締固め機械とは?種類や資格、技術を解説
締固め機械は、道路工事や土木工事、建築工事などで地面を固めるために欠かせない重機です。土木・建築工事などの現場では、締固め作業の精度が完成度や耐久性を大きく左右します。そのため、適切な重機の選定と運用が工事の成功に直結すると言っても過言ではありません。
しかし、締固め機械には様々な種類があり、それぞれ特徴や用途が異なります。さらに、操作には専用の免許や資格が必要とされるため、建設業の事業者や作業者として正しい知識を持っておくことが重要です。
本記事では、締固め機械の基本的な役割や種類についてわかりやすく解説します。また、操作に必要な資格や最新技術などについても触れ、現場での効率的な運用に役立つ情報をまとめました。
目次
締固め機械とは?
締固め機械とは、道路工事や土木工事、建築工事などで地面を固めるために使用される重機のことです。用途や機能に応じて、次の4つのタイプに分類されます。
- 静荷重(重力)を利用するタイプ
- こね返しを利用するタイプ
- 振動(ゆすり)を利用するタイプ
- 衝撃を利用するタイプ
締固め機械は一つの種類が単体で使用されるだけでなく、現場の状況に応じて複数種類の重機を組み合わせることもあります。道路工事のほか、空港の滑走路、埋立地、港湾施設、鉄道工事、コンクリートダムの建設現場など、大規模な工事現場でも活躍します。その一方、狭い場所や構造物の周辺など、小規模な現場で使用する小型の締固め機械もあります。
締固め作業が機械化される前は、人力や馬の力を使って地面を固めるのが一般的でした。当時は、木製のローラー(コートローラ)を人や馬でけん引し、地面を何度も往復して圧縮する方法が主流でした。この方法は簡易的なものでしたが、地面を一定程度平らにする効果がありました。
日本では、1919年から1922年にかけて国道1号線の造成工事が行われ、この際に4.5~12tのスチームローラーやガソリンローラーが大量に輸入されました。この輸入機械による作業が、締固め作業の効率化を進めるきっかけとなりました。
その後、輸入機械に依存していた状況を改善するため、国内での機械製造への期待が高まりました。その流れの中で、輸入ローラーの修理を行っていた酒井工業所(現:酒井重工業)が、1929年に内燃機関を搭載したタンデムローラーの製造を開始しました。これが日本における締固め機械の国産化を大きく進める第一歩となりました。
現在、酒井重工業や日立建機をはじめ多くのメーカーが様々な用途に対応した締固め機械を開発していますが、主な共通点として機械の重量化により高い締固め力を実現し、道路や構造物の品質向上と長寿命化を可能にしていることが挙げられます。
また、機動性が大幅に向上したことで、施工効率が飛躍的にアップし、作業に必要な人員を減らす省力化も進んでいます。
機械の質量を超える締固め力を発揮する振動や衝撃を活用した仕組みも、締固め機械の特徴の一つです。これにより、従来よりも強力で効率的な締固め作業を実現しています。
参考:一般社団法人 日本建設機械工業会「建設機械産業を知る|締固機械」
締固め機械の種類
締固め機械を原理的に分類すれば、以下の3種に分けられます。
種類 | 該当例 |
---|---|
静的荷重(輪荷重、自重) | ロードローラー、タイヤローラー、マカダムローラー、タンデムローラー、コンバインドローラー |
動的荷重(振動) | 振動ローラー、プレートコンパクター、ハンドガイドローラー |
衝撃的荷重(突く・たたく) | タンピングローラー、ランマー、タンパ |
また、機械の形態でも、締固め機械は以下のように分類されます。
- ローラー式
- ロードローラー
- マカダムローラー
- タンデムローラー
- タイヤローラー
- タンピングローラー
- 振動ローラー
- コンバインドローラー
- ハンドガイドローラー
- ロードローラー
- 平板式
- プレートコンパクター
- ランマー
- タンパ
ここからは、締固め機械の代表的な種類について、それぞれの概要や特徴を順番に解説します。
ロードローラー
ロードローラーとは、ローラー式の締固め機械として主流の種類です。
広義に捉えた場合、以下のような種類の締固め機械もロードローラーに含まれますが、ここでは便宜上「鉄輪が採用されているローラー式の締固め機械」と狭義に捉えて解説します。
- タイヤローラー
- マカダムローラー
- タンデムローラー
- コンバインドローラー
- 振動ローラー
- ハンドガイドローラー
ロードローラーは、一定の圧力で力強く均一に地面を押し固めるのが特徴です。耐久性が求められるために深層土壌までの圧縮が必要な場所(例:基礎工事の圧縮、厚い土層の締固め)で使用されることが多いです。
ロードローラーについて詳しく知りたい場合は、以下の記事をご覧ください。
タイヤローラー
タイヤローラーとは、空気入りのゴム製タイヤを複数装着した構造を持つ締固め機械の一種です。日本では前方に3つ、後方に4つのタイヤを装着しているタイプが多く流通しています。
ゴム製タイヤは鉄輪よりも衝撃吸収力に優れており、道路面を滑らかに仕上げられます。タイヤの空気圧を調整することで接地圧を変えられるほか、鉄輪のロードローラーに比べて走行スピードが速く、機動性が高いのも特徴です。
タイヤローラーの詳細は、以下の記事で解説しています。
タイヤローラーとは?特徴、ロードローラーとの違い、免許・資格を解説
マカダムローラー
マカダムローラーは、鉄製のローラーを3輪(前に2輪・後ろに1輪、またはその逆)備えた締固め機械の一種です。
マカダムローラーの大きな特徴は、締固め性能の高さにあります。鉄製の3輪ローラーと重量のある車体により地面をしっかりと圧縮するため、建設現場や道路工事などで舗装面を均一に仕上げるために活用されています。
マカダムローラーについて理解を深めたい場合は、以下の記事をお読みいただくことをおすすめします。
マカダムローラーとは?特徴やタンデムローラーとの違い、機種紹介
タンデムローラー
タンデムローラーは、車体の前後に鉄輪が1つずつ付いている締固め機械の一種です。
前後に配置された2つの鉄輪によって、1度の走行で路面を均一に圧縮できるため、凹凸の少ない滑らかな仕上がりが得られます。そのため、特にアスファルト舗装の表層をならし、仕上げる作業に適しています。
タンデムローラーについて詳しく知りたい場合は、以下の記事をご覧ください。
タンデムローラーとは?特徴、用途、マカダムローラーとの違いと機種紹介
コンバインドローラー
コンバインドローラーは、前方に鉄輪、後方にゴムタイヤを備えた締固め機械の一種です。
鉄製ローラーとゴムタイヤ双方の特徴を生かした締固めが可能で、アスファルトやコンクリートなど、多様な表面の転圧作業に対応できます。主に道路工事において、初期から仕上げの締固めまで幅広く活用されています。
コンバインドローラーの詳細は、以下の記事で解説しています。
振動ローラー
振動ローラーは、車輪の内部に起振機を搭載し、その振動力と自重を利用して地面を転圧する締固め機械の一種です。
振動の力によって高い締固め効果を発揮するため、道路の盛土やフィルダム(コンクリートを使わずに土砂や岩石を積み上げて築くダム)、空港の滑走路、宅地造成など、大規模な土木工事からインフラ整備まで幅広く活用されています。
振動ローラーについて理解を深めたい場合は、以下の記事をお読みいただくことをおすすめします。
プレートコンパクター
プレートコンパクターは、小型の締固め機械の一種です。平板上に搭載された起振機によって振動を発生させ、締固めと自走を同時に行います。
数ある締固め機械の中でも表層の締固め作業に向いており、路床の砂や砂利、アスファルトの締固めおよびパッチング作業などで使われます。例えば、道路工事でアスファルトを敷く前の土の締固めや、アスファルトを敷いた後の表面仕上げなどで使用されるケースが多いです。
ハンドガイドローラー
ハンドガイドローラーは、手で押して操作するタイプの小型締固め機械です。優れた締固め能力により、アスファルトはもちろん、砂や柔らかい地盤の転圧にも対応できます。
コンパクトで機動性が高いため、車両が入れない狭いエリアでも作業が可能です。この特性から、歩道などのアスファルト舗装作業に特に適しています。
タンピングローラー
タンピングローラーは、外側に多数の突起(タンパフート)がついたローラーが回転し、その突起が地面に突き刺さることで転圧を行う締固め機械です。突起が地表面に食い込む際、先端に大きな圧力が集中し、土をしっかりと突き固める効果を発揮します。
突起が連続して土の中に貫入することで、土が攪拌(かくはん※1)され、間隙(まげき)水圧(※2)が適切に低減されます。そのため、タンピングローラーは、フィルダムの遮水層や、含水比が高い粘性土を含む軟弱な路床の締固めに特に適しています。
※1:かきまわすこと。かきまぜること。
※2:土壌や岩石の粒子間の隙間にある地下水の圧力のこと。
参考:一般社団法人 日本機械学会「機械工学辞典|タンピングローラ」
ランマー
ランマーは、ラマー(rammer:突き固める)という英語を語源とする小型の締固め機械です。ラム、ランマ、タンピングランマーなどとも呼ばれています。
装置の自重と衝撃板の上下運動による衝撃で、地面を突いて締め固めます。駆動源はエンジン式が主流ですが、電動式のランマーも使われています。
空気圧を使った「サンドランマー」と呼ばれるタイプは、一般のランマーよりも転圧力が小さく、鋳物砂型の締め固めなどに使われています。
タンパ
タンパは、エンジンの回転運動をクランク機構で上下の往復運動に変換し、その動きをスプリングを通じて打撃板に伝えることで地面を転圧する締固め機械です。打撃板が地面に衝撃を与えることで、地面をしっかりと締め固めます。
往復運動により機械本体が前上方に跳ね上がり、地面に衝突する際に強い打撃を与えながら前進します。この動作により、作業を効率的に進めることが可能です。
タンパは、特に狭い場所での締固め作業に適しており、管路の埋め戻し工事や構造物周辺の裏込め施工、道路の部分補修などで活躍しています。
締固め機械の資格
締固め機械を操作する際、以下いずれかの資格が必要とされます。
- 締固め用建設機械(ローラー)の運転に係る特別教育
- 振動工具取扱作業者安全衛生教育
それぞれの資格について順番に詳しく解説しますので、締固め機械の導入前に確認しておきましょう。
締固め用建設機械(ローラー)の運転に係る特別教育
締固め用建設機械(ローラー)の運転に係る特別教育(以下、ローラー特別教育)は、ローラー式の締固め用機械を安全に操作するために義務付けられている特別教育です。この教育は、重量のある機械を取り扱うことで発生しうる事故や災害を未然に防ぐためのもので、特に大規模な工事現場や狭いエリアでの作業時に必要とされます。
対象となる締固め用機械のサイズには制限がなく、タイヤローラーやマカダムローラーなど乗り込んで運転するタイプの締固め用機械だけでなく、手で押して操作するハンドガイドローラーも対象となります。そのため、いかなる種類であっても、ローラー式の締固め用機械を操作する場合には受講が必要です。
ローラー特別教育の講習は、学科教育と実技教育の2つに分かれています。下表に、それぞれの講習科目と時間をまとめました。
区分 | 受講科目 | 受講時間 |
---|---|---|
学科 | ローラーに関する知識 | 4時間 |
運転に必要な一般的事項に関する知識 | 1時間 | |
関係法令 | 1時間 | |
実技 | ローラーの運転方法 | 4時間 |
合計 | 10時間 |
なお、ローラー式の締固め用機械を取り扱う際、併せて自動車運転免許の取得もおすすめします。自動車運転免許は、ローラー式の締固め用機械を公道で走行させるために必要な免許です。ローラー式の締固め用機械のサイズに応じて「大型特殊自動車免許」もしくは「小型特殊自動車免許」の取得が必要です(ハンドガイドローラーは公道を走行できないため、自動車運転免許の取得は不要)。
ローラー特別教育の受講を検討している場合は、以下の記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
ローラーの運転の業務に係る特別教育とは?内容、受講方法、費用
振動工具取扱作業者安全衛生教育
振動工具取扱作業者安全衛生教育は、振動工具を業務上使用するすべての作業員に受講が推奨されている安全衛生教育です。
ここでいう振動工具には、プレートコンパクターやランマー、タンパなど、自走しない締固め機械が含まれます。安全衛生教育とは特別教育に準ずる講習であり、受講義務こそないものの、受講が推奨されているものです。
安全教育を受講せずに知識がないまま振動工具を使用すると、健康被害や周囲・自分の怪我などにつながるおそれがあります。被害を避けるためにも、事業者は積極的に受講させるべき講習といえるでしょう。
振動工具取扱作業者安全衛生教育の講習は、学科のみです。受講科目と受講時間を以下にまとめました。
受講科目 | 受講時間 |
---|---|
振動工具に関する知識 | 1.0時間 |
振動障害及びその予防に関する知識 | 2.5時間 |
関係法令等 | 0.5時間 |
合計 | 4時間 |
上表に示したものは、最低限受講すべき時間として定められているものです。必要であれば上記以上の時間を受講し、講義内容をしっかりと理解することが求められています。
参考:キャタピラー教習所「第17回 締固め(ローラー)の資格について」
一般財団法人 中小建設業特別教育協会「振動工具取扱作業者安全衛生教育 講習会のご案内」
締固め機械の最新技術と未来展望
昨今、締固め機械による作業効率化や安全性向上などを目的に、ICTやEV、自動運転、遠隔操作など様々な最新技術が開発・導入されています。
締固め機械に活用できるICTの一例を挙げると、振動ローラに加速度計やGPSを搭載することで、盛土の密度や飽和度をリアルタイムにモニタリングできる技術が開発されています。
この技術により、施工中の土の品質を面的に把握でき、施工ロスの削減や盛土の高品質化が実現します。操縦席に設置されたモニターで、オペレーターが締固め作業の進行状況や品質を確認できるため、効率的で確実な施工が可能です。
また、バッテリーとモーターを使用する電動モデルが登場するなど、締固め機械のEV化も進んでいます。電動化により騒音が大幅に抑えられるため、住宅地や深夜の道路工事でも周囲への影響を軽減できます。加えて、排気ガスを出さないため、カーボンニュートラル推進に貢献するだけでなく、トンネル内のような閉鎖空間での作業でも安全性が向上します。一酸化炭素中毒などのリスクを防ぎつつ、環境への負担も減らすことが可能です。
締固め機械には、自動運転や遠隔操作の技術も導入の導入が進んでます。例えば、遠隔操作技術を活用することで、作業員が離れた場所から機械を操作できるようになり、危険な環境での作業を安全に行うことが可能です。また、自動運転技術により、機械が指定されたエリアを効率的に走行し、均一に地面を締め固めることができます。これらの技術により、オペレーターの技量に左右されることなく、高い品質で安定した施工が実現できるようになっています。
なお、私たちARAVでは、ロードローラー向け遠隔自律装置を開発しています。これまでに酒井重工業や日立建機、CAT、関東鉄工、BIMAGなど様々な重機メーカーのロードローラー向けに遠隔自律装置を提供しています。
ARAVの遠隔自律装置に関する詳細は、以下のリンクをご確認ください。
まとめ
締固め機械は、道路工事や土木工事、建築工事などで地面を固めるために欠かせない重機です。
建設業者の方にとって、締固め機械の正しい選定は効率的な現場運営のカギとなります。 適切な機械を使用することで、工事の品質を高めるだけでなく、コスト削減や作業効率の向上にもつながります。また、法令や安全基準に従った資格の取得や操作方法の理解も、安心で信頼できる施工を実現する上で欠かせません。
本記事を通じて、締固め機械の活用に関する知識を深めることで、より効率的で信頼性の高い現場運営を目指しましょう。