重機・建機の種類 2024.11.11

クレーン車とは?種類や免許、メーカーを解説

クレーン車は、重い荷物を持ち上げたり、遠くに運んだりするために使用される特殊な建機車両です。建設現場や物流、インフラ整備など、幅広い分野で活躍しています。クレーン車にはさまざまな種類があり、それぞれ用途や特徴が異なります。適切な車両を選ぶことが、作業の効率や安全性に直結します。

また、クレーン車を操作するためには、所定の免許が必要です。免許の種類は、操作するクレーン車のサイズや種類によって異なります。

本記事では、クレーン車の基本的な種類や免許の取得方法、代表的なメーカーについて詳しく解説します。クレーン車についての知識を深め、作業に合ったクレーン車を選ぶための参考にしてください。

クレーン車とは?

クレーン車の全景

クレーン車とは、人力では持ち上げられない大型の荷物を吊り上げ、水平に移動させることができる車両です。厚生労働省によって、「移動式クレーン」として次のように定義されています。

  • 荷物を動力で吊り上げ、これを水平に運搬することを目的とした機械装置で、エンジンを内蔵し、自由に移動できるもの

多くの人が「荷物を吊り上げる重機」としてクレーン車をイメージしているかもしれませんが、実際には「吊り上げること」や「水平に運搬すること」といった機能を備えて初めてクレーン車と呼ばれます。

クレーン車の主な使用場所は、ビルやマンション、一戸建ての建設現場、土木工事現場などです。

参考:厚生労働省「小型移動式クレーンに関する知識」

クレーン車の種類

クレーン車には実に多くの種類があります。本章では、クレーン車の代表的な種類を紹介します。

トラッククレーン

トラッククレーンは、自走して他の場所へ移動できるクレーン車の一種です。主として、2つの運転席、シャシー、クレーンブーム、旋回部分などで構成されています。

特徴的なのは、2つの運転席がある点です。1つは道路走行用で、旋回機能やアウトリガーを備えており、もう1つはクレーン操作専用の運転席です。道路走行時と作業時には異なる操作が必要であるため、2つの運転席が設置されています。

トラッククレーンは優れた機動力と走行性能を持ち、高所への資材の搬入・搬出、柱の組み立て、大型の重量物の運搬など、多様な用途で活用されています。工事現場や建設現場などで広く使用され、公道でもよく目にする車両です。

トラッククレーンについて詳しく知りたい場合は、以下の記事をご覧ください。

トラッククレーンとは?種類や他の移動式クレーンとの違い、免許を解説

ユニック車(トラック搭載型クレーン)

ユニック車は、クレーンを装備したトラックの一種で、トラッククレーンと同様の機能を持つ車両です。正式には「トラック搭載型クレーン」と呼ばれ、ユニック車という名称はその通称に過ぎません。

ユニック車の主な特徴は、小型から中型の貨物の運搬や積み下ろしに特化している点です。特に狭い道路やスペースが限られた場所でも、小型のユニック車であればスムーズに作業が可能で、住宅街の工事現場などでも頻繁に活用されています。

ユニック車の詳細は、以下の記事にまとめています。

ユニック車とは?種類や2t・4tのサイズ、資格・免許、選び方

レッカー形トラッククレーン

レッカー形トラッククレーンは、故障車や事故車の運搬に特化しており、「レッカー車」とも呼ばれます。車両を持ち上げたり、牽引したりするための装備が搭載されています。

レッカー形トラッククレーンも、クレーン機能を持つ車両であるため、広義では「クレーン車」の一種として位置付けられています。

ただし、他のクレーン車(ユニック車、ラフテレーンクレーン、トラッククレーンなど)が主に荷物・資材の運搬を目的としているのに対し、レッカー形トラッククレーンは主に故障車や事故車の回収・運搬を目的としている点が特徴的です。

ラフテレーンクレーン

ラフテレーンクレーンの全景

ラフテレーンクレーンとは、不整地や狭い場所での走行性に優れているクレーン車を指します。別名、「ラフタークレーン」とも呼ばれています。

ラフテレーンクレーンの主な特徴に、未舗装の現場や狭い工事現場に適している点が挙げられます。大型タイヤを装備した全輪駆動式であるため、不整地や比較的軟弱な地盤でも走行ができます。また、4種類の操向方式を備えているため、狭隘地での機動性も優れています。

ラフテレーンクレーンは、走行とクレーン操作の両方を一つの運転席で行えるという特徴があります。

ラフテレーンクレーンの詳細は以下の記事にまとめていますので、併せてご覧いただくことをおすすめします。

ラフタークレーンとは?サイズやメーカー、免許を解説

オールテレーンクレーン

オールテレーンクレーンの全景

オールテレーンクレーンは、あらゆる地形に対応できるクレーン車で、優れた吊り上げ能力と高い機動性を兼ね備えています。狭い現場でも大きな荷物を吊り上げる作業に適しており、特にクレーン能力が求められる場所で活躍しています。

全輪駆動と全輪ステアリングを搭載しており、舗装された道路から不整地まで、幅広い地形での走行が可能です。その名の通り、「すべての地形」に対応できるオールマイティな性能を持っています。

オールテレーンクレーンについて詳しく知りたい場合は、以下の記事をご覧ください。

オールテレーンクレーンとは?ラフタークレーンとの違い、免許を解説

クローラークレーン

クローラークレーンの全景

クローラークレーンは、走行部分がクローラー(履帯)や起動輪・遊動輪、上部・下部ローラーから構成されている台車にクレーンを搭載したタイプを指します。

ホイール式のクレーン車とは違い、左右の履帯が広い接地面積を持つため、地面への圧力が分散され、安定性が高くなっています。そのため、不整地や柔らかい地盤でも重い荷物を持ち上げる作業に適しています。

一方で、クローラークレーンは走行速度が遅く、公道を走ることができません。そのため、現場間の移動はトレーラーなどに載せて輸送する必要があります。クローラークレーンは、重量や大きさによっては道路法に基づく制限があり、分解して輸送し、現地で再度組み立てる必要があります。具体的な分解が必要な重量は、クレーンの種類や規制によって異なります。

クローラークレーンの詳細は、以下の記事にまとめています。

クローラークレーンとは?種類や4.9tクラスの需要、免許を解説

参考:一般社団法人 日本クレーン協会「移動式クレーンの知識」
一般社団法人 日本クレーン協会「小型移動式クレーンの知識」

クレーン車の免許・資格

クレーン車の運転席

クレーン車に関する免許・資格にはさまざまな種類があります。クレーン車を操作するには、作業内容に応じた免許が必要です。例えば、吊り上げ荷重5t(トン)以上のクレーン車には『移動式クレーン運転士免許』が必要であり、玉掛け作業には『玉掛け技能講習修了証』が求められます。それぞれの免許や資格の違いを明確に理解し、作業に適した資格を取得することが重要です。

  • 移動式クレーン運転士免許
  • 自動車運転免許
  • 玉掛け技能講習

それぞれの免許・資格について順番に解説します。

移動式クレーン運転士免許

移動式クレーン運転士免許とは、労働安全衛生法に定められている国家資格であり、クレーン車を安全かつ適切に操作するために求められる資格のことです。

所定の学科と実技試験に合格し、移動式クレーン運転士免許を取得することで、吊り上げ荷重5t以上のものを含めて、すべてのクレーン車を運転できるようになります。建設現場や物流施設などで幅広い種類のクレーン車を用いた作業が可能となり、仕事の幅も広がります。

下表に、移動式クレーン運転士免許の概要をまとめました。

資格・教育の情報 内容
教習受講費用 130,000円〜160,000円程度
試験内容・日数 【学科(13:30~16:00、2時間30分)※科目免除者は13:30~15:30(2時間)】
・移動式クレーンに関する知識:10問(30点)
・原動機及び電気に関する知識:10問(30点)
・関係法令:10問(20点)
・移動式クレーンの運転のために必要な力学に関する知識:10問(20点)【実技(時間は午前・午後に分けて受験票に記載)】
・移動式クレーンの運転
・移動式クレーンの運転のための合図
受験資格 18歳以上
申込先 公益財団法人安全衛生技術試験協会、各地の安全衛生技術センターなど
参考HP https://www.exam.or.jp/exmn/H_shikaku232.html

なお、クレーン車(移動式クレーン)はトラックにクレーンが搭載されているのが特徴で、必要に応じて自走して現場間を移動できます(クローラークレーンを除く)。したがって、クレーン車を操作するためには「クレーン・デリック運転士免許」ではなく、「移動式クレーン運転士免許」が必要です。

一方で「クレーン・デリック運転士免許」は、大型クレーンやデリッククレーンといった固定されたクレーンを操作するために必要な免許です。これらの種類のクレーンは建設現場や工場などで使用されることが多く、クレーン自体がその場に設置されており、自走によって移動することがありません。

移動式クレーン運転士免許の詳細は以下の記事で解説していますので、併せてご覧いただくことをおすすめします。

移動式クレーン免許とは?取得の流れや費用、学科・実技試験の内容

自動車運転免許

一般道路でクレーン車を運転するためには、クレーンの土台部分に対応する自動車運転免許(例:大型特殊免許、大型免許など)の取得が求められます。

公道でのクレーン車の運転に求められる運転免許は、運転するクレーン車の種類や車体の大きさなどで変動します。道路交通法では、クレーン車をはじめとする自動車の運転に必要な免許の種類が下表の通り定められています。

免許の種類
(車種)
車両総重量 最大積載量 乗車定員 取得できる
年齢
大型免許
(大型自動車)
11t以上 6.5t以上 30人以上 21歳~
中型免許
(中型自動車)
7.5t~11t未満 4.5t~6.5t未満 11人~30人未満 20歳~
準中型免許
(準中型自動車)
3.5t~7.5t未満 2t~4.5t未満 11人未満 18歳~
普通免許
(普通自動車)
3.5t未満 2t未満 11人未満 18歳~

なお、クレーン車のうちラフタークレーンを公道で運転する場合には、大型特殊自動車免許が必要です。

参考:公益社団法人 全日本トラック協会「5. 車種区分」

玉掛け技能講習

玉掛け技能講習は、クレーン車でのクレーン作業において、荷物をつり上げる際に必要となる資格です。

玉掛け技能講習を修了することで、吊り上げ荷重を問わず、クレーン車におけるすべての玉掛け業務が行えるようになります。

下表に、玉掛け技能講習の概要をまとめました。

資格・教育の情報 内容
費用 40,000円前後
日数 30時間(3日間)
講習内容 【学科(18時間)】
・クレーン、移動式クレーン、デリック及び揚貨装置に関する知識
・クレーン等の玉掛けに必要な力学に関する知識
・クレーン等の玉掛けの方法
・関係法令【実技(12時間)】
・クレーン等の玉掛け
・クレーン等の運転のための合図
受講資格 18歳以上
申込先 都道府県労働局長登録教習機関

クレーン車のメーカー

本章では、クレーン車の代表的なメーカーをピックアップして紹介します。

  • コベルコ建機
  • タダノ
  • 加藤製作所
  • 古河ユニック
  • 前田製作所
  • 住友重機械建機クレーン

なお、クレーン車には様々な機種があり、ここで取り上げていないメーカーも数多く存在します。ご自身・自社の用途に合わせて、適したクレーン車を選ぶことが大切です。

コベルコ建機

コベルコ建機は、神戸製鋼グループに属する大手建設機械メーカーです。1999年に神戸製鋼所と油谷重工が統合して誕生しました。

1930年には日本初の国産建機「電気ショベル50K」を開発し、その後の1953年には国産初のトラッククレーンを製造しました。

クレーン車の製造では、都市の狭い現場でもスムーズに移動できるコンパクトなボディとパワー、走行性能でKOBELCOのホイール開発技術が発揮されています。ラフテレーンクレーンやオールテレーンクレーン、クローラークレーンなどのラインナップを提供しています。

参考:コベルコ建機「ホイールクレーン」
コベルコ建機「クローラクレーン」

タダノ

タダノは、建設用クレーンや車両積載型クレーン、高所作業車などを製造・販売する世界最大手級の建設用クレーンメーカーです。

特に油圧式クレーンの分野で高い評価を得ており、建設現場や産業分野で幅広く活用されています。タダノの製品は、信頼性や耐久性が非常に高く、国内外の多くの企業で採用されている点が大きな特徴です。また、技術革新にも積極的に取り組んでおり、安全性や操作性を向上させる製品開発を続けています。

クレーン車の製造では、オールテレーンクレーンやラフテレーンクレーン、クローラクレーン、トラッククレーン、カーゴクレーン(積載型トラッククレーン)などのラインナップを提供しています。

参考:タダノ「製品」

加藤製作所

加藤製作所は1895年に設立された長い歴史を持つ建機メーカーであり、クレーン車の製造で高い評価を受けています。1938年にクレーン車両の生産を開始し、その後も技術革新を重ねてきました。加藤製作所のクレーン車は、耐久性と操作性に優れ、国内トップクラスのシェアを誇ります。

クレーン車の製造では、ラフテレーンクレーンやオールテレーンクレーン、トラッククレーン、トラック積載型クレーン、クローラクレーンなどのラインナップを提供しています。

参考:加藤製作所

古河ユニック

古河ユニックは、1946年に設立された日本のクレーンメーカーで、特にトラック搭載型クレーンで高い評価を得ています。1954年に機械式トラッククレーン「MC-5」を開発し、1957年には油圧式ホイールクレーン「KD-50」を発表しました。

1961年には日本初となる油圧式トラック搭載クレーン「UNIC100」を開発し、以降50年以上にわたり常に新しい技術を取り入れ、顧客のニーズに応え続けています。

1970年に社名を「ユニック」に変更した後、1987年には古河機械金属の傘下に入ったことで1989年に現在の社名である「古河ユニック」となりました。

クレーン車の製造では、ユニッククレーン、ミニ・クローラクレーンなどのラインナップを提供しています。

参考:古河ユニック「沿革|会社情報」
古河ユニック「製品情報」

前田製作所

前田製作所は、もともと前田建設工業の篠ノ井機械工場として設立され、1962年に株式会社として独立しました。「かにクレーン」や「クローラクレーン」を中心としたマエダブランドの製品を開発し、製造から販売までを手掛けています。近年、マエダブランドは国内外で高い評価を受け、現在では世界50か国以上でその製品が使用されています。

参考:前田製作所「前田製作所とは」

住友重機械建機クレーン

住友重機械建機クレーンは、もともとは住友重機械工業と日立建機の合弁会社として設立され、日立建機のクレーン部門と住友重機械グループのクレーン部門子会社により、クローラークレーンに特化した会社としてスタートしました。2022年からは住友重機械工業の完全子会社となっています。

クレーン車の製造では、クローラクレーン全般や、ハイラインプル仕様・ヘビーデューティ仕様、テレスコピッククローラクレーンなどのラインナップを提供しています。

参考:日立建機「日立建機が住友重機械建機クレーンの持株を住友重機械工業へ譲渡」

まとめ

クレーン車は、建設や物流など多くの業界で必要不可欠な存在です。種類や用途によって選ぶべき車両が異なり、操作するためには所定の免許・資格も必要です。

また、メーカーごとに特徴があり、性能やサポート体制もさまざまです。クレーン車を選ぶ際には、作業の規模や目的に応じて適切な車種を選び、免許を取得したうえで安全に操作することが重要です。

本記事の内容を参考に、今後の作業においてクレーン車を最大限に活用し、効率的で安全な運搬作業を実現しましょう。

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