重機・建機の知識 2024.07.25

重機とは?種類と役割、用途、免許を解説

建設工事では、大きな穴を掘ったり、大量の土砂を運んだり、重量物を持ち上げたりと、人力では難しい作業を行う必要があります。こうした現場で活躍するのが重機です。重機は、日本の高速道路網整備や高層建築物の建設、ダム建設などで大きな役割を果たしてきました。

ただし、一口に重機と言ってもさまざまな種類や用途があり、目的や現場の状況に応じて適切な重機を選ぶ必要があります。

本記事では、重機とは具体的にどういったものなのか、種類や役割、用途とともに分かりやすく解説します。また、重機を運転するために必要な免許についても紹介しますので、重機の取り扱いに関する基礎知識を身につける際にお役立てください。

重機とは?

様々な種類の重機

重機とは、主に建設現場・土木工事・鉱業・農業などの分野で使用される大型機械の総称です。重い物を持ち上げたり、運んだり、掘削したりできるよう設計されています。重機は、人力では不可能な大規模な施工を効率的に行うために欠かせない存在です。

なお、重機と似ている言葉に、建機(建設機械)があります。これから重機を取り扱っていく中で、重機と建機の違いはどこにあるのか疑問に思うこともあるでしょう。

これに関してはさまざまな議論がなされていますが、結論としては重機と建機は同じものであると捉えて問題はなく、明確な区分けはありません。重機と建機の違いに関しては、2024年5月時点で、政府や公的機関による明言もなされていない状況です。

重機の使用目的

重機の使用目的は多岐にわたりますが、主なものは以下のとおりです。

建設現場 掘削作業 油圧ショベルは、建設現場での基礎掘りや土砂の掘削などに使用されます。建設現場での基礎工事や道路工事でよく使用されます。
整地作業 ブルドーザーは、地面の凹凸をならし、建設現場を整地するために使用されます。大量の土砂を効率的に移動させることができます。
資材運搬 クレーンやフォークリフトを使用して、高所や遠方への物資の搬送を行います。建設現場での資材の移動や工場内での製品の移動に活用されます。
土木工事(道路建設) ロードローラーは、アスファルトや砂利を圧縮して道路の表面を滑らかにします。道路の耐久性を高めるために重要です。
鉱業 バケットホイールエクスカベーターは、連続的に鉱石を掘削するために使用され、特に大規模な露天掘り鉱山で利用されます。
農業・林業 トラクターは、農地の耕作や森林の伐採・整備を行います。さまざまなアタッチメントを装備することで、整地や植付け作業も行え、農業生産の効率化や森林管理に役立ちます。

上表のとおり、重機は建設現場・土木工事・鉱業・農業など幅広い分野で多様な使用目的を持つ機械です。分野に応じて適切な重機を使用することで、作業効率の向上だけでなく、安全性の確保にもつながります。

重機の機能を拡張できるアタッチメントについては以下の記事で解説しております。併せて確認することで重機がさまざまな場面で活躍するイメージが持てますので、ぜひご一読ください。
重機のアタッチメントとは?種類と特徴、使用時の注意点を解説

重機の種類と役割、用途

下表に、重機の種類と役割、用途をまとめました。

種類 役割 用途
ブルドーザー 削りつつ押し運ぶ 建設現場の整地作業で、土砂の掻き出し・運搬・均し作業などを行う際に使用する
モーターグレーダー 薄く削り敷き均す 地表面の切削、整地、材料の敷均し、除雪作業で使用する
ホイールローダー 掬って運搬する 土砂や資材の運搬、整地、除雪、資材の積込み・積下し、解体、鉱物の採掘などで使用する
スクレーパー 削って運搬する 土砂の掘削・積込み・運搬・撒土などが求められる宅地造成・ゴルフ場・高速道路などの工事現場で使用する
スクレープ・ドーザー ブルドーザーとスクレーパー双方の役割 整地や土砂の掘削・積込み・運搬・撒土などが求められる現場で使用する
ダンプトラック 遠隔地に運搬する 建設現場で、土砂・砂利・砕石・合材などの運搬に使用される
移動式クレーン 吊り上げて移動させる 工事現場や建設現場での高所への資材、柱の組み立て、資材の荷揚げや荷下ろし、重量物などの輸送で使用する
トラックミキサ 生コンクリートを混ぜながら運搬する コンクリート打設の作業が求められる建設現場で使用される
フォークリフト 貨物を昇降・移動させる 建設現場や工事現場、工場などでトラックやラックからの荷下ろし、積み込み、収納、荷物の運搬などで使用される
ローディングショベル 掬い上げて積み込む 土砂・岩の掘削や積込み、整地などで使用する
油圧ショベル 掘り下げて積み込む 土砂・岩の掘削や積込み、整地などで使用する
ロードスタビライザ 掻き削って混ぜる 舗装面が傷んだ路面の補修で使用される
パイルハンマー 杭を打撃で打ち込む 軟弱な地盤に構造物を施工するような建設現場で使用される
ロードローラー しっかり締固める アスファルト混合物や路盤の締固め、路床の仕上げ転圧など主に道路工事で使用される
コンクリートポンプ車 生コンクリートを圧送する マンション・ビルなどの高い建物や、広い範囲にコンクリートを打設するような建設現場で使用される
ハーベスタヘッド 木を切る 立木の伐倒、枝払い、玉切りなど、主に林業で使用される
ロータリ除雪機 積雪を掻き込んで遠くに飛ばす 歩道・住宅・事業所・高速道路などの除雪作業で使用される

主な重機

代表的な重機のブルドーザー

ここでは、前章で記載した重機の中から、代表的な以下の10種類の重機をピックアップしてご紹介します。

  • ブルドーザー
  • ホイールローダー
  • スクレーパー
  • ダンプトラック
  • 移動式クレーン
  • トラックミキサ
  • フォークリフト
  • 油圧ショベル
  • ロードローラー
  • コンクリートポンプ車

それぞれの概要や特徴を中心に解説しますので、重機への理解を深める際にお役立てください。

ブルドーザー

ブルドーザーは、強力なエンジンと頑丈な構造を持ち、主に土砂の押し出し・整地作業などに使用される重機です。前面に大きなブレードを装備しており、土砂や岩石を前方に押し出せます。これにより、大量の土砂を一度に動かすことが可能です。

ブルドーザーの中には、「リッパ」と呼ばれる装置がついているタイプもあります。リッパとは爪のような形状の装置です。主として、地面にある大きな石や岩などを砕く際に活躍します。

ホイールローダー

ホイールローダーは、さまざまな物を「すくって持ち上げる」重機です。工事現場はもちろん、除雪や農業、畜産業、採石場など、重くて大きなものを運搬する必要がある現場で活躍します。

多くの運搬物を別の場所に運ぶ際、主にダンプトラックを使用しますが、そのダンプトラックへの積み込みが得意な重機がホイールローダです。

ホイールローダは足回りがタイヤになっているため、スムーズに走行できます。そのため、ダンプトラックに積み込むだけでなく、近い場所であればバケットに運搬物を入れたまま運ぶことが可能です。

スクレーパー

スクレーパーは、掘削・積込み・運搬・捨土・敷均といった一連の土工作業サイクルを1台でこなせる自己完結的な重機です。大まかに、トラクターに牽引されて作業する「被けん引式スクレーパー」、トラクタとスクレーパーが一体化して自走できる「自走式スクレーパー」に分かれます。

スクレーパーは、高い土地を削って低い場所を埋める作業に適しています。スクレーパーがあれば1台で土砂の掘除から積込み、1km程度までの運搬が可能なため、大規模な整地作業時に活用されるケースが多いです。

ダンプトラック

ダンプトラックは、通常のトラックに傾斜可能な荷台や油圧機などを架装した重機です。 この架装によって、土砂や砂利、合板などを運搬するだけでなく、簡単に積み下ろしを行えます。

作業の用途に合わせて多くのタイプが存在していますが、土砂や砂利などを運ぶ「土砂ダンプ」と、主に軽量の産業廃棄物を運ぶ「土砂禁ダンプ」の2つに分類が可能です。

ダンプトラックは、荷台を後方に傾けられることから、荷物を下ろすときに手間がかからず、その便利さから作業現場で広く使用されています。

移動式クレーン

移動式クレーンは、動力を用いて荷を吊り上げ、水平に運ぶことを目的にした重機です。基本的にクレーンは固定されていて、不特定の場所へ移動はできません。しかし、移動式クレーンはタイヤなどを使って、不特定の場所への移動が可能です。

移動式クレーンは、大きく「陸上」「鉄道」「水上」の3つに分けられます。陸上のクレーンは、「トラッククレーン」が代表的です。トラッククレーンは、路上走行するための運転室と、クレーン操作用の運転室が、それぞれ別に設けられています。

鉄道のクレーンは、レールの上を走行するように作られた「鉄道クレーン」が代表的です。水上のクレーンは、河川や海上などで作業ができるように作られたもので、「浮きクレーン」と呼ばれています。

トラックミキサ

トラックミキサは、ミキサー装置を備え、生コンクリートまたは所定計量されたコンクリート用材料をドラムに受け、走行中に攪拌もしくは製造しながら輸送する重機です。

傾向として、輸送の合理化のため大量輸送できる10t車クラスと、中小工事向けとして普通中型免許で乗れる4t車クラスに需要が集中しています。

フォークリフト

フォークリフトは、油圧を利用して昇降や傾斜が可能なツメ(フォーク)を備えた重機です。重機の中でも種類が多く、現場で使用する資材の荷積みや荷下ろしで活躍しています。

最も一般的に見られるフォークリフトが、「カウンターバランスフォークリフト」です。車体前方にパレットを差し込むタイプのツメがあり、さまざまな荷物を運搬できます。そのほかにも、アタッチメントを変えることで、より幅広い貨物や作業に対応可能です。

油圧ショベル

油圧ショベルは、主に建設・土木現場で使用される重機です。呼称は複数あり、ユンボ、パワーショベル、バックホウ、エクスカベーターと呼ぶこともあります。

構造・仕組みとしては、エンジンからの動力を油圧ポンプにて油圧力に変換し、油圧の力によって、走行・旋回・複数関節アームの操作を行うのが特徴です。

走行面では、多くはクローラー式(キャタピラー)によるものですが、ホイール式と呼ばれる走行性能に優れた油圧ショベルもあります。

ロードローラー

ロードローラーは、大型の車輪と重量を用いて、建設現場で土壌・コンクリートを押し固めたり、アスファルトを押し固めて道路を整地したりする重機です。

グラウンド整備に使う「整地ローラー(コンダラ)」のような大きな車輪と、地面を転圧するため重い車体が特徴です。

コンクリートポンプ車

コンクリートポンプ車は、建設現場で生コンクリートを使用する際、打設現場へと圧送する役割を持つ重機です。配管やホースなどを通じて圧送するためのポンプを装備しています。

固体のコンクリートが液体になった状態のものが生コンクリートで、非常に大きな重量があります。生コンクリートを人が運ぶのは効率が悪いだけでなく、重大な事故の原因にもなりかねません。そこで、ポンプの勢いを上手に利用してスピーディーに生コンクリートを圧送できるコンプリートポンプ車が必要とされます。

重機を運転する免許

前章で挙げた重機を運転するために必要な免許・資格を下表にまとめました。

運転する重機 必要な免許・資格
ブルドーザー

ホイールローダー

スクレーパー

スクレーパー

油圧ショベル

【機体重量3t以上の場合】
・車両系建設機械(整地等)運転技能講習
【機体重量3t未満の場合】
・小型車両系建設機械(整地等)運転特別教育
ロードローラー 締固め用建設機械(ローラー)の運転特別教育
移動式クレーン 【つり上げ荷重5t以上の移動式クレーンの場合】
・移動式クレーン運転士免許
【つり上げ荷重1t以上5t未満の移動式クレーンの場合】
・小型移動式クレーン運転技能講習
【つり上げ荷重1t未満の移動式クレーンの場合】
・移動式クレーンの運転特別教育
フォークリフト 【最大積載荷重1t以上のフォークリフトの場合】
・フォークリフト運転技能講習
【最大積載荷重1t未満のフォークリフトの場合】
・フォークリフト運転特別教育
ダンプトラック

トラックミキサ

【車両総重量3.5t未満、最大積載量2t未満、乗車定員数10人以下の場合】
・普通自動車免許 ※2017年以降に取得したもの
【車両総重量3.5~7.5t未満、最大積載量2~4.5t未満、乗車定員数、10人以下の場合】
・準中型自動車免許
【車両総重量7.5~11t未満、最大積載量 4.5~6.5t未満、乗車定員数11~29人以下の場合】
・中型自動車免許
【車両総重量11t以上、最大積載量6.5t以上、乗車定員数30人以上の場合】
・大型自動車免許
コンクリートポンプ車 ・コンクリートポンプ車特別教育

なお、上表のうち、ダンプトラックとトラックミキサを除いた重機を移動(公道を走行)させるためには、大型(もしくは小型)特殊自動車免許および普通免許、準中型免許、中型免許、大型免許のいずれかが必要です(取得が必要な免許は、重機のサイズによって変わります)。

重機の運転および移動に必要な免許・資格について、詳しくは以下の記事で解説しています。さらに理解を深めたい方や、免許・資格の取得を検討しているといった方は、ぜひご覧ください。

建設機械・重機の免許・資格一覧!費用や日数、受験資格

まとめ
重機とは、主に建設現場・土木工事・鉱業・農業などの分野で使用される大型機械の総称です。「建設機械」と同じ意味で使用されています。重い物を持ち上げたり、運んだり、掘削したりできるよう設計されているのが特徴です。

重機にはブルドーザーやホイールローダー、スクレーパーをはじめさまざまな種類があり、用途や運転・移動に必要な資格もそれぞれ異なります。

これから新たに重機を取り扱うという場合、まずは必要な免許・資格をしっかりと把握した上で取得を目指しましょう。

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