ローラーの運転の業務に係る特別教育とは?内容、受講方法、費用
ローラーの運転の業務に係る特別教育(以下:ローラー特別教育)は、ローラー車(締固め用機械)で作業する方に受講義務がある特別教育です。
建設現場や道路工事で欠かせないローラー車を安全に運転・操作するには、専門の知識と技術が求められます。ローラー車の操作を誤ると重大な事故につながる可能性があるため、労働安全衛生法に基づき「ローラー特別教育」の受講が義務付けられています。
本記事では、ローラー特別教育の概要やカリキュラムをわかりやすく解説します。受講方法や費用についても紹介していますので、ローラー特別教育を受講する際にお役立てください。
ローラー特別教育とは
「ローラー特別教育」(正式名称:ローラーの運転の業務に係る特別教育)とは、ローラー車(締固め用機械)を使用して作業に従事する方に受講が義務づけられている特別教育です。
ローラー車のサイズに制限はなく、タイヤローラーやマカダムローラーなど乗り込んで運転するタイプだけでなく、手で押して操作するハンドガイドローラーも対象となります。そのため、ローラー車を運転する場合は必ず受講が必要です。
この特別教育は、労働安全衛生法第59条第3項、労働安全衛生規則第36条第10号、および安全衛生特別教育規程第12条に基づいて定められています。
対象となるローラー
ローラー特別教育の受講対象となっているローラー車の例は、主に以下のとおりです。
- タイヤローラー
- マカダムローラー
- 振動ローラー
- コンバインドローラー
- ハンドガイドローラー
なお、ハンドガイドローラーは、狭い場所での作業に適した自走式機械で、操作者が地面に立って操作します。その使用には特別教育の受講・修了が必要です。
一見すると動きが遅いように見えますが、最高速度が時速4〜6km程度(機種ごとに最高速度は異なる)あります。不整地や傾斜地で操作する際には機械が滑りやすくなり、速度感が増して操作が難しくなるため、注意を怠ると事故が起こる危険性があります。
特に路端での作業では周囲への注意が散漫になり、他の作業者を巻き込む事故が起きやすいです。また、最新モデルは反応が良く移動速度も速いため、操作ミスが直接災害につながる可能性が高まります。
安全作業のためにも、ハンドガイドローラーを含めたローラー車を用いて作業する際は、ローラー特別教育の受講・修了が不可欠です。
ローラー車(ロードローラー)について理解を深めたい場合は、併せて以下の記事をご覧ください。
ローラー特別教育の内容、受講方法
ローラー特別教育は、18歳以上であればどなたでも受講可能です。特別な資格は必要ありません。ただし、受講する際には厚生労働省が認定したテキストを使用し、その内容に基づいて定められた講義時間を受講する必要があります。
本章では、ローラー特別教育の概要を解説します。
内容
ローラー特別教育の講習は、学科教育と実技教育の2つに分かれています。
下表に、それぞれの講習科目と時間をまとめました。
区分 | 受講科目 | 受講時間 |
---|---|---|
学科 | ローラーに関する知識 | 4時間 |
運転に必要な一般的事項に関する知識 | 1時間 | |
関係法令 | 1時間 | |
実技 | ローラーの運転方法 | 4時間 |
合計 | 10時間 |
学科教育では、特にローラーに関する知識や関係法令についてしっかりと時間を確保して受講しましょう。その後の実技教育を修了するためには、ここで学んだ知識を活用する必要があります。
実技教育では、実際のローラー車を使用して運転方法を習得します。搭乗型のローラー車だけでなく、ハンドガイドローラーの操作についても学びます。
搭乗型のローラーでは、幅寄せやバック走行、S字カーブやクランクなどに苦戦する方が多いです。受講時は焦らずに、運転感覚やコツを掴むことを意識すると良いでしょう。
ローラー特別教育の受講には、学科・実技教育を合わせて「10時間/2日間(初日:学科教育、2日目:実技教育が基本)」が必要です。ただし、上記で示した受講時間はあくまでも最低限受講すべき時間であり、初心者や実技に不安がある受講者の場合、追加の講習を行うこともあります。
参考:一般社団法人 労働技能講習協会「締固め用建設機械(ローラー)運転特別教育(学科教育)」
受講方法
受講方法は、3つの対面受講方法と1つのオンライン受講方法があります。下表に、それぞれの方法の特徴をまとめました。
受講方法 | 特徴 |
---|---|
社内で講師を選任 | 社内の従業員を講師に選任し、厚生労働省が認可するテキストを準備して受講する方法。
テキスト代程度の費用で済み、コストを抑えられる点が魅力。 その反面、講師役の従業員が研修中に通常業務を離れる必要があり、業務に支障をきたす可能性がある。 また、講師が特別教育の専門家でない場合、講義の質が低下するリスクもあり、業務効率や研修効果の面で課題が残る。 |
外部から講師を招く | 外部の企業・団体から専門の講師を招いて受講する方法。
専門的な講義が受けられ、テキストも提供されるため準備の手間が省ける点がメリット。 しかし、費用が高くなりやすく、受講者が少ない場合は割高になり、講師派遣が難しい場合もある。 |
外部講習会に参加 | 全国各地でさまざまな企業や団体が開催している講習会に参加する方法。
質の高い講義が受けられ、自社での準備が不要な点がメリット。 しかし、近隣で実施されるとは限らず、講義日程が限定的であるため、移動やスケジュール調整が必要となる。 |
Web講座を利用 | 学科科目についてはWeb(オンライン)講座で受講できる。
自社での準備が不要で質の高い授業が受けられる点や、受講生が自分の都合に合わせて受講可能であり、業務に影響が及びにくい点などがメリット。 しかし、実技教育には対応しておらず別途受講が必要となる上に、個々の従業員の受講状況の把握が難しい点に課題がある。 |
費用
ローラー特別教育にかかる費用は、受講方法によって大きく異なります。また、受講にあたって利用する企業・団体によっても、実際にかかる費用は変動します。具体的な金額を確認した上で、自社・ご自身の状況に合った受講方法を選ぶと良いでしょう。
参考までに、外部講習会に参加して受講する場合の大まかな費用相場を紹介すると、20,000円前後です(テキスト代含む)。
修了証と有効期間
ローラー特別教育を修了すると、修了証が発行されます。この修了証には有効期限がなく、更新や再受講の必要もありません。
ただし、修了証と一緒に送付される受講記録については、事業者が責任を持って3年間保管する必要があります。受講記録は、受講者に対する講習実施を証明する重要な書類です。紛失しないよう、慎重に管理してください。
ローラー特別教育と併せて取りたい免許・資格
ローラー車を取り扱う際は、ローラー特別教育と併せて自動車運転免許の取得をおすすめします。
自動車運転免許は、ローラー車を公道で走行させるために必要な免許です。具体的には、ローラー車のサイズに応じて「大型特殊自動車免許」もしくは「小型特殊自動車免許」の取得が求められます。
ローラー車を用いた作業だけでなく、公道での走行も予定している場合は、ローラー特別教育と自動車運転免許の双方を準備しておきましょう。なお、ハンドガイドローラーについては、公道で走行させることがないため、自動車運転免許の取得は不要です。
以下の記事では、ローラー特別教育をはじめとする様々な重機の免許・資格についてまとめています。ローラー車の運転で必要となる大型特殊自動車免許および小型特殊自動車免許についても詳しく紹介していますので、取得を検討している場合は併せてご覧ください。
まとめ
ローラー特別教育は、建設現場や道路工事でローラー車を操作する方に義務付けられた特別教育です。
ローラー車を用いて安全に作業するには専門の知識・技術が必要で、操作ミスがあれば重大な事故に繋がります。そのため、労働安全衛生法に基づき、ローラー特別教育の受講が必須とされています。
ローラー特別教育を受けることで、ローラー車の適切な操作方法や安全対策を学び、現場全体の安全性向上に繋がります。また、労働基準や法規を遵守することで、プロフェッショナルとしての信頼性も高まります。
正しい知識と技能を身につけ、安全で効率的な作業を心がけましょう。