部の仕上げ作業にも適しています。
本記事では、ハンドガイドローラーの特徴や用途、必要な資格について詳しく解説します。導入を検討している事業者の方や適切な使用方法を知りたい方は、ぜひお役立てください。
目次
ハンドガイドローラーとは?
ハンドガイドローラーとは、建設現場で地面を締め固める(転圧する)ために使用される小型のロードローラーです。手押し式のため、狭いスペースや端部、砂利・砂などの転圧作業に適しています。
ハンドガイドローラーの大きな特徴は、コンパクトな設計にあります。大型のロードローラーでは作業が難しい場所でもスムーズに転圧できるのが、ハンドガイドローラーの強みです。
ハンドガイドローラーで使用する燃料には、大きく分けてガソリンとディーゼル(軽油)の2種類があります。ディーゼル(軽油)は燃費が良く、パワーがあるため長時間の使用や高負荷の作業に向いているのが特徴です。
使用環境や作業時間に応じて、適切な燃料タイプを選択しましょう。
ハンドガイドローラーを含むロードローラー全般について理解を深めたい場合は、以下の記事をご覧ください。
ここからは、ハンドガイドローラーに焦点を当てて詳しく解説していきます。
ハンドガイドローラーの特徴と主な用途
本章では、ハンドガイドローラーに見られる特徴や具体的な用途を詳しく解説します。
ハンドガイドローラーの特徴
ハンドガイドローラーには、鉄製ローラーや本体にバイブレーション装置が搭載されています。機体の重さで地面を押し固めるだけでなく、鉄製ローラーと本体を振動させることで、より深い層までしっかりと締め固めることが可能です。
また、一般的なロードローラーと比べて転圧力が高いため、短い作業時間で目的の硬さに仕上げられます。このように、作業時間を減らし、効率的に締め固めを行える点が大きな特徴です。
ハンドガイドローラーの用途
ハンドガイドローラーは、小型ながらも強力な振動と転圧性能を備えているため、狭い現場や細かい締固め作業に適した建設機械です。主に以下のような場面で使用されています。
- 歩道や狭い車道の舗装
- 駐車場や倉庫の補修や舗装
- 建物基礎の地盤固め
- 下水道・水道工事後の埋め戻し(埋め戻した土砂の締固めに使用)
- 農道整備・ハウス建設地の地盤固め
上記のように幅広い用途で活用されており、ハンドガイドローラーは建設業において重要な役割を担う重機の一つとして位置付けられています。
ハンドガイドローラーとタンパの違い
ハンドガイドローラーと同様に、手持ちで操作する重機にタンパが挙げられます。
タンパは、エンジンの回転運動をクランク機構で上下の往復運動に変換し、その動きをスプリングを通じて打撃板に伝えることで地面を転圧する重機です。
ハンドガイドローラーとタンパは、どちらも地盤の締固め作業に使用される重機ですが、それぞれの用途や特徴には違いがあります。
ハンドガイドローラーは、円形の振動ローラーを回転させて地面を締固める方式です。ローラー全体で均一に圧力をかけるため、舗装面や地盤を平坦に仕上げることに特化しています。
これに対して、タンパは機械の底部に取り付けられたプレートを振動させ、地面を上下に強く打撃することで締固めを行う重機です。特に、細かい場所や狭い掘削部、建物の基礎工事、配管の埋め戻し作業など、局所的に高い圧力をかける必要がある場面に適しています。
以上のことから、均一な締固めが必要な現場ではハンドガイドローラーを使用し、局所的な締固めが必要な場所ではタンパを使用するのが適切だと言えます。
ハンドガイドローラーの免許・資格
ハンドガイドローラーで作業を行う際は、締固め用建設機械(ローラー)の運転業務に係る特別教育を修了する必要があります。
労働安全衛生法第59条第3項により、ハンドガイドローラーをはじめ締固め用重機の運転業務に作業員を従事させる場合、この特別教育を実施させることが義務付けられているため、事業者の方はご注意ください。
ハンドガイドローラーは重量があり、振動機能を備えているため、誤った操作をすると転倒や事故につながるリスクがあります。そのため、安全な操作方法を学ぶために特別教育が求められます。
事業者の方は、作業員が適切な教育を受けていることを確認しましょう。
締固め用建設機械(ローラー)の運転業務に係る特別教育の概要を以下に示しました。
費用 | 20,000円前後 |
---|---|
日数 | 10時間(2日間)前後 |
講習内容 | 【学科】 ・締固め用機械(ローラー)に関する知識 ・締固め用機械(ローラー)の運転に必要な一般的事項に関する知識 ・関係法令【実技】 ・締固め用機械(ローラー)の運転方法 |
受講資格 | 18歳以上 |
申込先 | 社内、社外の教育機関(都道府県労働局長登録教習機関など) |
ローラーの運転業務に係る特別教育について、詳しくは以下の記事で解説しています。これからハンドガイドローラーの導入を検討している方は、併せてご覧ください。
ローラーの運転の業務に係る特別教育とは?内容、受講方法、費用
ハンドガイドローラーの機種
本章では、ハンドガイドローラーの機種の一例として以下の3つのモデルをピックアップしてご紹介します。
- 酒井重工業:HV520/HV620
- 関東鉄工:H550KS/H600KS/H650KS
- 日立建機カミーノ:ZV550WL/ZV650W
それぞれの機種におけるハンドガイドローラーの製品概要や特徴を順番に詳しく紹介します。
なお、ハンドガイドローラーは、様々なメーカーから多種多様なモデルが販売されています。本記事で紹介していない機種も多数ありますので、作業内容や現場の条件に適したモデルをお選びください。
酒井重工業:HV520/HV620
HV520およびHV620は、酒井重工業が提供するハンドガイドローラーです。低騒音を最優先した超低騒音型モデルとして位置付けられています。
以下に、酒井重工業「HV520」「HV620」の主な特徴を示しました。
- 超低騒音型建設機械に指定
- ワンタッチ開閉メンテナンスカバーを採用
- アワメータを標準装備
下表に、HV520およびHV620の基本的な仕様をまとめました。
商品名称(型式) | HV520 | HV620 |
---|---|---|
運転質量 | 585kg | 605kg |
エンジン定格出力 | 4.2kW | 4.2kW |
全長 | 2,450mm | 2,450mm |
全幅 | 640mm | 695mm |
全高 | 1,175mm | 1,175mm |
締固め幅 | 595mm | 650mm |
参考:酒井重工業「製品情報|ハンドガイドローラHV520/620」
酒井重工業「酒井重工業 HV HS PC RS」
関東鉄工:H550KS/H600KS/H650KS
H550KSおよびH600KS、H650KSは、関東鉄工が提供するハンドガイドローラーです。溶接構造のロールボディを採用し、頑丈性・安全性がアピールされています。
以下に、関東鉄工「H550KS」「H600KS」「H650KS」の主な特徴を示しました。
- リサイクル性の高い樹脂カバー
- 作業員を守る安心設計
- 作業効率を追求した操作レバー
- 肉厚のスーパードラムを標準仕様として採用
- 後方ドラムゴム巻き仕様を追加(H600KS/H650KS)
- バックミラーを標準装備(H550KS)
下表に、H550KSおよびH600KS、H650KSの基本的な仕様をまとめました。
商品名称(型式) | H550KS | H600KS | H650KS |
---|---|---|---|
機械質量 | 548kg | 605kg | 635kg |
エンジン定格出力 | 3.7kW | 3.7kW | 3.7kW |
全長 | 2,297mm | 2,308mm | 2,308mm |
全幅 | 620mm | 634mm | 694mm |
全高 | 1,185mm | 1,182mm | 1,182mm |
締固め幅 | 580mm | 588mm | 648mm |
参考:関東鉄工「超低騒音型 ハンドガイドローラ H550KS/H600KS/H650KS」
関東鉄工「KANTO 2024年12月版総合カタログ」
日立建機カミーノ:ZV550WL/ZV650W
ZV550WLおよびZV650Wは、日立建機カミーノが提供するハンドガイドローラーです。作業性やメンテナンス性を高める新機構で、高機能と高品質を追求したモデルとして位置付けられています。
以下に、日立建機カミーノ「ZV550WL」「ZV650W」の主な特徴を示しました。
- リサイクルが容易な板金製カバー
- スクレーパ保護機構
- 走行モータ保護構造
- 脱着式散水ノズル
- ローラ清掃性を向上
- 大型スイッチの採用
- LED 前照灯の採用
- 日常メンテナンスが容易なベルトオートテンショナ
- エンジンメンテナンス性の向上
- コンパクトな車体
- 展開・格納が容易なハンドル
- ハンドル格納時操作力を45 %低減
下表に、ZV550WLおよびZV650Wの基本的な仕様をまとめました。
商品名称(型式) | ZV550WL | ZV650W |
---|---|---|
機械質量 | 565kg | 665kg |
エンジン定格出力 | 4.0kW | 4.0kW |
全長 | 2,275mm | 2,555mm |
全幅 | 630mm | 700mm |
全高 | 1,143mm | 1,265mm |
締固め幅 | 586mm | 650mm |
参考:日立建機日本「ZV-W シリーズハンドガイドローラ|ZV550WL」
まとめ
ハンドガイドローラーは、狭い場所や細かい締固め作業に適した重機であり、道路工事や駐車場整備、建物基礎の地盤固めなど、様々な現場で活躍しています。コンパクトながらも強力な振動と圧力を備え、均一な締固めを可能にする点が大きな特徴です。
建設業において、適切な締固め作業は耐久性の高いインフラ整備や建築の基盤を支える重要なプロセスです。作業現場に適したハンドガイドローラーを導入し、効果的な施工を実現しましょう。