重機・建機の種類 2024.09.30

バックホウとは?特徴やショベルカーとの違い、資格を解説

小型車両系建設機械(整地等)運転特別教育バックホウは、建設現場や土木工事で広く使用される重機の一種で、その高い掘削能力と多用途性から、様々な作業に欠かせない存在です。しかし、バックホウとは具体的にどのような機械なのか、ショベルカーとの違いは何か、また操作するためにはどのような資格・免許が必要なのか、詳しく知らない方も多いでしょう。

そこで本記事では、バックホウの基本的な特徴やショベルカーとの違い、操作に必要な資格についてわかりやすく解説します。特に初めてバックホウについて学ぶ方や、これから操作を考えている方にとって有益な情報を提供していますので、ぜひ参考にしてください。

バックホウとは?

バックホウの全貌

バックホウ(英語: Backhoe)とは、油圧ショベルの中でも、ショベル(バケット)をオペレータ側向きに取り付けたものを指します。建設機械(重機)の一種です。

バックホウの場合、バケットが運転席側に向いており、ショベルを手前に引き寄せます。そのため、地面側にパワーが伝わりやすく、地表面よりも下の位置を掘削する際に効果的です。

なお、バックホウは「バックホー」と表記されることもあるほか、日本の行政用語(労働安全衛生法)では「ドラグショベル」とも呼ばれています。日本語のバックホウの語源は英語のbackhoeに由来しますが、英語ではそのほかに「Rear actor」や「Back actor」などと称されることもあります。

バックホウは、油圧ショベルの中で最も一般的な種類です。油圧ショベルはバケット部分の付け替え(アタッチメント)によって様々な用途に使われていますが、そのうちバックホウはバケットをオペレータ側向きに取り付けたタイプを指します。

これに対して、バケットをオペレータから遠ざけ押し上げる向きで取り付けたタイプは「ローディングショベル」と呼ばれています。

ローディングショベルについてさらに理解を深めたい場合は、以下の記事に詳しくまとめていますので、併せてご覧ください。

ローディングショベルとは?特徴やバックホウとの違いを解説

バックホウとショベルカーの違い

ショベルカーは、油圧ショベルの世間一般的な呼称です。建設業界にとどまらず一般的に呼ばれている名称であり、テレビや新聞といったマスコミ・メディアでも広く使用されているため、一般的に浸透しています。

前述のとおり、バックホウは油圧ショベルの一種であることから、「バックホウはショベルカーの一種」という関係性にあります。

ショベルカー、ユンボ、パワーショベルなどとの違い

油圧ショベルには、ショベルカーのほかに、ユンボ、パワーショベルなどの呼び方もあります。一つの重機に複数の呼び方があるのは、利用されるシーンや使われるようになった背景が異なるためです。

下表に、バックホウとショベルカー、ユンボ、パワーショベルなどとの主な違いをまとめました。

呼び方 特徴(他の呼び方との違い)
油圧ショベル 建設・土木業界における一般的な呼び方
バックホウ 油圧ショベルのうちバケットをオペレータ側向きに取り付けたもの
ショベルカー 油圧ショベルの世間一般的な呼称で、マスコミ・メディアも使用する呼び方
ユンボ もともと「新三菱重工(現・キャタピラージャパン)」という会社の商品名であり、現在は「株式会社レンタルのニッケン」の登録商標
パワーショベル 重機メーカー「株式会社 小松製作所」の商品名

バックホウやショベルカー、ユンボ、パワーショベルが分類される「油圧ショベル」について詳しく知りたい場合は、以下の記事で解説していますので、併せてご覧ください。

油圧ショベルとは?特徴や種類、アタッチメント、免許を解説

バックホウとバックホーどっち?

現状、「バックホウ」と「バックホー」は、どちらも使用されている呼び方です。同じ意味を表す言葉であるものの、さまざまな表記が混在している「表記ゆれ」の状態が起きていますので、結論としてはどちらの呼び方を使用しても問題ありません。

参考情報として、それぞれの呼び方の概要・特徴を以下にまとめました。

呼び方 概要・特徴
バックホウ 日本語表記の一つ。カタカナでの表記が日本国内で一般的に使用されている。
バックホー 英語の「Backhoe」をそのままカタカナにした表記。技術文書やメーカーのカタログなどで使用されていることがある。

backhoeとexcavator

海外では、バックホウ(Backhoe)をエクスカベーター(Excavator)と呼ぶのが一般的です。

「Excavate」は、「穴を掘る」「発掘する」という意味の英語です。また、「Backhoe」の
「Back」は後ろ、「Hoe」は鍬(くわ)を意味します。

英語表記における「Backhoe」と「Excavator」についても、「バケットをオペレータ側向きに取り付けた油圧ショベルを指す言葉」という点では共通しています。しかし、厳密に言うと、いくつかの違いが見られます。

海外において「Backhoe」は、後部に掘削用のバケット、前面に集積用のバケットを備えた重機を指す傾向があります。掘削・積み込み・土砂の運搬をはじめ、さまざまな作業に適しており、汎用性の高さが特徴的です。

一方の「Excavators」は、長いアームに掘削バケットを取り付けた重機を指す傾向があります。「Backhoe」に比べてサイズが大きく、長いリーチを持つのが特徴であり、主に大規模な掘削や解体に用いられています。

バックホウの運転に必要な資格・免許

バックホウを運転する男性

バックホウの運転には、「車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)」と呼ばれる資格を取得する必要があります。詳しく説明すると、運転するバックホウの車両重量が3t以上か3t未満かによって、必要な資格が下表のように異なります。

バックホウの車両重量 運転に必要な資格
3t以上 車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)(整地等)運転技能講習
3t未満 小型車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転特別教育

「車両系建設機械(整地等)運転技能講習」の基本情報は以下のとおりです。

資格の情報 内容
費用 50,000円〜110,000円前後
日数 14時間〜38時間(2日〜6日間)前後
受講資格 18歳以上
申込先 都道府県労働局長登録教習機関

続いて、「小型車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転特別教育」の基本情報をまとめました。

資格の情報 内容
費用 20,000円前後
日数 13時間(2日間)前後
受講資格 18歳以上
申込先 社内、社外の教習機関(都道府県労働局長登録教習機関など)

また、バックホウのうちホイール式のものは公道を走行できますが、そのためには道路交通法にもとづく「大型特殊自動車免許」もしくは「小型特殊自動車免許」の取得が欠かせません。

大型特殊自動車免許は、大型特殊自動車を公道で走行させるために必要な免許です。道路交通法上、大型特殊自動車の基準は、「小型特殊自動車の規格をこえるもの」とされています。

一方の小型特殊自動車免許は、小型特殊自動車を公道で走行させるために必要な免許です。以下に、小型特殊自動車の規格をまとめました。

全長 4.7m以下
全幅 1.7m以下
全高 2.0m以下(ヘッドガード等を備えた自動車で、ヘッドガード等を除いた部分の高さが2.0m以下のものについては2.8m以下)
最高速度 時速15km以下

すでに普通免許や普通二輪免許を所持しているケースでは、小型特殊自動車免許は下位免許にあたりますので、新たに取得することなく小型特殊自動車を運転できます。

ただし、大型特殊自動車免許や小型特殊自動車免許のみでは、普通自動車の運転は不可能です。普通自動車を運転するためには、普通免許、準中型免許、中型免許、大型免許のいずれかの取得が求められる点にご注意ください。

バックホウをはじめ、建設機械・重機の運転に必要な免許・資格について理解を深めたい場合は、以下の記事で詳しく解説していますので、併せてお読みください。

建設機械・重機の免許・資格一覧!費用や日数、受験資格

参考:警視庁「小型特殊免許試験」
国土交通省「自動車の種類」

バックホウの機種

本章では、バックホウの機種の一例として以下の6つをご紹介します。

  • 日立建機「ZX75US-7」
  • キャタピラー「320」
  • コマツ「PC200-11」
  • コベルコ「SK200」
  • ヤンマー「ViO20-6」
  • 住友建機「SH200-7」

それぞれの機種における商品情報や特徴を順番に解説します。

なお、バックホウにはさまざまな機種があり、ここで取り上げていない機種も数多く存在します。ご自身の用途に合わせて、適したバックホウを選ぶことが大切です。

日立建機「ZX75US-7」

生産機械としての基本性能を重視しながら、新キャブによる快適性の向上や大型モニタ採用と、AERIAL ANGLE®カメラシステムによる機体周囲の映像表示により、安全性の向上が図られています。

以下に、日立建機「ZX75US-7」のその他の主な特徴をまとめました。

  • クリーンな排出ガスと作業量アップによる環境への配慮と生産性の両立
  • 点検ポイントへの容易なアクセスや、清掃のしやすさによる使い勝手に優れたメンテナンスの実現
商品名称(型式) ZX75US-7
標準バケット容量 0.13〜0.33㎥
エンジン定格出力 42.4kW(57.6PS)
運転質量 8,280kg
全長 6,270mm(輸送時)
全幅 2,320mm(輸送時)
全高 2,650mm(輸送時)

参考:日立建機株式会社「ZX75US-7」
日立建機株式会社「後方超小旋回型油圧ショベルZX75US-7の販売を開始」

キャタピラー「320」

CAT(キャタピラー社)が手がけている中型のバックホウで、クラス最高レベルの効率性と低燃費の実現が図られています。

業界最高レベルのテクノロジーが標準装備されており、オペレータの快適性と燃費の向上、メンテナンスコストの削減を重視した構造のキャブを備えています。生産性向上やコスト低減に貢献してくれるでしょう。

以下に、キャタピラー「320」の主な特徴をまとめました。

  • 低いエンジン回転数と大型油圧ポンプの最適な組み合わせによる、最大25%燃料消費量の低減
  • メンテナンス間隔の延長や同時メンテナンスの促進による、最大20%メンテナンスコストの削減
  • 最大25%のCO2排出量の減少
商品名称(型式) 320
標準バケット容量 0.8㎥
エンジン定格出力 129.4kW
運転質量 20,700 kg
全長 9,520mm(輸送時)
全幅 2,800mm(輸送時)
全高 2,960mm(輸送時)- キャブ最上部まで

参考:Caterpillar Inc「中型油圧ショベル320」

コマツ「PC200-11」

「PC200-11」はコマツによるバックホウで、環境性能を向上させたモデルです。建設機械用排出ガス後処理システムの採用により、窒素酸化物(NOx)と粒子状物質(PM)の排出量を大幅に低減し、特定特殊自動車排出ガス2014年基準をクリアしています。

また、進化したトータルビークルコントロール(機体総合制御)で燃料消費量を従来機に比べて6%低減させました。さらに、任意に設定したアイドリング時間(5~60分)で自動的にエンジンを停止できるオートアイドルストップを標準装備し、余分な燃料消費を抑制させています。

以下に、コマツ「PC200-11」のその他の主な特徴をまとめました。

  • 新デザインで見やすく使いやすい「高精細 7インチ液晶ディスプレイ(LCD)モニタ」
  • KomVision(人検知衝突軽減システム)標準搭載
  • 転落や落下物からオペレータを保護する「ROPSキャブ」
  • 誤操作や誤作動を未然に防止する「ロックレバー自動ロック機能」
  • 機械の盗難リスクを軽減する「IDキー」
  • 低照度環境下での視認性が向上「LEDライト標準装備」
商品名称(型式) PC200-11
標準バケット容量 0.80㎥
エンジン定格出力 123kW(167PS)
運転質量 19,800kg
全長 9,505mm
全幅 2,805mm
全高 3,135mm

参考:株式会社 小松製作所「PC200(LC)-11」

コベルコ「SK200」

「SK200」はコベルコ建機が開発・製造するバックホウです。優れた低燃費性で「2020年燃費基準値達成度★★★」を実現しながら、さらに高い生産性を発揮しています。

油圧の流れを効率的に制御する新ブーム・アーム回生や圧損抵抗の削減により、従来機の約12%(SK200-9型機 Hモード比)の燃費低減を実現しています。

また、環境性能に定評あるエンジンにSCR(Selective Catalytic Reduction)システムを新設定し、NOxの排出を低減したことで、オフロード法2014年基準値をクリアしています。

以下に、コベルコ「SK200」のその他の主な特徴をまとめました。

  • 高効率油圧システムによるパワフルな掘削と走行の実現
  • 鮮やかな発色とグラフィカルな表示で認識しやすい液晶カラーマルチディスプレイをコンソールに搭載
  • アタッチメント交換に伴う油圧回路や流量の切り替えが容易な「アタッチメントモード切替スイッチ」の搭載
商品名称(型式) SK200-10
標準バケット容量 0.80㎥
エンジン定格出力 110kW(150 PS)
運転質量 20,500kg
全長 9,600mm
全幅 2,800mm
全高 3,010mm

参考:コベルコ建機株式会社「通常型ショベル SK200[SK210LC]」

ヤンマー「ViO20-6」

「ViO20-6」は、ヤンマー建機が手がける2tクラスの後方超小旋回ミニバックホウです。
同シリーズの特徴であるコンパクトなボディはそのままに、燃費性能を改善したことに加え、安全性・メンテナンス性が向上しています。

また、1,990kg(ゴムクローラ、2柱キャノピー仕様)と軽量な機械質量と全幅1,380mmのコンパクトな設計により、トラックでの運搬がよりスムーズに行えることに加え、狭小な現場において効率的な作業が実現可能となりました。

以下に、ヤンマー「ViO20-6」の主な特徴をまとめました。

  • エンジン回転を効率よく制御するエコモード機能と、操作レバーを中立にすると自動的にエンジン回転を落とすオートデセル機能の標準装備
  • 稼働状況や異常情報など必要な情報を確認できるLEDバックライト付大型液晶モニターを設置
  • GPSや通信端末を活用し、機械の位置情報や稼働状況を管理できる「スマートアシストリモート」を標準搭載
商品名称(型式) ViO20-6(キャノピー)
標準バケット容量 0.06㎥
エンジン定格出力 14.3kW
運転質量 2,065kg
全長 3,890mm(輸送時)
全幅 1,380mm(輸送時、固定脚仕様)
全高 2,400mm(輸送時)

参考:ヤンマーホールディングス株式会社「ViO20-6」
ヤンマー建機株式会社「2トンクラスの後方超小旋回ミニショベル「ViO20-6」を発売」

住友建機「SH200-7」

「SH200-7」は住友建機のバックホウであり、「2019年度 優秀省エネ機器・システム表彰」において「日本機械工業連合会 会長賞」を受賞した重機です。

エンジンや油圧などはすべて電子制御されており、最新の排出ガス基準に対応しています。さらに燃費、作業スピードが非常に高く、生産効率の大幅な向上が期待できます。

以下に、住友建機「SH200-7」の主な特徴をまとめました。

  • JCMASで定める2020年燃費基準を上回る優れた燃費性能を達成
  • 世界最高レベルの排出ガス規制、オフロード法2014年基準をクリアしたクリーンエンジン「SPACE5 α」
  • 排気中にAdBlue® (尿素水)を噴射し、NOxを化学反応により無害な窒素と水に浄化
商品名称(型式) SH200-7
標準バケット容量 0.8㎥
エンジン定格出力 119.3kW
運転質量 21,000kg
全長 9,430mm(輸送時)
全幅 2,800mm(輸送時)
全高 3,130mm(輸送時)

参考:住友建機株式会社「油圧ショベル SH200-7」
住友建機株式会社「油圧ショベル SH200-7 主要仕様」

まとめ

バックホウとは、油圧ショベルの中でも、バケットをオペレータ側向きに取り付けたもののことです。バケットが運転席側に向いており、ショベルを手前に引き寄せるため、下側にパワーが伝わりやすく、地表面よりも下の位置を掘削する際に効果的です。

バックホウは強力な掘削能力と多用途性を持ち、建設現場や土木工事において不可欠な重機です。ローディングショベルやショベルカーなどとの違いを理解することで、作業に最適な機械を選択し、効率的かつ安全に作業を進められるようになるでしょう。

バックホウを操作するためには、適切な資格・免許を取得することが求められます。安全性を確保し、法律に基づいた適切な運用を実現するためにも、必要な資格・免許を取得しておかなければなりません。

バックホウに関する知識を深め、適切に活用することで、建設現場での作業効率を向上させるだけでなく、安全で質の高い工事を実現させましょう。

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