重機・建機の種類 2024.08.28

ブルドーザーとは?特徴や種類、規格、免許を解説

ブルドーザーは、建設現場や土木工事において重要な役割を果たす大型の建設機械(重機)です。強力なパワーと多用途性により、さまざまな場面で活躍しています。

今回は、ブルドーザーの特徴や種類・規格、操作に必要な免許、主要なメーカーや製品(機種)について詳しく解説しています。ブルドーザーを運転する機会がある方は、本記事で紹介する情報をぜひ参考にしてください。

ブルドーザーとは?

地面をならすブルドーザー

ブルドーザー(英語:Bulldozer)とは、トラクタの前に土工板(排土板※ドーザやブレードとも呼ばれる)が取り付けてあり、土を削る・押す・ならすといった作業を行うための重機のことです。数ある中でもポピュラーな重機として位置付けられています。

ブルドーザーという言葉の由来は、「強引に推し進める」という意味を持つ英語「Bull’s dose」に由来すると考えられています。1920年代にアメリカで開発普及し、日本では1943年に小松製作所が海軍航空基地の建設用として、国産第1号を開発しました。

不整地でも走行できるクローラを用いたトラクタは、古くから農耕用や各種けん引用に使用されていました。しかし、第二次世界大戦後には、復興や国土開発などのためにブルドーザーの需要が高まり、国産機の開発・製造が盛んになりました。

ブルドーザーは大きくクローラ式・ホイール式に分けられますが、ホイール式は国内生産台数が少なく、クローラ式が一般的とされています。接地面積の大きなクローラ式のブルドーザーは、軟弱地・不整地・傾斜地での走破性に優れ、大きなけん引力もあるため、土木工事に適しています。

クローラーについては以下の記事で詳しく解説しています。難しい条件でも移動を可能にする構造について解説しているので、ブルドーザーをより深く知るために併せてご一読ください。

重機のクローラーとは?移動を支える構造やキャタピラーとの違い

乾地と湿地

前述のように、ブルドーザーは主に不整地で使用される重機であり、通常はクローラで走行します。しかし、クローラは軟弱地盤に強いとはいえ、泥濘地では動けなくなることがあります。

このような泥濘地での使用を想定して、乾地ブルドーザーよりもクローラの幅が広い湿地ブルドーザーが開発されました。湿地ブルドーザーは、広い設置面積を持たせることでクローラの接地圧を通常の3分の2程度に抑えており、泥濘地でも動きやすくなっています。

併せて、特殊な三角断面履板(シュー)を用いることで、横方向の滑り特性や転圧効果にも優れています。

ブルドーザーの特徴

一般的に、ブルドーザーは、前部にエンジン、後部に運転席という配置です。クローラ式の場合、運転席からの操作はハンドルを用いたステアリングではなく、左右のクローラの個別動作によって行います。

また、日本の多雨地域では、軟弱な地盤でも走行できる機械が必要とされるため、湿地ブルドーザーが多く使われています。中型・小型の湿地ブルドーザーは全体の70~80%を占めており、30t以下の大型機でも約50%が湿地ブルドーザーです。

加えて、クローラ式ブルドーザーは、公道を走れない点も特徴の一つです。そもそもブルドーザーに限らず、クローラー式の重機は公道を走ることができません。建設現場や工事現場で使用する際は、トラックなどに積んで目的地まで移動します。

なお、ホイール式のブルドーザーであれば、公道の走行が可能です。

参考:一般社団法人 日本建設機械工業会「建設機械産業を知る トラクタ(ブルドーザ)」

ブルドーザーの種類

運搬作業に長けたブルドーザー

ブルドーザーには、さまざまな種類があります。下表に、ブルドーザーの代表的な種類と特徴をまとめました。

種類 主な特徴
クローラブルドーザー クローラー式のブルドーザーで、最も一般的なタイプ。
ホイールドーザー ホイール式のブルドーザーで、舗装路や比較的平坦な地形などでの作業に適している。
ICTブルドーザー 情報通信技術(ICT)を活用したブルドーザーで、土を掘ったり地面を平らに整えたりするブレードの動きを自動で行えるようになっている。

GPSやセンサーを利用して、操作者が作業に慣れていない場合でも、正しく効率的に作業を行いやすくなる。

ラジコンブルドーザー 遠隔操作が可能なブルドーザーで、危険な環境や人が立ち入れない場所での作業に適している。
水陸両用ブルドーザー 水中と陸上での作業が可能なブルドーザーで、河川工事や水辺の整備作業など特殊な環境での作業に適している。
地雷除去ブルドーザー 特殊な防護装備を持ち、地雷除去を通じた人道支援活動に利用されている。

各種ブルドーザーの特徴を理解し、用途に応じて最適なタイプを選択することで、効率的な作業を実現しましょう。

ブルドーザーのブレードとリッパ

ブルドーザーには、ブレードやリッパといったアタッチメント(付属装置)が付いています。

ブレード

ブルドーザーのブレード

ブレードは、ブルドーザーの前部に取り付けられるアタッチメントで、土砂を掘削・運搬する役割があります。ブレードにはさまざまな種類がありますが、代表的なものを下表にまとめました。

ブレードの種類 主な特徴
ストレートドーザ 最も基本的な形状のブレードで、平坦な板状のデザイン。
アングルドーザ ブレードが左右に角度をつけて動かせるタイプで、土砂を側方に押しやることが可能。

直線だけでなく、曲線状の掘削や整地作業も行える。

Uドーザ ブレードがU字型に湾曲しているタイプで、土砂を大量に集めて運搬できる。

主に大規模な土砂移動や堆積作業に適している。

レーキドーザ ブレードに多数の歯が付いたタイプで、特に採根作業や地表の清掃などに使われる。
ツーウェイドーザ ブレードが両方向に動かせるタイプで、前進時も後進時も作業できる。
バケットドーザ ブレードにバケット機能を持たせたタイプで、掘削と運搬の両方を効率的に行える。

リッパ

ブルドーザーのシングルシャンクリッパ

リッパは、ブルドーザーの後部に取り付けられるアタッチメントで、岩石を砕いたり、コンクリートやアスファルトなどの固い地盤を掻き出したりする役割があります。ブルドーザーにリッパを取り付けて行う作業は「リッパ作業」や「リッピング」などと呼ばれています。

リッパにもさまざまな種類があり、それぞれ異なる用途や特性を持っています。リッパの代表的な種類を下表にまとめました。

リッパの種類 主な特
シングルシャンクリッパ 一本の爪を持つリッパで、主に硬い地盤や岩盤の掘削に適している。
マルチシャンクリッパ 複数の爪を持つリッパで、広範囲の地盤を効率的に掘削するのに適している。
ヒンジ式リッパ リッパ本体がヒンジ(蝶番)で取り付けられているタイプ。

角度や深さを調整しやすい設計になっており、柔軟な操作が可能。

ジャイアントリッパ 非常に大きなサイズのリッパで、特に硬い地盤や岩盤の掘削に使用される。

強力な掘削力を持ち、大規模な掘削作業に適している。

パラレルリンクリッパ リンク機構によりリッパが常に地面と平行に動くように設計されたリッパ。

均一な掘削が可能で、地面の平坦化に優れている。

ブレードやリッパの選択は、作業の効率や成果に大きな影響を与えます。適切にブレード・リッパを選択・使用することで、ブルドーザーのパフォーマンスを最大限に引き出しましょう。

ブルドーザーを含む重機のアタッチメントについて詳しく知りたい場合は、以下の記事で解説していますので、併せてご覧ください。

重機のアタッチメントとは?種類と特徴、使用時の注意点を解説

ブルドーザーのメーカー

ブルドーザーの主要メーカーの一つであるCAT

過去には三菱重工業(キャタピラー三菱)、日立建機、日特金属工業、古河鉱業(古河機械金属)、ヤンマーディーゼル、久保田鉄工(クボタ)などもブルドーザーを製造していました。

しかし、現在は、アメリカのCAT(キャタピラー社)と日本の小松製作所(コマツ)2社で世界シェアのほとんどを独占する状態となっています。

ブルドーザーをはじめとする重機メーカーについて理解を深めたい場合は、以下の記事に詳しくまとめていますので、ぜひご覧ください。

重機メーカーの一覧【国内、海外別に30社】

ブルドーザーの規格(小型、中型、大型)

ブルドーザーの規格について明確な区分はありません。しかし、一般的には、サイズ(機械質量もしくは運転質量)の観点から「小型機が3t〜10t」「中型機が11t〜20t」「大型機は21t以上」として規格分けされます。

本章では、一般的に多く用いられている基準をもとに、ブルドーザーの規格(小型、中型、大型)と代表的な機種をご紹介します。

小型

小型ブルドーザーは、狭い現場やアクセスが制限された場所での作業に適しています。全長や全幅が小さく、小回りが利くため、都市部や住宅地での使用に適しています。軽量であり操作が容易なので、初心者でも扱いやすい点も特徴として挙げられます。

小型ブルドーザーは、農業、造園、土木工事などさまざまな用途に使用されています。特に、小規模の作業に適しています。

下表に、小型ブルドーザーの代表的な機種をまとめました。

型番 主な特徴、仕様
D1(cat) ・定格出力(ネット):59.7kW
・運転質量:8,099kg・視認性の向上
・燃費を最大10 %向上
・快適なワークステーション
・大型で高性能のカメラ付きディスプレイ
・耐久性に優れた足回り構造
D27A-10(コマツ) ・定格出力:41.6kW
・運転質量:4,305kg・小型の普通ブルドーザー「D21A-8E0」のモデルチェンジ
・ボア径アップし、新たな大出力エンジン搭載
・F3R3トランスミッション採用
・自動パーキングブレーキ装備

参考:cat「小型ドーザD1」
小松製作所「D27A-10」

中型

中型ブルドーザーは、サイズとパワーのバランスが取れており、狭い現場から広範な工事現場まで幅広い用途に対応できます。整地、掘削、運搬などさまざまな作業を効率的に行えて、建設、土木、農業など多岐にわたる分野で使用されています。

下表に、中型ブルドーザーの代表的な機種をまとめました。

型番 主な特徴、仕様
D4(cat) ・定格出力(ネット):97kW
・運転質量:13,272kg・オペレータアシスト機能
・優れた勾配性能
・オペレーティングコストの削減
D61EX-24(コマツ) ・定格出力:125kW
・運転質量:18,385kg・電子制御HST
・パームコマンド電子制御操向・電子制御作業機レバー

参考:cat「中型ドーザD4」
小松製作所「D61EX-24」

大型

大型ブルドーザーは、強力なエンジンを搭載しており、重い土砂や岩盤を効率的に掘削・運搬できます。そのパワーは、非常に硬い地盤や大量の土砂を扱う作業に最適です。

また、サイズの大きさから、大規模な作業を迅速に行うことができます。広範囲の整地や大量の土砂の移動が必要な現場で効果を発揮します。

下表に、大型ブルドーザーの代表的な機種をまとめました。

型番 主な特徴、仕様
D9(cat) ・定格出力(ネット):337kW
・運転質量:49,988kg・ステータクラッチ付きトルクコンバータによるドライブトレーンの効率の向上、燃料消費量の低減
・ボギーサスペンションによるトラクション性能の向上、滑りの低減
D85EX-18(コマツ) ・定格出力:197kW
・運転質量:29,245kg・画期的ブレード「シグマドーザ」
・パームコマンド電子制御操向・圧力比例制御作業機レバー

参考:cat「大型ドーザD9」
小松製作所「D85EX-18」

ブルドーザーの免許

ブルドーザーの免許について調べる作業員

ブルドーザーを運転するためには、「車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)」の資格取得が求められます。基本的に、ブルドーザーは車両重量が3t以上であり、運転に必要な資格は「車両系建設機械(整地等)運転技能講習」とされています。

下表に、ブルドーザーの運転で求められる資格「車両系建設機械(整地等)運転技能講習」の概要をまとめました。

資格の情報 内容
費用 50,000円〜110,000円前後
日数 14時間〜38時間(2日〜6日間)前後
受講資格 18歳以上
申込先 都道府県労働局長登録教習機関

なお、ホイール式のブルドーザーの場合、公道の走行が可能です。しかし、そのためには、道路交通法にもとづく「大型特殊自動車免許」あるいは「小型特殊自動車免許」の取得が求められます。

大型特殊自動車免許とは、大型特殊自動車を公道で走行させるための免許を指します。道路交通法上、大型特殊自動車の基準は、「小型特殊自動車の規格をこえるもの」です。普通免許をすでに取得している場合、大型特殊自動車免許の教習期間が短縮されます。

次に、小型特殊自動車免許とは、小型特殊自動車を公道で走行させるための免許です。小型特殊自動車の規格は、以下のとおり定められています。

全長 4.7m以下
全幅 1.7m以下
全高 2.0m以下(ヘッドガード等を備えた自動車で、ヘッドガード等を除いた部分の高さが2.0m以下のものについては2.8m以下)
最高速度 時速15km以下

すでに普通免許や普通二輪免許を持っている場合、小型特殊自動車免許は下位免許にあたるため、新たに取得しなくても小型特殊自動車を運転することが可能です。

ただし、大型特殊自動車免許や小型特殊自動車免許だけでは、普通自動車を運転することはできません。普通自動車を運転するためには、普通免許、準中型免許、中型免許、大型免許のいずれかが必要です。

ブルドーザーをはじめとする建設機械・重機の免許・資格の詳細は以下の記事で解説していますので、併せてご覧ください。

建設機械・重機の免許・資格一覧!費用や日数、受験資格

参考: 国土交通省「自動車の種類」

まとめ

ブルドーザーとは、トラクタの前に土工板が取り付けてあり、土を削る・押す・ならすといった作業を行うための重機のことです。

数ある中でもポピュラーな重機として位置付けられており、建設や土木工事において欠かせない存在です。

ブルドーザーの種類や規格を理解し、適切なブルドーザーを選択することで、効率的な作業につながります。また、操作や移動に必要な免許を取得することで、安全かつ効果的にブルドーザーを活用することが可能です。多様な現場で活躍するブルドーザーについて基礎知識をしっかりと身につけ、最適な重機を選びましょう。

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