ダンプの種類とは?用途・構造・サイズ・走行環境で解説
建設・土木工事などの現場で活躍するダンプトラックには、多くの種類が存在します。見た目は似ていても、それぞれの車両には用途や機能などに違いがあり、適切なタイプを選ぶことが安全性や作業効率を高める重要な要素となります。
しかし、初めてダンプトラックを取り扱う方にとっては、どの車両がどういった現場に適しているのか判断することは難しいでしょう。
そこで本記事では、用途や構造、サイズ、走行環境といった4つの視点からダンプトラックを種類分けし、各タイプの特徴について解説します。これからダンプトラックの導入を検討している方や、車両選定の参考にしたい方はぜひご一読ください。
目次
ダンプトラックの種類はどう分けられる?
ダンプトラックは、使用される現場の環境や運搬する資材の種類などに応じて様々なタイプに分けられます。各種類に見られる特徴を把握しておくと、現場のニーズに合った最適なダンプトラックを選びやすくなります。
ダンプトラックは、大まかに以下の4つの視点から種類分けされるのが一般的です。
分類 | 詳細 |
---|---|
用途 | どのような資材(砂、砕石、廃材など)を運ぶか、どのような現場(建設、解体、採石場など)で使うかにより分類 |
構造 | 荷台の形状や傾け方、材質、補強の有無など、荷台の仕様により分類 |
サイズ | 最大積載量に応じて、小型・中型・大型・超大型に分類 |
走行環境 | 一般道を走行できるか、あるいは構内や特定エリアでのみ使用する専用車両かといった違いで分類 |
なお、種類を確認する前に、ダンプトラックの定義や特徴について理解を深めておきたい場合は、併せて以下の記事もご覧ください。
ダンプトラックとは?特徴・用途・必要な免許をわかりやすく解説
以降の章では、上記4つの観点から代表的なダンプトラックの種類を詳しく解説します。
用途によるダンプの種類
用途で分けると、ダンプトラックには以下のような種類があります。
- 普通ダンプトラック
- 重ダンプトラック
- その他の用途特化型ダンプ
これら3種類のダンプトラックについて、順番に詳しく解説します。
普通ダンプトラック(オンロードダンプ)
最も一般的に使用されているダンプトラックで、建設現場や道路工事、土木作業などで広く見かけます。大きな特徴は、公道を走行できるナンバープレート付きの車両である点です。
最大積載量は 2〜10t 程度の車両が多く、小規模な現場から中〜大規模な工事現場まで、用途に応じてさまざまな現場ニーズに対応できる車両です
主に土砂や砂利、アスファルトなどの建設資材を運ぶために用いられ、荷下ろし作業もシンプルで扱いやすいため、多くの現場で活躍しています。住宅地の工事や公共工事など、日常的な工事の中核を担う存在です。
重ダンプトラック(オフロードダンプ)
鉱山や採石場、大規模な造成工事、ダム建設などの特殊かつ広大な現場で使用される大型のダンプトラックです。オフロードダンプとも呼ばれており、未舗装地の走行は得意ですが、公道を走行することはできません。
重ダンプトラックは、建設・土木工事の構内や敷地内など、限られたエリアでの運用が基本となります。※運用範囲の判断は、作業現場の区分や安全管理の方針によって異なる場合があります。
主にキャタピラーやコマツといった重機メーカーが製造しています。これは、通常の車両メーカーでは対応が難しい高い積載性能や特殊な走行性が求められるためです。
最大積載量は 50〜300t クラスのものもあり、特に鉱山向けに設計された一部の超大型モデルでは、それ以上の積載量を持つものも存在します。コストが比較的高額であるため、中小規模の施工業者ではなく、大手の鉱山会社やインフラ整備事業者などによる導入が主流です。
重ダンプトラック(オフロードダンプ)の構造や特徴、どれくらいの大きさがあるのか、運転にはどんな免許が必要なのかについては、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
その他の用途特化型ダンプ
その他の用途特化型ダンプとして、代表的な3つの種類を順番に紹介します。
深ダンプ
荷台が深く、かさばる資材を大量に積めます。特に木材や廃材などを扱う業者にとって使い勝手の良いダンプトラックです。深ダンプは、用途別に以下の3つのタイプに細分化されます。
深ダンプの種類 | 詳細 |
---|---|
ファームダンプ | 農業用途向けで、堆肥やもみ殻などを大量に運ぶのに適している |
チップダンプ | 木材チップなど、軽くてかさばる資材の運搬に使用される |
清掃ダンプ | 浄化槽や汚泥の運搬に使われる、衛生設備向けのタイプ |
保温ダンプ
舗装工事などで使用されるアスファルト合材を一定温度に保ったまま現場まで運搬できるダンプトラックです。荷台には断熱材や保温機能などが備えられており、冷却による品質低下を防止できる構造になっています。
ステンレスダンプ
荷台がステンレス製で、腐食に強いのが特徴です。下水工事で発生する汚泥や塩分を含む廃材、水分の多い資材などを扱う際に使用されます。メンテナンス性が高く、清掃もしやすい構造です。
構造によるダンプの種類
構造を基準にすると、ダンプトラックには以下のような分類があります。
- 荷下ろし方向による分類
- 荷台の形状・強度による分類
これら2つの分類について、順番に詳しく解説します。
荷下ろし方向による分類
荷下ろし方向で分けると、ダンプトラックは以下のような種類に分かれます。
- リアダンプ
- サイドダンプ
- 三転ダンプ
- Lゲートダンプ
それぞれ順番に詳しく紹介します。
リアダンプ
荷台が後方に傾くタイプで、土砂やアスファルトなどを後方に落とし、荷下ろしがしやすいのが特徴です。非常に多くの現場で使われているスタンダードな構造です。
サイドダンプ
荷台が横方向に傾斜する構造で、側溝や壁際などスペースの限られた現場への荷下ろしに適しています。狭い現場や片側通行の道路など、後方にスペースが確保できない状況で重宝されています。
三転ダンプ
荷台を後方・左右の三方向に傾けられるタイプです。柔軟性が高く、複雑な現場や小回りの利く作業に向いています。利便性は高いですが、構造が複雑な分、コストも高くなります。
Lゲートダンプ(Fゲートダンプ)
荷台の後部扉がL字型またはフラップ状に開く構造を持ち、土砂やアスファルトなどをスムーズに排出できます。後部扉が開いた際に扉が平ら(フラット:Flat)になることから、「Fゲートダンプ」とも呼ばれています。
後扉が下部から開くことで積載物が引っかかりにくく、リアダンプに比べて排出のコントロールがしやすいため、舗装工事や敷き均し作業で重宝されています。
Lゲートダンプについて詳しく知りたい場合は、併せて以下の記事もご一読いただくことをおすすめします。
Lゲートダンプ(Fゲートダンプ)とは?構造や動作の仕組みを解説
荷台の形状・強度による分類
荷台の形状・強度で分けると、前述した深ダンプのほかに以下のような種類があります。
- ローダーダンプ
- 強化ダンプ
これら2種類のダンプについて、順番に詳しく紹介します。
ローダーダンプ
荷台が低床になっており、重機(例:油圧ショベル)で積み込みやすい設計になっています。小規模現場や高さ制限のある作業現場で特に重宝されています。
強化ダンプ
荷台の底板や側板が厚く、耐久性を高めた構造のダンプトラックです。特に砕石やコンクリート、金属スクラップなど、通常のダンプトラックではダメージを受けやすい資材の運搬に適しています。解体現場などでよく使用されています。
サイズによるダンプの種類
サイズ(最大積載量)で分けると、ダンプトラックには以下のような種類があります。
- 小型ダンプ
- 中型ダンプ
- 大型ダンプ
- 超大型ダンプ
これら4種類のダンプトラックについて、順番に詳しく解説します。
小型ダンプ(2t前後)
比較的小さな車体で、小規模な工事や住宅地の作業に向いています。狭い道路でも取り回しやすく、一部の車両は普通免許で運転できるのも特徴です。主に個人事業者や外構工事業者などが多く使用しています。
中型ダンプ(4t前後)
建設現場のスタンダードとも言えるサイズで、ある程度の積載量を確保しつつ、小回りも利くバランスの良いタイプです。運転には中型免許が必要となるのが基本で、舗装工事や一般土木工事など多岐にわたる用途に対応します。
大型ダンプ(10t〜)
最大積載量が大きく、1回の輸送で多くの資材を運べる効率的な車両です。他の重機との連携も取りやすく、大規模な造成工事やインフラ整備工事で多用されます。車体が大きいため、運転には大型免許が必要となるのが基本です。
超大型ダンプ
重ダンプトラックが該当する分類で、主に鉱山や採石場で活躍します。構内専用のため、一般道路では運転できませんが、現場内での大量運搬においては他の追随を許さない圧倒的な効率性を誇ります。
走行環境による分類
走行環境を基準にすると、ダンプトラックは以下のような種類に分けられます。
- オンロードダンプ
- オフロードダンプ
- クローラーダンプ
これら3つの種類について、順番に詳しく解説します。
オンロードダンプ(普通ダンプトラック)
用途分類の章でも紹介したとおり、オンロードダンプはナンバープレートがついており、公道を走行できるのが大きな特徴です。
走行環境という視点では、資材置き場から建設現場までの運搬を担うなど、一般道を活用した移動が求められる現場に適しています。小型から大型まで多様なサイズ展開があり、現場規模や用途に応じて最適な選択が可能です。
免許区分 | 条件 | 主な対象車両 |
---|---|---|
普通免許 | 車両総重量:3.5t未満 最大積載量:2t未満 乗車定員:11人未満 |
小型ダンプ |
準中型免許 | 車両総重量:3.5t以上、7.5t未満 最大積載量:2t以上、4.5t未満 乗車定員:11人未満 |
小型ダンプ〜中型ダンプ |
中型免許 | 車両総重量:7.5t以上、11t未満 最大積載量:4.5t以上、6.5t未満 乗車定員:11人以上、30人未満 |
中型ダンプ |
大型免許 | 車両総重量:11t以上 最大積載量:6.5t以上 乗車定員:30人以上 |
中型ダンプ〜大型ダンプ |
なお、免許区分は法改正により今後も変動する可能性があるため、最新の道路交通法をご確認ください。
オフロードダンプ(重ダンプトラック)
先述の「用途による分類」でも触れたとおり、オフロードダンプは公道を走行できず、鉱山・採石場・造成地など限られた場所で使用される大型のダンプトラックです。巨大な積載量を誇るため、大量輸送が求められる現場では重宝されています。
クローラーダンプ(キャリアダンプ)
クローラーダンプは、タイヤの代わりにクローラー(履帯)で走行するダンプトラックで、不整地やぬかるみ、傾斜地などにおける高い走破性が特徴です。
一般的なダンプトラックでは進入しにくい林業や災害現場、河川工事などで活躍しており、小型で機動力が高いため、足場の悪い現場には欠かせない存在です。
ただし、一般的なクローラーダンプは、クローラー構造の特性上、一般道路の走行に必要な保安基準を満たしていないため、公道を走行することはできません。
※ゴム製クローラーを装着した一部車両では、灯火類などを追加することで保安基準に適合し、公道走行が認められる場合があります。
クローラー構造の仕組み、ゴム製や鉄製などのクローラーの種類について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
重機のクローラーとは?移動を支える構造やキャタピラーとの違い
まとめ
一見すると似たように感じるダンプトラックですが、それぞれが特定の用途や現場環境、運搬する資材に合わせて設計されています。用途に合わないダンプトラックを選定してしまうと、作業効率の低下だけでなく、法令違反や事故のリスクが生じるおそれがあります。
ダンプトラックを用途や構造、サイズ、走行環境といった4つの視点から分類することで、それぞれの特性や適した使用シーンが明確になります。作業現場の規模や運ぶ資材の種類、走行ルートなどを確認した上で、ニーズに最も合った種類のダンプトラックを選び、安全性と作業効率の向上を目指しましょう。