重機・建機の知識 2025.10.10

車両重量と車両総重量の違いとは?免許や車検にも関わる基本知識

自動車を運転したり、購入・車検を受けたりする際には、「車両重量」と「車両総重量」の違いを正確に理解することが大切です。

どちらも重量に関する用語ですが、それぞれの意味は大きく異なります。車両重量と車両総重量の違いは、運転免許の取得条件や自動車重量税、車検の基準などにも関係するため、知らないままでいると思わぬトラブルにつながるおそれがあります。

本記事では、車両重量と車両総重量の定義や違いをはじめ、免許区分・税金・車検との関連性についてわかりやすく解説します。なお、内容は、掲載時点のものとなります。

車両重量と車両総重量の違い

車両重量と車両総重量

車両重量とは?

車両重量とは、その名のとおり「車両の重さ」を指します。キャブやシャシ、架装などを備えたその車両が、すぐに走行できる状態での重さです。燃料やエンジンオイル、冷却水などの必要な液体類が規定量まで入っており、標準仕様の荷台も含まれています。

一般的には、運転者や乗員、荷物のほか、工具やスペアタイヤの重量は車両重量に含まれません。ただし、車検証に記載される車両重量については、車種や時期、メーカーの基準によって、工具やスペアタイヤが含まれている場合もあります。運転者については通常含まれませんが、資料や記載方法によっては例外もあるため、詳細はご自身の車検証やメーカー資料でご確認いただくと安心です。

車両重量のポイントは、「荷物や乗員を載せていない状態」での重さである点です。車両重量は車検証にも記載されており、自動車のサイズ感や構造を把握する上での基本的な目安となります。

また、車両重量は、「自動車重量税の金額」や「車検時の区分」などにも影響する指標です。自動車を購入する際や維持費を見積もる際、必ず確認しておきましょう。

車両総重量とは?

車両総重量とは、「車両重量」に加えて、定員全員が乗車した場合の体重(1人あたり55kgで計算)と最大積載量(※)を合計した、理論上の最大重量のことです。

※:トラックやダンプ、不整地運搬車などの車両が一度に安全に積載できる荷物の重量上限のこと。詳しくは、以下の記事をご覧ください。

最大積載量とは?計算方法・車両総重量との違いを解説

例えば、トラックなどの貨物車の場合、車両総重量は通常、「車両重量+定員分の体重(1人あたり55kg)+最大積載量」で計算されます。一般的な乗用車の場合、最大積載量が設定されていないことが多いため、「車両重量+定員分の体重」の合計が車両総重量となります。ただし、商用登録や特殊用途車両など、一部例外もあるため、詳細は車検証の記載をご確認ください。

車両総重量も車検証に明記されており、運転免許や保険料の区分など、さまざまな制度の判断基準として用いられます。車両総重量が一定の基準を超えると、必要な運転免許の種類も変わるため、事前に確認しておくことが大切です。

車両重量と車両総重量の違い

車両重量と車両総重量の大きな違いは、「荷物や乗員を含めた状態を想定しているかどうか」です。

用語 内容 含まれるもの
車両重量 車両本体の重さ キャブ、シャシ、架装、燃料、エンジンオイル、冷却水、標準仕様の荷台など
車両総重量 最大運行時の想定総重量 車両重量、定員全員の体重、最大積載量

例えば、5人乗りのワンボックスカーに誰も乗っていない状態でも、「車両総重量」は5人分を乗せた状態として扱われます。免許区分や道路の通行制限、取り締まりなどの判断基準には、この理論上の重量が用いられるため注意が必要です。

これは、常に最大積載状態(定員いっぱいでの走行)を想定して、安全性と制度の公平性を確保するために基準とされています。実際の積載量や乗員に関係なく、定義上の最大重量でルールが適用されるのが原則です。

これら2つの数値は、車検時の区分や運転に必要な免許の種類、自動車重量税にも影響を及ぼす重要な情報です。

特にトラックなど業務用車両では、積載する物の重さや乗員数によって車両総重量が大きく変化します。こうした違いを正しく理解していないと、知らないうちに無免許運転や過積載に該当してしまうおそれがあるため注意が必要です。

車両総重量は運転免許にどう関係する?

運転免許の種類は、主に「車両総重量」「最大積載量」「乗車定員」の3つの基準によって決まります。このうち、特に重要なのが「車両総重量」で、どの免許でどの範囲の車両を運転できるかを判断する際の重要な指標となります。

例えば、現行の普通免許で運転できる車両総重量の上限は「3.5t未満」と定められており、それを超える車両を運転する場合は、準中型免許以上が必要になります。

取得時期によって運転できる車両総重量が異なる

同じ「普通免許」でも、取得した時期によって運転可能な車両総重量の上限が異なります。これは過去に道路交通法が数回改正され、免許制度が段階的に見直されてきたためです。

取得時期 車両総重量 最大積載量 備考
2007年6月1日以前 8t未満 5t未満
2007年6月2日~2017年3月11日 5t未満 3t未満 中型免許創設に伴う変更
2017年3月12日以降 3.5t未満 2t未満 準中型免許創設に伴う変更

自分の普通免許の取得時期を確認すると、どの範囲の車両まで運転可能かを把握できます。特に商用車やレンタルトラックを使用する際は、事前の確認が非常に重要です。

なお、普通免許で運転できるトラックの例については、以下の記事でわかりやすく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

普通免許で乗れるトラックは何トン?取得時期ごとに一覧で解説

車両重量・車両総重量と重量税や車検の関係

自動車の車検の様子

車を所有し運転する際は、定期的に車検を受けて「自動車重量税」を納める必要があります。これはすべての車両に共通する義務ですが、課税の基準として「車両重量」と「車両総重量」のどちらが使われるかは、ナンバープレートの種別によって異なります。

自動車重量税は国税にあたるもので、基本的には「車が重いほど税額が高くなる」という仕組みです。その際、自動車重量税は、一般的な乗用車(3ナンバー、5ナンバー)では「車両重量」をもとに税額が決まります。一方、貨物車(1ナンバー、4ナンバー)やバスなどは「車両総重量」が課税基準となります。ただし、特殊用途車両など一部例外もあるため、詳細は車検証や登録区分をご確認ください。

これは、貨物車の多くが用途に応じて積載量が大きく変化するため、運行時の実態に近い「車両総重量」で課税した方が公平性が保たれるという考え方によるものです。

このように、車検時の費用や税額を正しく把握するためには、自分の車がどちらの重量区分で扱われているのかを理解しておくことが大切です。

車両重量による重量税の違い(乗用車)

乗用車(3ナンバー、5ナンバー)の自動車重量税は、「車両重量」によって税額が決まります。以下は、新車新規登録等時における車両重量別の自動車重量税の税額例です(3年自家用、エコカー外)。

  • 0.5t超〜1t以下:24,600円
  • 1t超~1.5t以下:36,900円
  • 1.5t超~2t以下:49,200円
  • 2t超~2.5t以下:61,500円

自動車重量税は車両の年式や環境性能にも影響を受けるため、事前に確認しておくと安心です。

参考:国土交通省「令和5年度税制改正に伴う自動車重量税の税額の基本的な考え方(フローチャート) その1」

ナンバープレートと課税基準の違い

自動車重量税の課税基準は、ナンバープレートの種類によって異なります。

  • 3ナンバー、5ナンバー(乗用車):車両重量が課税対象
  • 1ナンバー・4ナンバー(貨物車)、2ナンバー(バスなど乗合自動車)、8ナンバー(パトカー、レンタカーなど特種用途自動車):車両総重量が課税対象

例えば、車両のサイズが同じでも、貨物車として登録しているか乗用車として登録しているかによって、支払う税額が変わるケースがあります。そのため、車の種別や登録区分を正しく把握することが大切です。

車検にも関係する「車両総重量」の扱い

車検時には、記載されている車両総重量の範囲内で使用されているかが確認されます。もし車両総重量が法定上限を超えている場合は、追加の整備記録や証明書類の提出が必要となることがあります。

「車両総重量1.1倍以下ルール」とは?

事業用車両や貨物車両などで気をつけたいのが、「車両総重量1.1倍以下ルール」です。これは、一定の構造要件を満たさない車両について、「実際の重量が車検証に記載された車両総重量の1.1倍を超えた場合、安全性に問題があると判断され、ブレーキの性能証明の提出が求められる」という技術基準上の取り扱いです。

このような制限は主に、過積載時の急制動性能が不十分とされる構造の車両に対して適用されるものであり、すべての車両が一律に該当するわけではありません。
対象かどうかは、構造要件や装備によって異なるため、詳細は整備業者や検査機関での確認が推奨されます。

この基準は、独立行政法人 自動車技術総合機構などが定める技術基準に基づいたもので、急制動時の安全性を確保するために設けられています。ブレーキ性能証明とは、過積載状態でも基準値内の制動距離で停止できることを証明する試験結果の提出を指します。

例えば、車検証に「車両総重量5,000kg」と記載されている場合、5,500kgを超えると追加対応が必要になる可能性があります。このような基準は事故防止のために定められており、特に荷物を多く積む業務用車両では意識しておくべき重要なポイントです。

参考:独立行政法人 自動車技術総合機構「審査事務規程|第4章 自動車の検査等に係る審査の実施方法」

よくある誤解と注意点

最後に、車両重量と車両総重量について、よくある誤解と注意点をまとめました。

「車両総重量=実際の重さ」と思い込む誤解

「車両総重量」という言葉から「現状の車の重さ」だと勘違いする人がいますが、これは誤りです。実際には、車両総重量は車両重量に「定員乗車時の体重」と「最大積載量」を加えた理論上の最大重量です。

例えば、5人乗りのワンボックスカーに誰も乗っていない状態でも、「車両総重量」は5人分を乗せた状態として扱われます。免許区分や道路の通行制限、取り締まりなどの判断基準には、この理論上の重量が用いられるため、誤解によるトラブルに注意が必要です。

積載量を超えた運転は免許違反にあたる

運転免許には、それぞれ運転可能な「車両総重量」の上限があります。もし普通免許でその上限を超える車両を運転すると、無免許運転として処罰される可能性があります。

特に引っ越し時や工事現場などでレンタカーや業務用車両を使う際には、「今日は荷物が少ないから大丈夫」といった感覚的な判断は避けて、車検証に記載された「車両総重量」が、自分の保有する免許で運転可能な範囲内かどうかを必ず確認してください。

車両重量に運転者は含まれる?定義の違いに注意

一般的に、日本の法令上の「車両重量」には運転者の体重は含まれません。ただし、メーカーが発表する諸元表や一部の資料では、試験条件などから運転者1名(55kg相当)を含めて算出しているケースも見られます。

車両重量の定義は資料や用途によって異なる場合があるため、「運転者を含むかどうか」については、ご自身の車検証やメーカー資料、用途ごとに確認しておくとより確実です。

これは、メーカー側が試験時の再現性を考慮して「ドライバーが乗った状態」を基準に測定しているのに対し、法制度では「物理的な車体本体の重さ」を基準にしているという違いによるものです。そのため、資料によって記載される重量に差が出ることがあります。

そのため、通常は「車両重量には運転者を含まれない」と考えて問題ありませんが、資料によって解釈が異なることもあるため、その点も覚えておくと安心です。

まとめ

車両重量とは、キャブやシャシ、架装などを備えた、その車両がすぐに走行できる状態での重さです。燃料やエンジンオイル、冷却水などの必要な液体類が規定量まで入っており、標準仕様の荷台も含まれています。

そして、車両総重量とは、車両重量に加えて乗車定員分の体重と最大積載量を合わせた「理論上の最大重量」のことです。

これら2つの数値は、車検時の区分や運転に必要な免許の種類、自動車重量税にも影響を及ぼす重要な情報です。

また、同じ「普通免許」でも、取得した時期によって運転できる車両の上限重量(車両総重量)が異なるため、自分の免許の有効範囲を確認しておくことが大切です。荷物を積みすぎると免許違反となるおそれもあるため、車検証に記載された車両総重量を日常的にチェックする習慣を身につけましょう。

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