深ダンプとは?種類や用途、土砂禁について解説
建設現場で大量の資材や廃材を効率よく運搬する手段として活用されているのが、深ダンプと呼ばれる重機です。深ダンプは、通常のダンプトラックよりも荷台の深さがあるため、一度に多くの軽量物やかさばる資材を運べる点に特徴があります。
特に、産業廃棄物やガレキ、断熱材といったかさばるものを運搬する際に真価を発揮します。
しかし、深ダンプには「土砂禁(どしゃきん)」と呼ばれる使用制限があるため、特定の積載物、特に土砂のような比重の高い物を運ぶことが法律で禁止されているケースがあります。そのため、何でも際限なしに積めるわけではなく、法律による制限を理解し、用途に合った使い方をする必要があります。
本記事では、深ダンプの特徴的な構造(荷台の深さや側板の形状)や種類、主な用途に加え、土砂禁の内容と注意点についてもわかりやすく解説します。
自社での深ダンプ導入を検討している建設業経営者の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
深ダンプとは?
深ダンプとは、荷台が通常よりも深く設計されたダンプトラックの一種で、主に軽くてかさばる荷物を効率的に大量輸送するために使用される車両です。荷台の側板が高く、容積が大きいため、通常のダンプトラックと比べて多くの体積物を積載できるのが大きな特徴です。
外観上も荷台の高さが際立っており、一目で積載容量の大きさがわかるのが特徴です。この構造により、土砂や砕石など重く密度の高い資材よりも、産業廃棄物やスクラップ、廃プラスチックなど、比較的軽量でかさばる資材の運搬に多く用いられています。
また、深ダンプのような深い荷台構造を持つ車両は、「土砂禁ダンプ」とも呼ばれています。これは荷台の形状から「土砂等運搬禁止車両」に指定されるケースが多く、法令上、土砂の運搬が制限されるためです。なお、土砂禁ダンプという呼び方は業界で使われる通称であり、正式な法的名称ではありません。
深ダンプが分類されるダンプトラックについて詳しく知りたい場合は、併せて以下の記事をご覧ください。
ダンプトラックとは?特徴・用途・必要な免許をわかりやすく解説
深ダンプの種類|構造と用途で分けて解説
深ダンプには、法律上の明確な分類基準は存在しません。ただし、現場では実務的な便宜上、構造や用途に応じていくつかのタイプに分類されることが多く、通称や慣習的な名称で呼ばれることがあります。
ここからは、構造面・用途面の2つの観点から、代表的な深ダンプの種類についてわかりやすく紹介します。
深ダンプの基本構造とは?
深ダンプの最大の特徴は、その名の通り荷台の「深さ」です。一般的なダンプトラックよりも荷台の側板が高く、上下方向に積載できる体積が増えるように設計されています。これにより、同じ積載重量でもより多くのかさばる資材を効率的に運べます。
また、荷台の構造には以下のような特徴があります。
- 側板の高さが通常よりも高い(例:100cm→150cm など)
- 荷台内部がフラットで、資材が溜まりにくい
- 飛散防止のため、上部にメッシュカバーを装着できる構造がある
構造から見た種類(正式な分類軸)
深ダンプは法的に明確な分類はないものの、構造に基づいて以下のようなタイプに分けられます。
種類 | 詳細 |
---|---|
単車タイプ (2軸・3軸) |
取り回しがしやすく、都市部や狭い現場でも運用しやすい小回りの利くタイプです。 |
トレーラータイプ (セミトレーラー) |
積載容量が非常に大きく、長距離かつ大量輸送に向いた構造です。主に産業廃棄物やリサイクル資材などの輸送に利用されます。 |
そのほか、荷台構造の違いによって、側板が高いものや、飛散防止のためにメッシュ付きのアオリやフタを備えたタイプもあります。
用途から見た種類(現場での通称)
用途に応じた呼び方として、現場では次のような通称も使われています。これらの呼称は車検証や法的な分類ではなく、あくまでも現場や業界内で用いられる通称です。地域や業者によって呼び方や用途に多少の違いが見られることもあります。
種類 | 詳細 |
---|---|
ファームダンプ | もみ殻、肥料、飼料などのかさばる農業用バラ物資材の輸送に特化しています。荷台が深く、軽量物を一度に大量に運べるのが特徴です。 |
チップダンプ | 木質チップやバイオマス燃料といった、軽量で体積の大きい資材を輸送するための深ダンプです。製材業者や再生可能エネルギー分野で多く利用されています。 |
清掃ダンプ | 浄化槽の汚泥や下水の清掃作業に用いられる車両です。一部には深アオリ構造の荷台を備えたものもあるため、外見上は深ダンプに近い形状をしていることがあります。ただし、吸引装置などの専用機構を持ち、積載方法や構造上の目的が大きく異なるため、厳密には深ダンプとは別のカテゴリとされています。 |
このように「深ダンプの種類」といっても、構造に基づく正式な分類と、用途に応じた実務的な呼称が混在しています。利用者の目的や検索意図によって求める情報が異なるため、両方の観点から整理して理解することが重要です。
以下の記事では、深ダンプを含めたダンプの種類を網羅的に紹介しています。自社で導入するダンプの選定にお役立てください。
土砂禁とは?なぜ規制されているのか
土砂禁とは、「土砂等運搬禁止車両」の略称で、特定の車両による土砂などの運搬を禁止・制限する法的ルールのことです。土砂禁の対象となるのは、深ダンプなど荷台が深く、積載物の確認がしづらい構造を持つ車両です。
こうした車両は現場で「土砂禁ダンプ」とも呼ばれますが、この名称はあくまでも通称であり、法的な正式名称ではありません。
なぜ規制されているのか?
深ダンプが土砂禁として、土砂などの運搬を禁止・制限されている理由は、主に以下のとおりです。
土砂の飛散や流出による道路環境への悪影響
雨水などで濡れた土砂が道路に流れ出すと、路面が滑りやすくなり、事故の原因となります。また、落下物による道路の汚損や清掃負担も問題視されています。
容積の大きさによる過積載リスク
深ダンプは荷台容積が大きいため、積載量の管理を誤ると、法定の最大積載量を超えてしまうリスクがあります。過積載を防ぐには、自車の最大積載量を正しく把握しておくことが重要です。とはいえ、「最大積載量」が具体的に何を指すのか、車両総重量との違いが分かりづらいという方も多いのではないでしょうか。詳しくは、以下の記事で分かりやすく解説しています。
構造的に土砂運搬に適していない
もともと深ダンプは、廃プラスチックや木くずなどの軽量でかさばる資材の輸送を目的に設計されています。重量があるうえに、細かく崩れやすい土砂は、深い荷台構造では安定的に運びにくいとされます。
不法投棄・不適正処理の防止対策として
荷台が深く、中身が見えにくい車両は積載物の確認が難しいため、行政としては不正な廃棄や処理を防止する観点から、土砂の運搬を厳しく監視しています。
このような背景から、深ダンプによる土砂の運搬は原則として禁止されています。もし違反した場合には、通称「ダンプ規制法」(正式名称:土砂等を運搬する大型自動車による交通事故の防止等に関する特別措置法)に基づき、事業者に対して車両の構造を改め、土砂運搬に適した形へと整備するよう命令が出されることがあります。
整備命令に従わなかった場合は、ダンプ規制法違反として3万円以下の罰金が科せられます。ここで注意すべきなのは、罰金は「反則金」と異なり、刑事処分として前科がつく重い処分となる点です。
金額や罰則の問題だけでなく、誤った運搬は重大な交通事故を引き起こすおそれもあります。深ダンプの構造や用途を正しく理解し、法令を守った安全な運用を徹底することが何より大切です。決して自己判断での使用は行わないようにしましょう。
参考:e-Gov 法令検索「土砂等を運搬する大型自動車による交通事故の防止等に関する特別措置法」
深ダンプの土砂禁該当確認方法
深ダンプは構造上、「土砂等運搬禁止車両」に指定されることが比較的多く見られますが、すべての車両が該当するわけではありません。実際には、車両の構造や登録内容によって判断されるため、運用前に車検証の備考欄で確認することが重要です。
車検証の備考欄に「土砂等運搬禁止車両」と記載がある場合、その車両で土砂を運搬することは法律で禁止されています。
車両の外観だけでは判断が難しい場合があるため、運転者や車両管理者は必ず事前に車検証の記載内容を確認しておきましょう。誤って使用した場合、法令違反となる可能性がありますので、十分な注意が必要です。
深ダンプで運べる物と注意点
基本的に深ダンプは土砂の運搬はできませんが、特定の軽量・大容量資材の輸送において非常に効率的です。以下では、深ダンプに適した代表的な積載物と、運搬時の注意点について解説します。
運べる荷物の例(用途一覧)
運搬に適した代表的な資材は、以下のとおりです。
- 金属スクラップ(鉄くず、非鉄金属など)
- 木くず(伐採材、木造建築の解体材 など)
- 廃プラスチック、発泡スチロール、梱包材
- 建設系廃材(例:廃石膏ボード)
- 廃家電、OA機器、雑品類
- バイオマス燃料(木質チップなど)
これらに共通するのは、「軽量でかさばる」点です。そのため、重量制限よりも積載容積の効率が重視される現場で、深ダンプが力を発揮します。
積載時の注意点
見た目が土砂に類似したもの(例:砕石を含む混合廃材など)は、「土砂等運搬禁止車両」による運搬と誤認される可能性があります。運搬前に積載物の性状を確認しましょう。
荷崩れ防止対策も必須です。積載物が飛散しないよう、上部ネットやフタ、ロープによる固定など適切な措置を行ってください。
また、産業廃棄物処理法や地方自治体の条例により、特定の廃材には届け出やマニフェストの携帯が必要になる場合があります。さらに、荷姿によっては過積載と誤解されることもあるため、たとえ積載重量が基準内であっても、荷台に大量に積まれているように見えると、外見上、過積載と誤認されるリスクがあります。そのため、運搬証明書や積載内容を明記した書類の携帯が望ましいです。
深ダンプを扱う際のポイント
ここまでの説明を踏まえて、深ダンプを運用する際は、以下の点に注意しましょう。これらの点に留意することで、トラブルを未然に防ぎ、安全で適正な運搬が可能になります。
- 土砂禁の地域では、運搬物の内容を明確にしておく
- 荷崩れ防止や飛散対策を徹底する(例:メッシュカバー、ロープによる固定)
- 自治体の規制や収集運搬許可の対象になる可能性がある場合は、事前に確認する
- 容積が大きい分、過積載になりやすいため、積載量の管理を怠らないようにする
まとめ
深ダンプは、軽量でかさばる荷物を効率よく運ぶために設計された特殊な構造を持ち、廃棄物処理やリサイクル資材の輸送に非常に適した車両です。
一方、土砂禁などの法的規制に加えて、積載物の種類や荷姿、過積載防止といった具体的な管理上の注意点も多くあります。そのため、正しい知識と意識を持って運用することが不可欠です。