重機・建機の種類 2025.02.28

スキッドステアローダーとは?特徴や用途、ホイールローダーとの違いも解説

スキッドステアローダーは、小型のホイールローダーの一種です。コンパクトなボディで小回りが利くうえに、アタッチメントの種類が豊富で、工事現場から農作業や除雪に至るまで幅広く活躍する建機です。

本記事では、そんなスキッドステアローダーの特徴や用途を中心に、基本的な情報を解説します。ホイールローダーとの違いもご紹介しておりますので、スキッドステアローダーについて知るうえでぜひご参考ください。

スキッドステアローダーとは?

レンガを運ぶスキッドステアローダー

スキッドステアローダー(Skid-Steer Loader)とは、1960年にアメリカのメルロー(現・ボブキャット・カンパニー)が世界で初めて開発した建機のことです。

「スキッド(Skid)」は横滑り、「ステア(Steer)」は操舵を意味する言葉で、左右の車輪で異なる駆動力を発生させて、その場で旋回できるのが特徴的です。

小型で小回りが利くことから、建設現場だけでなく農業・畜産・造園や除雪など幅広い現場で活躍しています。

スキッドステアローダーの特徴

本章では、スキッドステアローダーの特徴として、特に目立つ以下3つの内容を取り上げます。

  • アメリカの建設機械メーカーが世界で最初に開発
  • 小型ホイールローダーの一種
  • アタッチメントの種類が豊富

それぞれの特徴を順番に解説します。

アメリカの建設機械メーカーが世界で最初に開発

スキッドステアローダーは、アメリカ・ノースダコタ州で創業した建設機械メーカー「メルロー」によって生み出されました。最初に世に出たのは1960年で、当初は「M-400」という名前で発売されていましたが、その後は企業名と製品名を「Bobcat」に変えて普及を図りました。

現在では世界各国の農機・建機・輸送機メーカーが、スキッドステアローダーの開発・製造を手掛けています。

ちなみに、ボブキャットはカナダ南部からメキシコ北東部にかけてのアメリカ大陸に自生するネコ科の動物で、中型獣の一種です。ピューマ、ヒョウ、イエネコ、オオヤマネコといった他のネコ科動物と比べると、ボブキャットは最も小さいです。

スキッドステアローダーに付けられた「Bobcat」という名称は響きが良いうえに、小型である製品の特徴を表している愛称としてぴったりだと言えます。

小型ホイールローダーの一種

スキッドステアローダーは、小型のホイールローダーの一種です。ただし、タイヤ走行でありながら操舵機構は採用されておらず、左右タイヤの回転差を利用した「スキッドステアリング」という機能を搭載しているのが特徴的です。

左右の車輪の回転差で旋回するため、その場で360度旋回できます。そのため、狭い場所での作業に向いています。

スキッドステアローダーは、前面のバケットを用いて土砂のような対象物をすくい上げ、運搬・排出・積み込みなどの作業を行うことが可能です。主に建設現場や倉庫で使用され、小型でありながら優れた機動性を発揮します。通常のホイールローダーと異なる性能や操作方法を持ち、建機の中でも特有の役割を担っています。

アタッチメントの種類が豊富

スキッドステアローダーにはアタッチメントが豊富にあるため、さまざまな作業に対応できる柔軟性があります。

例えば、ボブキャット・カンパニーでは、土木整地、園芸・造園、酪農・農業、除雪など、60種類以上のワークツールを提供しています。一台の機械にさまざまなアタッチメントを取り付けることで、年間を通じて様々な作業を効率的にこなすことが可能です。

この汎用性がスキッドステアローダーの大きな強みであり、さまざまな現場で活躍してくれるでしょう。

スキッドステアローダーの用途

地面をならすスキッドステアローダー

スキッドステアローダーにはさまざまな用途があります。本章では、代表的な用途として、以下の4つをピックアップし解説します。

  • 土木工事
  • 草刈り・除草
  • 積み荷の運搬
  • 雪かき

それぞれの用途について、順番に詳しく解説します。

土木工事

スキッドステアローダーは、土を掘り起こしたり、土を積み上げたりするのに適しています。そのため、建設現場で、基礎の掘削や地盤の整備などに活用されることが多いです。

例えば、土を掘り起こしたいときはホイルソーやトレンチャー、土を積み上げたいときはダンピングホッパーやダンピングバケットなどのアタッチメントが使用されます。

草刈り・除草

モアやロータリーカッターなど専用のアタッチメントを取り付けることで、スキッドステアローダーは草刈りや除草作業にも利用できます。ブラシカッターや草刈り機などのアタッチメントを使用することで、広い土地でも迅速・効率的に草刈り・除草ができるでしょう。

積み荷の運搬

フォークリフトやバケットなどのアタッチメントを使用することで、スキッドステアローダーで建材・荷物などの積み荷を運搬することも可能です。小型で機動性が高いという特徴から、特に小規模な建設現場や倉庫などで使用されるケースが多いです。

また、建設現場での不要な材料や廃材を収集し、積み込んで運搬する際にもスキッドステアローダーが活躍するでしょう。

雪かき

スノーブレードやスノーブロワーなどのアタッチメントを取り付けることで、スキッドステアローダーで雪かきをすることも可能です。例えば、冬季の駐車場・歩道などの除雪清掃が容易になります。

スキッドステアローダーの免許

本章では、スキッドステアローダーの運転・移動のために必要となる免許について、解説します。

運転

スキッドステアローダーを運転するためには、「車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)」と呼ばれる資格の取得が求められます。

必要な資格は、以下のとおり、運転するスキッドステアローダーの車両重量が3t以上か、3t未満かによって、異なります。

スキッドステアローダーの車両重量 必要な資格
3t以上 車両系建設機械(整地等)運転技能講習
3t未満 小型車両系建設機械(整地等)運転特別教育

下表に、車両重量が3t以上あるスキッドステアローダーの運転で必要な資格「車両系建設機械(整地等)運転技能講習」の概要をまとめました。

資格の情報 内容
費用 50,000円〜110,000円前後
日数 14時間〜38時間(2日〜6日間)前後
受講資格 18歳以上
申込先 都道府県労働局長登録教習機関

続いて、車両重量が3t未満のスキッドステアローダーの運転で求められる資格「小型車両系建設機械(整地等)運転特別教育」の概要をまとめました。

資格の情報 内容
費用 20,000円前後
日数 13時間(2日間)前後
受講資格 18歳以上
申込先 社内、社外の教習機関(都道府県労働局長登録教習機関など)

「車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)」をはじめ、建設機械・重機の免許・資格の詳細は以下の記事で解説していますので、併せてご覧ください。

建設機械・重機の免許・資格一覧!費用や日数、受験資格

移動

スキッドステアローダーは、小型特殊車両(全長4.7m以下・全幅1.7m以下・全高2.8m以下)に分類される車両が多いです。小型特殊車両は日本の道路交通法上、小型特殊自動車免許で移動(公道で走行)可能です。

下表に、小型特殊自動車免許の概要をまとめました。

資格・教育の情報 内容
費用 受験料:1,500円
交付手数料:2,050円
日数 1日〜
受講資格 ・16歳以上
・視力:両眼0.5以上
・赤、青、黄の色彩の識別ができる
・10mの距離で90dBの警報器の音が聞こえる(補聴器で補われた聴力も含む)
・自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある四肢もしくは体幹の障害がない
申込先 小型特殊自動車免許の取り扱いがある自動車教習所

すでに普通免許や普通二輪免許を持っている場合、小型特殊自動車免許は下位免許に該当するため、新たに取得しなくても小型特殊自動車の運転が可能です。

ただし、小型特殊自動車免許の取得だけでは、普通自動車を運転できません。普通自動車を運転するためには、普通免許、準中型免許、中型免許、大型免許のいずれかが必要です。

参考:警視庁「小型特殊免許試験」

スキッドステアローダーとホイールローダー、コンパクトトラックローダーの違い

スキッドステアローダーは、ホイールローダーやコンパクトトラックローダーと外見が似ているため、混同されることがあります。

本章では、スキッドステアローダーとホイールローダー、コンパクトトラックローダーの違いを解説しますので、これら3つを区別できるようにしておきましょう。

ホイールローダーとの違い

白背景で曲がろうとしているホイールローダー

ホイールローダーとは、タイヤを使用して走行する建設機械の一種です。特に大量の土砂や砕石をすくい上げる作業に適しています。油圧ショベルと比べて一度により多くの土砂をすくえるのが特徴です。

上記画像の通り、ホイールローダーは車体が前輪と後輪の間で曲がる設計になっており、折れることで方向を変えながら進みます。一方、スキッドステアローダーは車体が曲がらず、左右のホイールの回転数や回転方向によって車体そのものの向きを変えられます。

ホイールローダーは、スキッドステアローダーの特徴である「その場での方向転換」ができません。これに対して、スキッドステアローダーは、ホイールローダーのように大量の土砂を一度に運ぶことはできません。

以上の理由から、ホイールローダーは大量の土砂を積載する必要があるときに、スキッドステアローダーは狭いスペースでの作業や機敏な動きが求められるときに、それぞれの強みを生かして使用されることが多いです。

ホイールローダーについては、以下の記事で詳しく解説しております。スキッドステアローダーとホイールローダーの違いをより理解するために併せてご一読ください。

ホイールローダーとは?特徴や用途、免許を解説

コンパクトトラックローダーとの違い

屋外で作業するコンパクトトラックローダー

コンパクトトラックローダーは、スキッドステアローダーの関連機種として設計された建機です。スキッドステアローダーと同様に小型で扱いやすく、その場での旋回が可能なため、狭い場所でも効果的に運搬や積み込み作業を行えます。

両者の相違点は、スキッドステアローダーが4輪タイヤで走行するのに対し、コンパクトトラックローダーはゴム製のゴムクローラーを使用していることです。

ゴムクローラーは接地面積がタイヤよりも広いため、ぬかるんだ土地や凹凸の多い地形でも高い走破性を発揮します。つまり、難しい地盤条件でもスムーズに動かせるのが、コンパクトトラックローダーの大きな利点です。クローラーについては、以下の記事で構造についても解説しています。お読みいただくことで、様々な重機で活躍するクローラーについて知識を深めることができます。

重機のクローラーとは?移動を支える構造やキャタピラーとの違い

スキッドステアローダーの主なメーカーと製品

スキッドステアローダーの主要メーカーと製品

本章では、スキッドステアローダーを手がける主なメーカー(海外・国内)とその製品例を順番に紹介します。

※本記事で紹介している製品情報は、すべて2024年1月現在の内容です。製品情報について最新情報や、詳細な内容を知りたい場合は、各メーカーのHPでご確認ください。

海外メーカー

まずは、スキッドステアローダーの主な海外メーカーとして、3社とその製品を紹介します。

ボブキャット

前述のとおり、ボブキャットは、1960年に世界で初めてスキッドステアローダーを開発した会社です。現在は、世界中の建設現場や建物内の狭い場所での省力化に貢献しています。

下表に、ボブキャット(日本法人)が提供している主なスキッドステアローダーの種類と特徴をまとめました。

型番 主な特徴
S770 ・重量感と安定感が一体化した大型クラス(大型特殊車両に分類)
・スキッドならではの旋回性能とリーチ、クリアランス不足を解消させたバーチカルブームを搭載
S510 ・機動性と安定性の両立を実現した本格派
・スキッドステアローダーならではの機動性を生かしつつ、滑らかな旋回と走行安定性の向上を実現
S450 ・用途や場所に合わせて豊富なアタッチメントから最適なものを選べる
・駆動力が必要な作業や場所で使用する場合はウエイトをオプション装着可能
S590 ・特殊形状のブームにより、バケットはほぼ垂直に上昇
・スキッド特有の旋回性能と垂直上昇ブームが揃えば、積み込み作業が思いのまま
S100 ・コンパクトながら24.8馬力のディーゼルエンジンを搭載
S70 ・乗用タイプでは最小クラスのコンパクトサイズながら、23.1馬力の高出力エンジンを搭載

参考:ボブキャット「スキッドステアローダーのパイオニア」

キャタピラー

キャタピラーは、アメリカ・イリノイ州に本拠地を置く企業です。建設機械・鉱山機械のほか、ディーゼル・天然ガスエンジン・産業用ガスタービンエンジン分野における世界最大のメーカーです。

下表に、キャタピラー(日本法人)が提供している主なスキッドステアローダーの種類と特徴をまとめました。

型番 主な特徴
226D3 ・優れたドローバ出力により、並外れたミッドリフトリーチで抜群の掘削性能を発揮
・業界トップの密閉加圧式のキャブオプション(清潔で静かな作業環境を提供し、ワークツールがはっきり見える)

参考:キャタピラー「226D3スキッドステアローダ」

ニューホランド

ニューホランドは、1895年にアメリカ・ペンシルベニア州で設立された会社です。農業機械・建設機械ブランドを展開しており、世界中で販売しています。

下表に、ニューホランド(日本法人)が提供している主なスキッドステアローダーの種類と特徴をまとめました。

型番 主な特徴
L300シリーズ ・L200モデルの性能を引き継ぎつつ、さらに進化したシリーズ
・L316:今までのスーパーブームに替わりラジアルリフトを搭載
・L318 / L328:今までのスーパーブームが進化し、安定感と安心感、メンテナンス性が向上
L300DX-HAWXシリーズ ・フロントドア、ワイパー、エアコン装備

参考:ニューホランド「NEW HOLLANDマイスターローダー」

国内メーカー

続いて、スキッドステアローダーの主な国内メーカーとして、3社とその製品を紹介します。

トヨタL&F

トヨタL&Fは、豊田自動織機の社内カンパニーで、物流システム事業と産業車両機器事業を主力事業としている会社です。スキッドステアローダーを「ジョブサン」の製品名で製造しています。

下表に、トヨタL&Fが提供している主なスキッドステアローダーの種類と特徴をまとめました。

型番 主な特徴
5SDK(L)5~10シリーズ ・基本モデル
・5SDK(L)10:バーチカルアームを新採用し、積み込み時の安定性が向上
5SDK(L)3・4 ・小型モデル
・コンパクトながらも優れたパワー、機動力を発揮

参考:トヨタL&F「ジョブサン」

ヤンマー

ヤンマーは発動機・農機・建機・小型船舶の製造・販売を行う大手企業グループです。なお、日本の大手農業機械メーカーでは、最初に持株会社制に移行したメーカーでもあります。

下表に、ヤンマーが提供している主なスキッドステアローダーの種類と特徴をまとめました。

型番 主な特徴
1650R ・長いリーチで運搬・積込みに最適
・好みに合わせて選べる2つの操作オプション(ジョイスティックのみ、ペダルとジョイスティックの併用)
1050R ・ジョイスティックとペダルでの操作(ブームの昇降・ダンプスクイは足元の2つのペダルで操作)

参考:ヤンマー「スキッドステアローダ1650R」
ヤンマー「スキッドステアローダ1050R」

三菱ロジネクスト

三菱ロジネクストは、京都府長岡京市に本社を置き、バッテリー式フォークリフトなどの産業機器を製造する会社です。三菱重工業グループに属しています。

下表に、三菱ロジネクストが提供している主なスキッドステアローダーの種類と特徴をまとめました。

型番 主な特徴
SL7/SL9 ・環境に優しいクリーンディーゼルエンジンを搭載
・電子制御による安全性・操作性の向上
・走行ピッチングの低減
・優れた堅牢性と保守性
・750-900kg積み
703/704/705-2/706-2 ・排出ガス規制適合エンジンを搭載
・安全性を考慮したセーフティバーと荷役ペダル安全ロック機構
・ブーム上昇を安定させる油圧式セルフレベリング機構
・350-650kg積み

参考:三菱ロジネクスト「製品情報-農畜産・除雪・土木・産廃」

まとめ

スキッドステアローダーは、そのコンパクトさと機動性の高さから、狭い場所での作業に適した建機です。左右のタイヤを別々に速度・方向を変えて回転させることで、狭いスペースでの方向転換が可能です。そのため、限られたスペースの現場で非常に役立ちます。

スキッドステアローダーと似た建機にコンパクトトラックローダーやホイールローダーなどがありますが、それぞれに異なる特徴があります。

コンパクトトラックローダーは、ゴムクローラーを使用している点でスキッドステアローダーと異なります。また、ホイールローダーは車体の構造に特徴があり、前輪と後輪の間で車体が曲がる構造を持っています。

作業環境に応じて適切な建機を選んで、作業の効率化につなげましょう。

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