オフロードダンプとは?特徴や大きさ、運転に必要な免許を解説
オフロードダンプは、一般道路ではなく作業現場専用で使用される大型のダンプトラックです。
公道の走行を前提とした普通ダンプトラックとは異なり、オフロードダンプは優れた走破性能を兼ね備えており、悪路や傾斜のきつい現場でも安定した運搬作業が可能です。また、1回あたりの運搬量が多く、作業回数の削減によるコストダウンや工期短縮につながります。
本記事では、オフロードダンプの定義、特徴、大きさ、運転に必要な免許を中心にわかりやすく解説します。オフロードダンプを導入する際の判断材料として、ぜひお役立てください。
目次
オフロードダンプとは
はじめに、オフロードダンプとはどういった重機なのか、定義や対となる車両である「オンロードダンプ」との違いを解説します。
オフロードダンプの定義
オフロードダンプ(別名:重ダンプトラック)とは、主に露天掘りの鉱山や採石場、土地造成、ダム建設といった大規模な土木工事現場で活躍する運搬専用の重機です。場合によっては、敷地造成や大規模な土砂搬出を伴うゴルフ場の建設現場でも使用されることがあります。ダンプトラックの一種に分類されます。
公道を走行できず、現場内などの限定されたエリアで使用されます。一般的なトラックでは対応できない地形や作業環境でも安定して大量の資材を運搬できるように、特殊な構造と大きなパワーを備えています。そのため、土木・建設業界では欠かせない存在として広く利用されています。
以下の記事では、オフロードダンプが含まれるダンプトラックについて、詳しく解説しています。
ダンプトラックとは?特徴・用途・必要な免許をわかりやすく解説
公道を走れない理由
オフロードダンプは、車体サイズや構造が一般道路の規格を大きく超えているため、公道の走行はできません。車幅・車高・重量が法律で定められた制限を超えており、ナンバープレートの取得ができない構造であるため、法律上、公道走行が認められていません。
また、タイヤの種類や排気ガス規制への対応状況なども公道走行には不適合なため、現場内での運搬作業専用として使用されています。このような制約があるため、オフロードダンプは現場への搬入時には大型トレーラーなどを使って輸送する必要があります。
一般的なダンプカー(オンロードダンプ)との違い
オフロードダンプとオンロードダンプは、いずれもダンプトラックに分類されます。しかし、これら2つには明確な違いがあります。
一般的なダンプカー(オンロードダンプ)は道路交通法に適合した車両で、公道を走行できます。
これに対して、オフロードダンプは、公道の走行は認められていないものの、輸送効率や積載量を重視しており、極めて大型でパワフルな点が特徴です。また、タイヤやサスペンションが悪路走行に最適化されており、路面状況が悪くても安定した運搬が可能です。
さらに、車体の構造も異なっており、オンロードダンプが一般的なトラックをベースとしているのに対して、オフロードダンプは専用設計であるため、外観からも一目で違いがわかります。
その他にも、ダンプトラックには様々な種類があります。ダンプトラックの種類を把握し、自社での導入に最適なタイプの選定に役立てたい場合は、以下の記事をご参考ください。
ダンプの種類とは?用途・構造・サイズ・走行環境で解説
オフロードダンプの特徴
本章では、車体の大きさや荷台の構造などの観点から、オフロードダンプの特徴を解説します。
車体の大きさ
オフロードダンプは、全長10m以上、全高5mを超えるものもある巨大な車両です。タイヤは成人男性の身長を超えるものも多く、1本あたり数百万円のものもあります。
巨大な車体は一度に大量の資材を運搬するために必要であり、作業効率の向上に貢献しています。一方で、車体が大きい分、作業スペースの確保や安全対策に一層の慎重さが求められます。現場の規模に応じた機種の選定が重要です。
荷台の構造
オフロードダンプは、大まかに「リジッドフレーム式」と「アーティキュレート式」に分かれます。
リジッドフレーム式は、公道を走行する普通ダンプトラックのような固定型で、大量の積載物を直線的に運ぶのに適しています。これに対して、アーティキュレート式は車体が屈折するため、不整地や軟弱地での走行性に優れています。
こうした特徴を踏まえ、地形や作業内容に応じて使い分けると良いでしょう。
参考:一般社団法人 日本建設機械工業会「オフロードダンプトラック」
悪路や傾斜地での走行性能
オフロードダンプは四輪駆動や六輪駆動を備え、凹凸の激しい地形や傾斜のある現場でも安定した走行が可能です。大きな駆動力(トルク)を備えており、ぬかるみや砂利道でも力強く走行できます。
悪天候時や未整備のルートでも作業を継続できるため、プロジェクトが停滞するリスクを軽減できます。また、サスペンションや車体バランスにも気が配られており、積荷の安定性確保につながっています。
積載量や走行速度
オフロードダンプの最大積載量は、11t〜300tを超えるものまで幅広くあります。積載量が多い分、荷台の昇降機能も強化されており、短時間での荷下ろしが可能です。
走行速度はそれほど速くなく、現場内を安全に移動できるスピードで設計されています。機動力よりも安定性が重視されており、効率的かつ安全な作業を支える性能が備わっています。
オフロードダンプの大きさ
本章では、オフロードダンプの大きさと機種例を紹介します。
大きさの分類
オフロードダンプは、メーカーや用途によって異なるものの、一般的には最大積載量を基準におおよそ以下のように分類されることがあります。
- 小型(〜50t前後)
- 中型(50t前後〜)
- 大型(150t前後〜)
- 超大型(300t前後〜)
小型は比較的狭い現場で、大型は鉱山などの広大なフィールドで使用される傾向があります。大きさの分類に応じて必要な操作スキルや免許要件が異なる場合もあり、運用コストやメンテナンスなどの観点からも適切なサイズ選びが求められます。
大きさ別の代表的な機種例1
大きさの分類別に、オフロードダンプの代表的な機種例を以下にまとめました。
サイズ | メーカー | 機種 | 最大積載量 |
---|---|---|---|
小型 | CAT | 770G | 38.2t |
中型 | コマツ | HD785-8R | 93.9t |
大型 | 日立建機 | EH3500AC-3 | 141t |
超大型 | コマツ | 930E | 297t |
特に930Eは、世界的にも代表的な超大型ダンプのひとつとして知られています。
参考:日本キャタピラー「770G」
コマツカスタマーサポート「HD785-8R リジッドフレーム式」
日立建機日本「超大型リジッドダンプ」
こまつの杜「世界最大級大型ダンプトラック、930Eとは?」
オフロードダンプが使用される現場と用途
本章では、オフロードダンプが活躍する主な現場と具体的な用途について解説します。
採石場・鉱山・ダム工事などでの活用事例
オフロードダンプは、採石場や鉱山、ダム建設など、重機が集まる大規模な工事現場で使用されるケースが多いです。大量の土砂や鉱石を効率的に運ぶ役割を担っています。
これらの現場では地盤が不安定で道路整備がされていないことも多く、オフロードダンプの優れた走行性能が生かされています。連続的な運搬作業が求められる現場では、生産性の向上も期待できるでしょう。
オフロードダンプが活躍するシチュエーション
以下に、オフロードダンプが活躍するシチュエーションの具体例をまとめました。
- 採掘現場での原石運搬
- トンネル工事での残土処理
- 土木造成工事での土砂搬出
- 災害復旧工事での瓦礫運搬
これらのシチュエーションでは高い積載能力と悪路対応力が必要とされ、一般的な車両では対応が非常に難しいことから、オフロードダンプが重宝されています。
他の建設機械との連携
油圧ショベルで土砂などを積み込んでオフロードダンプで運搬するのが、現場での基本的な作業の流れです。このような連携によって、作業効率が大きく向上します。タイミングよく積み下ろしを行うことで、機械の稼働率を高め、工期の短縮にもつながります。
なお、現場によってはクレーンやブルドーザーと連携することもあります。現場に応じて、重機全体で効率的な運用を図ることが重要です。
オフロードダンプの運転に必要な免許
本章では、オフロードダンプを運転する際に必要な免許について解説します。
必要な運転資格
オフロードダンプを使用して作業を行う際は、「車両系建設機械運転技能講習(整地・運搬・積込み及び掘削用)」を修了する必要があります。
加えて、事業者によっては、実務経験や各メーカー主催の研修などを通じて、安全に運転できることを確認した上で実際の作業に取り掛かるケースもあります。
なお、オフロードダンプは基本的に公道を走行しないため、道路交通法に基づく自動車運転免許の取得は求められません。
以下の記事では、オフロードダンプをはじめとする重機の取り扱いで求められる免許・資格を網羅的に紹介しています。重機の導入を検討している場合は、ぜひ併せてご覧ください。
オフロードダンプの運搬方法
前述の通り、オフロードダンプにはナンバープレートがなく、公道を自走できません。したがって、現場までの移動は大型の低床トレーラーで搬送するのが一般的です。
オフロードダンプの搬送には大型トレーラーの運転に必要とされる免許のほか、特別車両通行許可が必要となり、通行許可の申請内容及び許可条件(積載重量、積載貨物、許可ルート、通行時間帯、徐行・誘導車など)の遵守が求められます。
参考:国土交通省 中部地方整備局「特殊車両は通行許可が必要です」
オペレーターになる方法
前述の通り、労働安全衛生法に基づく講習「車両系建設機械運転技能講習(整地・運搬・積込み及び掘削用)」を受けることで、オフロードダンプのオペレーターとして作業に従事できます。
基本的には、建設業界での実務経験と並行して資格取得を進めるのが一般的です。また、企業によっては社内研修制度を設けており、資格取得と並行して安全運転や日常点検のスキルを習得する場合もあります。
主なオフロードダンプのメーカー
世界的に知られるオフロードダンプのメーカーには、以下のような企業があります。
メーカー名(国) | 詳細 |
---|---|
コマツ(日本) | 耐久性はじめ性能に優れたモデルが特徴で、国内外で高評価を獲得している。 |
キャタピラー(アメリカ) | 世界トップクラスのシェアを誇り、大型モデルのラインナップが充実している。 |
日立建機(日本) | 国内外の工事現場で多く採用されており、信頼性とサポート体制に定評がある。 |
リープヘル(ドイツ) | 欧州を中心に活躍しており、優れた技術力に特徴がある。 |
各メーカーではそれぞれ機種の特性や得意分野が異なるため、使用環境や作業内容に応じた選定が重要です。導入コストに加えて、アフターサービスの充実度や部品供給の体制も比較の際に押さえておきたいポイントです。
上表で取り上げた重機メーカーについてさらに詳しく知りたい場合は、以下の記事をご覧ください。
オフロードダンプのよくある質問
最後に、オフロードダンプの導入を検討している人からよくある質問に回答しました。
オフロードダンプは誰でも運転できる?
オフロードダンプを運転するには、「車両系建設機械運転技能講習(整地・運搬・積込み及び掘削用)」を修了する必要があります。無資格での運転は法令違反となり、重大な事故にもつながるため、事業者には厳密な管理が求められます。
公道を走らせる方法はある?
基本的に、公道の走行は不可能です。構造的にも法的にも、オフロードダンプは公道を走行する想定で設計されていません。別の場所への移動が必要な場合、大型の低床トレーラーで搬送するほか、解体・分割して輸送し現場で組み立てる方法が取られることもあります。
購入・レンタルはできる?
購入とレンタルいずれも可能です。新品・中古ともに販売されているほか、建設機械専門の業者からレンタルする選択肢もあります。
基本的に、オフロードダンプは大型になるほど費用や輸送の手間が増します。リース契約を結ぶことでメンテナンスコストを抑えられる場合もあります。
まとめ
オフロードダンプは、採石場や鉱山などの過酷な現場で活躍する、大型で高出力の重機です。巨大な車体を安全に運転・操作するためには、「車両系建設機械運転技能講習(整地・運搬・積込み及び掘削用)」の修了が必要です。また、公道を走行できないため、現場までの搬送方法や関連法規の遵守も重要なポイントとなります。
オフロードダンプの導入にあたっては、現場の規模や運搬物の種類・量、必要な免許の有無を事前に確認し、最適な機種やメーカーを選定することが大切です。安全性と作業効率を確保するためにも、導入前の準備や運用に関わる人材の教育にも十分な配慮を行いましょう。