重機・建機の種類 2025.03.12

除雪グレーダとは?用途や必要な免許、他の除雪車との違いを解説

除雪グレーダは、冬季の道路除雪作業に使用される重機の一つで、圧雪や硬く凍結した雪の効率的な除去などに役立ちます。一般的な除雪車と異なり強力なブレードを備えており、除雪だけでなく道路の表面を整える(グレーディング)機能も備えているのが特徴です。

積雪量の多い地域や幹線道路・高速道路の除雪作業などに適しており、雪を削りながら道路の安全性を確保する役割を果たします。

本記事では、除雪グレーダの用途や必要な免許、他の除雪車との違いについてわかりやすく解説します。これから除雪グレーダの導入を検討している事業者の方や、より効果的な除雪作業を行いたい方は、ぜひ参考にしてください。

除雪グレーダとは?

除雪グレーダの作業風景

除雪グレーダは、強力な駆動力を生かし、ブレードを広げて効率的に雪を除去する重機です。多くのモデルは後輪駆動ですが、四輪や六輪駆動モデルも存在し、除雪状況に応じて選択されます。

後輪駆動にすることで、ブレードが接地している前方部分の荷重を調整しやすくなり、より安定した削り取り作業が可能になります。

また、旋回時に後輪の駆動力を活用することで、前輪をスムーズに動かせるため、狭い道路や交差点での小回りがしやすくなるメリットがあります。そのため、除雪グレーダでは後輪駆動が主流となっていますが、一部のモデルでは四輪駆動や六輪駆動の仕様も見られます。

モータグレーダの一種であり、踏み固められた硬い雪を削り取るのに適した重機です。

圧雪や氷状の雪をしっかり削るためには、ブレードに十分な押付け力を加えることが重要です。そのため、除雪グレーダの車体の先端にはウェイトが搭載され、ブレードにかかる重量のバランスを調整しています。

除雪グレーダは、用途に応じてさまざまなサイズのブレードが搭載されており、一般的には2.2m級から4.3m級が主流ですが、一部ではそれ以上の大型モデルも存在します。

日本で除雪グレーダが初めて導入されたのは、1945年とされています。この際、北海道でアメリカ製のモータグレーダにVプラウ(※)を装着し、除雪用として活用されました。

その後、1950年に建設省(当時)が道路の除雪にモータグレーダを正式に採用しています。1956年には、寒冷地対応モデルとして始動用ガソリンエンジンを搭載した除雪グレーダが登場し、その後も改良が進められました。

これは、寒冷地ではディーゼルエンジンの始動が困難になるため、エンジンを温める目的でガソリンエンジンを補助的に使用する仕様となっていたものです。この改良により、極寒地域でもエンジンが円滑に始動できるようになりました。

1960年代以降は、一部モデルに氷盤破砕機の装備が見られるようになり、またブレード幅4.0m級・4.3m級のモデルや一人乗り用モデルの開発も進みました。これにより、特に冬季の厳しい路面状況でもより効率的に除雪ができるようになり、作業時間の短縮や燃料消費の削減が可能になりました。

また、一人乗り用モデルの登場は、作業員の負担軽減とコスト削減にも貢献し、日本国内での普及が加速しました。

※:車両前方に取り付けられる作業機で、 ブレードが上から見てとがり先のV字形をしたスノープラウのこと。雪を左右に押し除ける能力に優れている。

モータグレーダ全般について理解を深めたい場合は、以下の記事をご覧ください。

モータグレーダとは?用途や構造、免許・資格を解説

ここからは、除雪グレーダに焦点を当てて詳しく解説していきます。

参考:国土交通省 北陸雪害対策技術センター「除雪グレーダ」
国土交通省北陸地方整備局「除雪機械に関する技術開発」

除雪グレーダの用途

除雪グレーダは、様々な特徴により効率的な除雪作業を実現する重機です。主な用途を3つ順番に紹介します。

新雪の除雪

新しく降り積もった雪は、圧雪になる前に素早く除去する必要があります。除雪グレーダは走行速度が速いため、短時間で広範囲の除雪が可能です。

圧雪の処理

一度固まった圧雪は、除雪トラックなどの一般的な除雪機では剥ぎ取るのが難しくなります。除雪グレーダは強力なブレードを備えており、頑固な圧雪も効果的に除去できます。

交差点の除雪

交差点では、除雪した雪を適切な方向へ誘導することが求められます。除雪グレーダは作業範囲が広く、ブレードの角度を自在に調整できるため、交差点内のさまざまな方向に雪を分散させることが可能です。

これにより、視界の確保や道路の渋滞防止にも寄与します。特に、交差点では他の除雪車では雪を適切に処理しづらいことがあるため、グレーダの細かい制御機能が重宝されます。

また、除雪トラックよりもハンドリング性能が高く、前輪の角度調整(リーニング)や車体の屈折機能(アーティキュレート)を活用し、小回りの利くスムーズな除雪作業が可能です。

除雪グレーダの免許・資格

除雪グレーダーによる除雪作業

除雪グレーダの操作・運転にあたって取得(受講)が求められる免許・資格は、以下の通りです。

  • 車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転技能講習
  • 大型特殊自動車免許
  • 除雪機械技術講習会

それぞれの免許・資格について詳しく解説します。

車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転技能講習

除雪グレーダが属する車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)を使って作業するために求められる資格は、機体重量によって以下の2種類に分かれます。

機体重量 資格の名称
3t以上 車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転技能講習
3t未満 小型車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)の運転の業務に係る特別教育

このうち除雪グレーダを使って作業するためには、「車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)」の資格取得が求められます。除雪グレーダは車両重量が3t以上あるため、操作には特別教育ではなく、技能講習の受講が求められます。

なお、除雪グレーダの操作にあたっては、この技能講習の代わりに、「建設機械施工管理技士(3種)」の資格取得でも足ります。

建設機械施工管理技士は、建設現場における機械の効率的な使用、作業の進行管理、安全管理などを担う技術者を認定する資格です。資格取得には、施工管理の専門知識や技能などが求められます。

参考:国土交通省 東北地方整備局「 18.除雪機械運転員資格基準」

大型特殊自動車免許

大型特殊自動車免許は、大型特殊自動車を公道で走行させる場合に必要となる免許です。道路交通法上、大型特殊自動車の基準は、「小型特殊自動車の規格を超えるもの」であると定められています。小型特殊自動車の規格は、以下の通りです。

全長 4.7m以下
全幅 1.7m以下
全高 2.0m以下(ヘッドガード等を備えた自動車で、ヘッドガード等を除いた部分の高さが2.0m以下のものについては2.8m以下)
最高速度 時速15km以下

基本的に、除雪グレーダは小型特殊自動車の規格を超えるため、公道を走行するためには「大型特殊自動車免許」の取得が必要です。

以下に、大型特殊自動車免許試験の概要をまとめました。

免許の情報 内容
費用 教習所での取得:70,000~130,000円前後
一発試験での取得:6,000円前後
日数 1日〜17日間程度
受講資格 ・18歳以上
・視力:両眼0.7以上、片眼0.3以上(片眼の視力が0.3に満たない場合は、他眼の視野が150度以上 ※眼鏡・コンタクト可)
・赤、青、黄の色彩の識別ができる
・10mの距離で90dBの警報器の音が聞こえる(補聴器で補われた聴力も含む)
・自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある四肢もしくは体幹の障害がない
申込先 大型特殊自動車免許の取り扱いがある自動車教習所

参考:警視庁「大型特殊免許試験(直接試験場で受験される方)」

除雪機械技術講習会

ここまでに紹介した免許・資格に加えて、除雪グレーダによる作業の安全性や効率性を高めるために、除雪機械技術講習会の受講を必須としている地域があります。

この講習では、実際の除雪作業における操作技術、緊急時の対応方法、雪質や路面状況に応じた適切な除雪手法などを学びます。特に、吹雪時の視界不良や氷盤の処理といった実務に即した内容が含まれるため、実際の作業において重要な役割を果たします。

例えば、東北地方整備局が施工する国土交通省直轄管理国道の除雪作業等における除雪機械の運転員に対して、除雪機械技術講習会の受講を義務付けています。また、北海道開発局では、除雪機械のオペレーターに対して、除雪機械技術講習会の受講を求めています。

除雪機械技術講習会は、日本建設機械施工協会が主催するもので、受講年より5年目の12月末日まで有効とされています。

なお、除雪機械技術講習会の受講が法的に義務付けられていない地域もあります。しかし、除雪作業の安全性や効率性を確保するため、多くの自治体や企業が従業員に対して、定期的に講習会を受講するよう推奨しています。

したがって、除雪機械技術講習会の受講が必須かどうかは、事業を行う地域や組織の規定などにより異なります。具体的な要否については、所属する自治体や関係機関の指針を確認しましょう。

除雪グレーダをはじめとする建設機械・重機の免許・資格について、詳しくは以下の記事で解説していますので、併せてご覧ください。

建設機械・重機の免許・資格一覧!費用や日数、受験資格

参考:北海道開発局「除雪オペレータの担い手不足と 安定的な除雪体制の確立に向けて-持続可能な人材育成を目指して-」

除雪グレーダと他の除雪車の違い

除雪グレーダと類似する車両に、除雪ドーザーや除雪トラック、ロータリー除雪車などがあります。これらの違いを把握するために、それぞれの主な特徴を以下にまとめました。

種類 特徴
除雪グレーダ 除雪作業の主力機械として活躍し、ブレードを使って新雪の除去や路面の整正を行う。
除雪ドーザー 車輪式トラクターにプラウやブレードを装着した車両。車体の重量をブレードにかけられるため圧雪処理や重作業にも対応できるが、平坦整正能力や除雪速度は除雪グレーダより劣る。
除雪トラック 総輪駆動型トラックをベースに除雪装置を装着した車両。用途に応じて、新雪除雪用のフロントプラウや圧雪処理用の路面整正装置などを組み合わせて使用できる汎用性の高さが特徴。
ロータリー除雪車 雪堤を削り取って道路幅を広げる「拡幅除雪」や、雪を遠くへ運び出す「運搬排雪」に特化した車両。

それぞれの特徴を把握しておき、ケースに応じて適した除雪車を選ぶことが大切です。

まとめ

除雪グレーダは、圧雪や凍結した雪を削り取り、道路の安全を確保するために欠かせない重機です。積雪の多い地域や幹線道路、高速道路などでの除雪作業に適しており、他の除雪車では対応しきれない硬い雪の除去や路面の整備を効率的に行うことが可能です。

積雪期の道路維持には、除雪グレーダをはじめとする各種除雪車の適切な運用が不可欠です。地域・現場の状況に応じた適切な方法を選択し、スムーズな除雪作業を実現しましょう。

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