マカダムローラーとは?特徴やタンデムローラーとの違い、機種紹介
建設現場や舗装工事などで活躍する重機の中で、ロードローラーは地盤の締固めや舗装材の敷きならし作業などに欠かせません。そのロードローラーの中でも、マカダムローラーは建設現場で広く活用されている重機として位置づけられています。
しかし、似た重機であるタンデムローラーとの違いや、具体的な用途について詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、マカダムローラーの基本的な仕組みや特徴、タンデムローラーとの違いをわかりやすく解説します。代表的な機種の紹介も交えながら、どのような現場でマカダムローラーが活用されているのか説明しているので、ぜひ参考にしてください。
目次
マカダムローラーとは?
マカダムローラーとは、マカダム式ロードローラーの別称で、鉄製のローラーを3輪(前に1輪・後ろに2輪、またはその逆)備えたロードローラーの一種です。名前の由来は、19世紀に考案された「マカダム舗装法(※1)」にあります。
日本では1922年、三菱造船(当時)によってタンデムローラーと共に開発・販売され、初めて導入されました。当時のマカダムローラーは、関東大震災の復興時に大いに活躍したといわれています。
マカダムローラーの大きな特徴は、締固め性能の高さにあります。鉄製の3輪ローラーと重量のある車体により地面をしっかりと圧縮するため、建設現場や道路工事などで舗装面を均一に仕上げるために活用されています。
また、ローラー部分に水や鉄などのバラスト(※2)を追加して自重を増やせるため、初期転圧作業での使用においても、その効率性の高さが評価されています。
こうした機能により、マカダムローラーは、道路の下層路盤を均一に締め固める重機として、舗装工事ではアスファルトを敷設する前の基盤整備、復旧工事では地震や災害で損傷した道路の再整備などで重要な役割を担っています。
※1:砕石を敷き詰めて耐久性を高める道路舗装法のこと。アスファルトやコンクリートが一般的になる以前に多く用いられた。スコットランド人の技術者「ジョン・ラウドン・マカダム」が考案した道路舗装の方法の1つ。
※2:乗り物の重量を増したり重量のバランスを取ったりするために積み込む重しのこと。
マカダムローラー以外の種類のロードローラーについて詳しく知りたい場合は、以下の記事をご覧ください。
参考:一般社団法人 日本建設機械施工協会「建設の施工企画|我が国における締固め機械の変遷(その1.黎明期~昭和30年代)」
マカダムローラーの特徴と用途
ここでは、マカダムローラーの特徴や具体的な用途について順番に詳しく解説します。
マカダムローラーの特徴
以下に、マカダムローラーの主な特徴をまとめました。
特徴 | 説明 |
---|---|
鉄輪構造 | 3輪の鉄輪により、重量を分散しながら効果的に締固めを行える。 |
締固め性能 | 粒状材料や砕石などをしっかりと締め固められる。 |
操作性 | 比較的シンプルな構造で、操作が容易。 |
マカダムローラーの用途
マカダムローラーの基本的な用途は、下記になります。
用途 | 説明 |
---|---|
下層路盤の締固め | 粒状材料や砕石を使用した下層路盤の均一な締固めが得意。 |
道路舗装 | アスファルト舗装前の基盤整備に使用される。 |
マカダムローラーは、特に砕石の締め固めやアスファルト混合物の転圧に適しており、不整地や段差が多い工事現場での路盤整備や、道路の基盤を均一に整える作業で優れた性能を発揮します。
そのため、道路舗装工事や地震復旧工事の下層路盤整備などで頻繁に使用される重機として位置づけられています。
マカダムローラーとタンデムローラーの違い
マカダムローラーとタンデムローラーの主な違いは、以下の通りです。
- 車輪数
- 車体重量
これら2つの観点から、マカダムローラーとタンデムローラーの違いを詳しく解説します。
車輪数
マカダムローラーは3輪構成で、前方に1輪、後方に2輪(またはその逆)を備えています。一方、タンデムローラーは2輪の鋼製ローラーで構成されており、前方と後方にそれぞれ1輪ずつ車輪を備えているのが特徴です。
マカダムローラーの3輪構造は、凹凸に強い設計を追求した結果生まれたものであるとされており、不整地や段差の多い場所で優れた性能を発揮します。
対照的に、タンデムローラーは2輪で構成されており、凹凸や段差への対応力やカバーできる面積などの観点ではマカダムローラーに劣るとされています。しかし、シンプルな構造であるために狭い場所での施工に適しているのが魅力です。
車体重量
マカダムローラーとタンデムローラーは、車体の重さにも大きな違いがあります。マカダムローラーは、3輪構造により車体の重量が分散され、広い面積を均一に締め固められるように設計されています。そのため、重量が重くなり、路盤をしっかりと圧縮する性能が高くなっています。
一方、タンデムローラーは機動力を重視して設計される傾向があり、車体は比較的軽量です。この軽さにより、狭い場所や小規模な施工現場でも小回りが利き、効率的に作業を進められるとされています。
これら2つのタイプの特性を理解して適した場面で活用することが、施工期間の短縮やコスト削減に繋がります。作業内容や現場条件に応じて、最適なタイプのロードローラーを選びましょう。
タンデムローラーについて理解を深めたい場合は、併せて以下の記事もお読みください。
タンデムローラーとは?特徴、用途、マカダムローラーとの違いと機種紹介
マカダムローラーの免許・資格
マカダムローラーの取り扱いにあたって必要となる免許・資格は、以下のとおりです。
- 締固め用建設機械(ローラー)の運転の業務に係る特別教育
- マカダムローラーのサイズに応じた自動車運転免許
まず、マカダムローラーを操作するためには、「締固め用建設機械(ローラー)の運転の業務に係る特別教育」を修了する必要があります。
この特別教育ではマカダムローラーの操作方法や安全管理について学び、修了することで建設現場や私有地内でマカダムローラーを操作することが可能です。
ただし、公道を走行させる場合には、別途マカダムローラーのサイズに応じた自動車運転免許(大型特殊自動車免許もしくは小型特殊自動車免許)が必要です。
現場での操作だけでなく公道での走行も予定している場合は、特別教育と自動車運転免許の両方が必要です。
締固め用建設機械(ローラー)の運転の業務に係る特別教育について、詳しくは以下の記事で解説しています。
ローラーの運転の業務に係る特別教育とは?内容、受講方法、費用
マカダムローラーの機種
本章では、マカダムローラーの機種の一例として以下の2つをご紹介します。
- 酒井重工業:R2-4
- 日立建機:ZC125
それぞれの機種における製品概要や特徴を順番に詳しく解説します。
なお、マカダムローラーは数多くのメーカーがさまざまな機種を発売しており、ここで取り上げていない機種も数多く存在します。用途に合わせて、適したマカダムローラーを選ぶことが大切です。
酒井重工業:R2-4
R2-4は、酒井重工業のマカダムローラーです。
酒井重工業では、ロードローラー(マカダムローラー)をはじめ、土工用振動ローラ、タイヤローラー、舗装用振動ローラー、小型締固め機械、道路維持/路盤改良/散水車などを製造・販売しています。
R2-4の主な特徴は、以下のとおりです。
- 優れた締固め効果と高い作業効率を確保
- 曲線部の踏み残しがないアーティキュレートフレームを採用
- 前後進レバーが中立時のみエンジン始動するインターロック機構を標準装備
- 3系統ブレーキシステムを標準装備
- ECOモードを搭載(NETIS登録商標)
- CO2排出量を従来機種と比較して40%削減
- 超低騒音基準値より5dB低減
- 道路運送車両の保安基準平成26年排出ガス規制に対応
- オフロード法2014年基準に対応
- メンテナンス性の向上
- DPFメータにススの堆積量を表示
- DPF自動再生
- 脱着の容易なエアクリーナ
下表に、酒井重工業「R2-4」の基本的な仕様をまとめました。
商品名称(型式) | R2-4 |
---|---|
運転質量 | 10,100kg |
エンジン定格出力 | 54.6kW |
全長 | 5,020mm |
全幅 | 2,100mm |
全高 | 3,060mm |
締固め幅 | 2,100mm |
参考:酒井重工業「製品情報|R2-4」
酒井重工業「R2-4」
日立建機:ZC125
ZC125は、日立建機のマカダムローラーです。
日立建機は、マカダムローラーをはじめとする建設機械や運搬機械、農業用機械、これらに関連する機械器具並びに部品の賃貸借・リース、販売、修理など、幅広いサービスを提供しています。
ZC125の特徴の一つに、オプション装備の「衝突被害軽減アシスト装置」が挙げられます。これは、運転中に物体を検知してオペレータの安全運転を支援する装置です。衝突リスクを低減しつつ、緊急停止時に転圧面を傷めないような配慮がされています。
下表に、日立建機「ZC125」の基本的な仕様をまとめました。
商品名称(型式) | ZC125M |
---|---|
運転質量 | 10,125kg |
エンジン定格出力 | 54.6kW |
全長 | 5,020mm |
全幅 | 2,100mm |
全高 | 3,140mm |
締固め幅 | 2,100mm |
参考:日立建機カミーノ「製品情報|マカダムローラZC125」
日立建機「ZC-5 シリーズ|ZC125M」
まとめ
マカダムローラーは、鉄製のローラーを3輪(前方に1輪、後方に2輪)備えたロードローラーの一種です。締固め性能の高さに特徴があります。鉄製の3輪ローラーと重量のある車体により地面をしっかりと圧縮するため、建設現場や道路工事などで舗装面を均一に仕上げるために活用されています。
一方で、機動力を比較すると、タンデムローラーには劣る場合があります。こうした点を踏まえて、作業の目的や条件に応じてマカダムローラーとタンデムローラーを使い分けましょう。