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建機の自動化を、もっとリアルに
人材不足や技術伝承、職場の安全確保など、さまざまな問題を抱える昨今の日本のものづくり現場。
その解決に向けて、ロボティクス技術を活用した画期的なプロダクトを提供するスタートアップがARAVだ。
いま業界で大きな注目を集めているARAVのソリューションの最前線をご紹介する。

あらゆる建設機械の遠隔操作・自動運転を
ロボティクス技術で実現。
ARAVは、ロボット工学の技術者として日米で活躍していた白久レイエス樹が、東京大学の支援を受けて2020年に起業したスタートアップだ。ミッションに掲げているのは、革新的なロボット技術を駆使して未踏領域の社会課題を解決すること。なかでも創業以来、建設機械にフォーカスして「遠隔化」と「自動化」を実現し、現場の安全性や生産性の向上を図るプロダクトを開発してきた。白久は語る。
「私たちがまず取り組んだのは、建機を遠隔操作するソリューションの開発です。過去、建設業界では長年にわたって無人化施工の研究が進められてきましたが、私たちが提供するソリューションは無線インターネットを介してそれを容易に実現するものです。建機のメーカーに縛られることなく、すでに稼働している旧式の建機であっても、後付けで運転席に装置を取り付けることができ、スマホやタブレット、ノートPCにコントローラを組み合わせるだけで離れた場所からの遠隔操作を可能にします。市販されている建機の8割以上に対応可能であり、操作時のタイムラグもほとんどなく、すでに40社以上の建設会社や製造業のお客様と共同実証実験を行って現場への導入が進んでいます。」
こうして建機の遠隔操作によって培われた技術をもとに、ARAVは自動運転の領域にも果敢に進出している。油圧ショベルやクレーンなどの建機に取り付けられた遠隔操作装置に指令を与え、定められたタスクを自律的に実行するシステムを開発。こちらも各社からの受託開発によって成果が上がっている。そんなARAVは、建機の自動化ソリューションをもっと普及させるべく新たな手を打とうとしている。
「建機の自動化は、業界が抱える人手不足の問題解決に最も有効なソリューションの一つであり、多くの方々が関心をお持ちだと思います。しかし、何から着手していいのかわからず、特に中小規模の建設会社は導入できる人材や投資余力にも乏しいため、自社の現場に合わせてカスタマイズされたシステムを構築するのはハードルが高いのが実情。そこに私たちは、どんな企業でも容易に建機を自動化できる、リアルな解をもたらしていきたいと考えています。」
建機を使うすべての現場に自動化の恩恵を。
その第一弾を今夏投入。
これからARAVが取り組もうとしているのは、創業以来蓄積してきた建機の自動運転技術の一部の機能をパッケージ化し、リーズナブルに現場に提供していくことだ。その第一弾が『ヨイショ投入くん』と名付けられた、油圧ショベルの投入工程を自動化するソリューションだ。白久はその意義をこう話す。
「油圧ショベルは汎用的に使われる建機であり、なかでも投入工程は土木の現場であれば必ず発生するため、まずはそれを自動化しようと企画。中小の建設会社やリサイクル会社の方々も導入しやすいように、対象とする建機を指定し、タスクを限定することで大幅なコストダウンを実現しました。また、システムを起動し操作する手順も極力簡素にし、誰でもオペレーションできるシステムを追求しています。この『ヨイショ投入くん』はCSPI-EXPO2025にてお披露目する予定であり、2025年の夏から市場に広く提供していく計画です。」
この『ヨイショ投入くん』は、国土交通省が実施する「令和6年度 建設機械施工の自動化・遠隔化技術の現場検証」において実証実験を行い、すでに安全性や実用性については好評を得ている。また、三井住友海上火災保険株式会社と共同で、建機自動化システムにおける対人・対物事故に備える賠償責任保険も開発し、リスクへの対応もサポートしている。さらに、建機レンタル業大手の西尾レントオール株式会社および株式会社レンタルのニッケンとも提携し、『ヨイショ投入くん』をレンタルで活用できる環境も整えていく。
「全国の建設会社の方々に、まずは一度ARAVの建機自動化システムをトライアルで導入していただければと思っています。私たちも現在のシステムが完璧だとは考えておらず、現場からご意見やご要望をいただきながら、さらに価値のあるものへと進化させていきたい。そうして建設業に携わる方々とともに、草の根から人材不足の解消や労働環境の改善などに貢献していきたいと思っています。」
将来に向けては、この『ヨイショ投入くん』に続いて機能特化型のソリューションを続々と提供していきたいと訴える白久。投入工程に加えて積込工程などにも適用範囲を拡大し、ソリューションを導入いただいた建設会社のお客様の自動化をスムーズにアップデートしていきたいと語る。今後のARAVの動向に大いに注目したい。

この記事は、日経コンストラクション2025年6月号に掲載された記事を再掲載しております。
「第7回 国際 建設・測量展(CSPI-EXPO2025)」に出展します
2025年6月18日(水)〜21日(土) 幕張メッセ
ブースNo.07-49
自動(無人)油圧ショベル RX 「ヨイショ投入くん」のほか、建機自動制御システムの実演、体験、安全検証・訓練シミュレータであるOCSの展示、建機自動化ソリューションのご紹介をいたします。皆様のご来場をお待ちしております。