車両系建設機械は6種類!運転と移動の免許・資格も紹介
車両系建設機械は、建設現場や工事現場などで使用される機械であり、効率的な作業を実現するために不可欠な存在です。土砂の掘削・運搬・整地・舗装など、さまざまな用途に利用されており、現代のインフラ整備や都市開発において重要な役割を果たしています。
本記事では、車両系建設機械の6つの種類について詳しく解説します。また、車両系建設機械を運転・操作するために必要な免許・資格についても紹介していますので、車両系建設機械の基礎知識を身につける手助けとなれば幸いです。
目次
車両系建設機械とは?
労働安全衛生法における車両系建設機械とは、「労働安全衛生法施行令第20条第12号の別表7」に掲げられている建設機械のことで、動力を用い、なおかつ不特定の場所に自走することが可能なものを指します。
車両系建設機械の6種類
車両系建設機械は、以下の6種類に分けられます。
- 整地・運搬・積込み用機械
- 掘削用機械
- 基礎工事用機械
- 締固め用機械
- コンクリート打設用機械
- 解体用機械
ここからは、種類ごとの車両系建設機械を具体的に解説していきます。
①整地・運搬・積込み用機械
整地・運搬・積込み用機械には、以下の建設機械が含まれます。
- ブルドーザー
- モーターグレーダー
- トラクターショベル
- ずり積機
- スクレーパー
- スクレープドーザー
- 1から6までに掲げる機械に類するものとして厚生労働省令で定める機械
それぞれ順番に詳しく解説します。
1. ブルドーザー
ブルドーザーとは、土砂を掻き起こしたり、運搬したり、ならしたりするための整地用建設機械です。主に建設現場で使用されます。
ブルドーザーの車体には、前方に「土工板(排土板:英語でドーザまたはブレード)」と呼ばれる大きな板が取り付けられています。このブレードは、ブルドーザーが進む方向の土を削る・押す・ならす役割を果たします。
ブルドーザーについては、以下の記事で特徴や種類など様々な詳細な角度から解説しています。車両系建設機械の一つであるブルードーザーをより深く知りたい方は、ぜひご一読ください。
2. モーターグレーダー
モーターグレーダーとは、装着しているブレードで路面や地表を切削、または材料を敷き均し、成形、整正を行う建設機械です。
道路工事の路床、路盤の構築や高い精度が要求されるグラウンドの整正など土木工事において整地作業に用いられているほか、のり面の切削、成形、溝堀などにも使用されています。
3. トラクターショベル
トラクターショベル(トラクターシヨベル)とは、トラクターの前部に付けたバケットで土砂をすくい、運搬や積み込みを行う建設機械です。主に工事現場で使用されています。別名「ローダー」です。
トラクターの形式によって、ホイール式(車輪式)とクローラー式に分けられます。ホイール式のトラクターショベルは、ホイールローダーとも呼ばれ、機動性に優れており、広く用いられています。
4. ずり積機
ずり積機とは、主に鉱山やトンネル工事などで、掘削した土砂・岩石・鉱石などを効率的に搬出するための建設機械です。
5. スクレーパー
スクレーパーとは、掘削・積込み・運搬・捨土・敷きならしといった一連の土工作業を1台で行える建設機械です。高い土地を削ったり、低い箇所を埋めたりといった作業に適しており、主に宅地・工場敷地・ゴルフ場・道路敷地などの土地造成に使用されています。
6. スクレープドーザー
スクレープドーザーとは、スクレーパーとブルドーザの双方の機能を兼ね備えた建設機械です。50mから150m程度の中距離の掘削運搬や地ならし作業に適しています。狭い場所での作業も得意で、主に造成工事や道路工事で活躍します。
7. 1から6までに掲げる機械に類するものとして厚生労働省令で定める機械
これには、例えば以下のような建設機械が該当します。
- アングルドーザー: ブルドーザーの一種で、ブレードの角度を変え、土砂を特定の方向に押せる
- トラックローダー:クローラーで移動するローダーで、安定性が高く、ぬかるんだ場所でも使用できる
- アーティキュレートグレーダー:本体が関節で屈曲するタイプのグレーダーで、狭い場所の作業が得意
②掘削用機械
掘削用機械には、以下の建設機械が含まれます。
- パワーショベル
- ドラグショベル
- ドラグライン
- クラムシェル
- バケット掘削機
- トレンチャー
- 1から6までに掲げる機械に類するものとして厚生労働省令で定める機械
それぞれ順番に詳しく解説します。
1. パワーショベル
パワーショベル(パワーシヨベル)とは、建設現場や解体作業で使われる建設機械です。動力で動く大きなバケットで土砂・硬土盤・軟岩などを掘削できます。
一般的にはバケットの向きが上向きで、下から上にすくい取るように動くことから、主に高所の切り崩しに使用されています。
2. ドラグショベル
ドラグショベル(ドラグシヨベル)とは、強力な掘削力を持つ機械で、大規模な掘削作業に使用されている建設機械です。
一般的には、バケットが下向きであり、特に地表面よりも低い場所の掘削に適しています。
別名「油圧ショベル」「バックホウ」「 ユンボパワーショベル」などとも呼ばれています。また、上記のパワーショベルとも同じように使われる場合もあり、建設・土木業界では、意識して厳密な呼び分けをすることはないようです。
油圧ショベルについては以下記事で解説しておりますので、興味がある方はご一読ください。
3. ドラグライン
ドラグラインとは、土砂をかきとる掘削機械です。機体から伸ばしたブームの先に吊るしたバケットを振り子のように前方に投げ、引き寄せながら土砂をすくう仕組みです。これにより、機械を移動させることなく、広い範囲を掘削できます。
4. クラムシェル
クラムシェル(クラムシエル)とは、掘削機械の一つです。バケットの形状が二枚貝の貝殻に似ていることから、その名称がつけられました。
2枚のバケットを開いた状態で下に落とし、ケーブルや油圧でバケットを閉じて土砂を掴みとる仕組みです。掘削する力はそれほど強くないため、軟弱地盤の掘削や海底や川底にある土砂の浚渫などで使用されています。
5. バケット掘削機
バケット掘削機(バケツト掘削機)とは、土砂や岩石を掘り起こすための建設機械であり、建設現場や土木工事で広く使用されています。大容量のバケットを使用して地面を掘削し、その掘削物の移動・運搬が可能です。
6.トレンチャー
トレンチャー(トレンチヤー)とは、掘削機械の一種であり、無電柱化をはじめとする掘削工事や農業用の暗渠工事などで使用されています。比較的幅が狭かったり、深かったりする溝を掘るのに適しています。
7. 1から6までに掲げる機械に類するものとして厚生労働省令で定める機械
これには、例えば以下のような建設機械が該当します。
- ミニショベル:小型で機動性が高く、狭い現場での作業に適している
- グラブショベル:クラムシェルの一種で、特に堆積物や廃材の掘削に適している
- ドラグラインショベル:長いアームを持ち、遠くの土砂を掘削することが可能
③基礎工事用機械
基礎工事用機械には、以下の建設機械が含まれます。
- くい打機
- くい抜機
- アースドリル
- リバースサーキユレーションドリル
- せん孔機(チュービングマシンを有するものに限る。)
- アースオーガー
- ペーパードレーンマシン
- 1から7までに掲げる機械に類するものとして厚生労働省令で定める機械
それぞれ順番に詳しく解説します。
1. くい打機
くい打機(杭打ち機)とは、建設工事や土木工事の基礎を造成するために使用される建設機械です。別名、「パイルドライバー」とも呼ばれています。
ここでいう杭とは、鋼管杭・H鋼・鋼矢板などのことです。軟弱な地盤に構造物を建築する際の基礎杭、土砂を掘削する際の支保工(仮設工)、災害時の被害拡大を防止する施設など、基礎地盤からの支持力や反力が求められる工事現場に使用されています。
杭打ち機は、こうした杭を必要な現場で地盤中に貫入もしくは打込を行う際に用いられる機械です。
2. くい抜機
くい抜機(杭抜機)とは、杭を地盤中から引き抜く際に用いる建設機械です。地盤中に貫入・打込みを行う「くい打機」と対になっています。
くい打機と同様に、くい抜機も建設工事や土木工事の基礎を造成するために用いられています。
3. アースドリル
アースドリルとは、ドリリングバケットを用いて土砂を地上に排土する建設機械です。掘削からコンクリート打込みまでの一連の作業を一台で行えます。
建築分野において多く採用されており、比較的狭い敷地でも施工できる点が特徴です。
4. リバースサーキユレーションドリル
リバースサーキユレーションドリル(リバースサーキュレーシヨンドリル)とは、基礎杭特殊ビットを回転させながら掘削残土を泥水ごと逆循環(リバース)させることで、断続的に掘削する建設機械です。主に岩盤層の掘削を行う際に用いられています。
5. せん孔機(チュービングマシンを有するものに限る。)
せん孔機とは、サドル付分水栓を用いて配水管を穿孔する建設機械です。せん孔機には大きく手動式と電動式という2つのタイプがあり、 使用環境や配水管の種類によ って使い分けられています。
6. アースオーガー
アースオーガーとは、オーガヘッドのついたスクリューを回転させ、基礎ぐいなどのための削孔をする建設機械です。主に、地下鉄・下水道・その他地上構造物の基礎工事に用いられています。
7. ペーパードレーンマシン
ペーパードレーンマシンとは、地中にペーパードレーンと呼ばれる特殊な排水材を設置し、地中の水を集めて効率的に排水することで、地盤の安定化を図る建設機械です。
主に軟弱地盤において、圧密を促進して強度を増すために使用されます。これにより、基礎工事や土木工事、構造物の設置が安全に行えるようになります。
8. 1から7までに掲げる機械に類するものとして厚生労働省令で定める機械
これには、例えば以下のような建設機械が該当します。
- ミニパイルドライバー:小型のくい打機で機動性が高く、狭い現場での作業に適している
- 振動アースドリル:振動を利用して効率的に地面を掘削する
④締固め用機械
締固め用機械には、ローラーおよび、ローラーに類するものとして厚生労働省令で定める機械が含まれます。それぞれ順番に詳しく解説します。
1. ローラー
ローラーは、路床・路盤・舗装面の支持力を高めるために使用される建設機械です。主に道路やダムの盛土締固め、道路舗装、建築構造物基盤、地下埋設物の覆土などの締固めに用いられています。
2. 1に掲げる機械に類するものとして厚生労働省令で定める機械
これには、例えば以下のような建設機械が該当します。
- タイヤローラー:ゴムタイヤで均一な圧力をかけるのが特徴
- スチールホイールローラー:鋼製のホイールで強力に圧縮する
- 振動ローラー:振動を利用して土砂・アスファルトを効果的に締固める
⑤コンクリート打設用機械
コンクリート打設用機械には、コンクリートポンプ車および、コンクリートポンプ車に類するものとして厚生労働省令で定める機械が含まれます。それぞれ順番に詳しく解説します。
1. コンクリートポンプ車
コンクリートポンプ車とは、建設現場でミキサートラックが運んでくる生コンクリートを、配管やホースを通じて打設現場へ圧送するポンプを装備した建設機械です。
コンクリートをポンプで圧送し、ホースを通じて高所や遠距離に打設できます。主に高層ビルの建設、大規模な土木工事などに用いられています。
2. 1に掲げる機械に類するものとして厚生労働省令で定める機械
これには、例えば以下のような建設機械が該当します。
- ショートリーチポンプ車:ホースが短く、狭い現場やアクセスが難しい場所での作業に適している
- ラインポンプ車:ホースを延長して使用するタイプで、広範囲にコンクリートを供給できる
- ショットクリートポンプ車は:コンクリートを圧送しながら噴霧する機能を備え、斜面や天井などにコンクリートを打設できる
⑥解体用機械
解体用機械には、ブレーカおよび、ブレーカに類するものとして厚生労働省令で定める機械が含まれます。それぞれ順番に詳しく解説します。
ブレーカ
ブレーカとは、パワーショベルの先端に付けるアタッチメントパーツで、チゼル(のみ)を連続的に打撃する建設機械です。舗装道路の路面やコンクリート建造物の解体・岩塊の小割・岩盤掘削などに使用されています。
そのほか、ブレーカに類するものとして厚生労働省令で定める機械として、主に以下のようなものも解体用機械に該当します。
- 鉄骨切断機:鉄骨(非鉄金属の工作物を含む) を切断するためのはさみ状のアタッチメ ントを装着した建設機械
- コンクリート圧砕機:コンクリートを砕くためのはさみ状のアタッチメントを装着した建設機械
- 解体用つかみ機:木造の工作物を解体し、またはその解体物を掴んで持ち上げるためのフォーク状のアタッチメントを装着した建設機械
これら3つの建設機械は、平成25年7月1日より、労働安全衛生法令上の車両系建設機械における解体用機械に含まれることになりました。
それまでは車両系建設機械に該当せず、労働安全衛生法令は適用されませんでしたが、休業4日以上の死傷災害が年間100件以上発生しており、死亡災害のような重篤な災害も起こっていることを受けて、車両系建設機械に追加されたという経緯があります。
参考:厚生労働省「平成25年7月1日から、鉄骨切断機等も規制対象となる改正「労働安全衛生規則」が施行されています」
車両系建設機械の免許・資格:運転
車両系建設機械の運転には、その種類に応じて以下の資格が必要です。
運転する車両系建設機械の種類 | 必要な資格 |
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整地・運搬・積込み用機械、掘削用機械 | 【機体重量3t以上】 車両系建設機械(整地等)運転技能講習 【機体重量3t未満】 小型車両系建設機械(整地等)運転特別教育 |
基礎工事用機械 | 【機体重量3t以上】 車両系建設機械(基礎工事用)運転技能講習 【機体重量3t以上】 小型車両系建設機械(基礎工事用)運転特別教育 |
締固め用機械 | 締固め用建設機械(ローラー)の運転特別教育 |
コンクリート打設用機械 | コンクリートポンプ車特別教育 |
解体用機械 | 【機体重量3t以上】 車両系建設機械(解体用)運転技能講習 【機体重量3t以上】 小型車両系建設機械(解体用)運転特別教育 |
参考:中央労働災害防止協会「免許・技能講習等が必要な業務について」
車両系建設機械の免許:移動
車両系建設機械を移動(公道で走行)させるためには、道路交通法にもとづく「大型特殊自動車免許」もしくは「小型特殊自動車免許」の取得が必要です。
大型特殊自動車免許とは、大型特殊自動車を公道で走行させるための免許です。道路交通法上、大型特殊自動車の基準は、「小型特殊自動車の規格をこえるもの」であると定められています。
小型特殊自動車免許とは、小型特殊自動車を公道で走行させるための免許です。小型特殊自動車の規格は、以下のとおり定められています。
全長 | 4.7m以下 |
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全幅 | 1.7m以下 |
全高 | 2.0m以下(ヘッドガード等を備えた自動車で、ヘッドガード等を除いた部分の高さが2.0m以下のものについては2.8m以下) |
最高速度 | 時速15km以下 |
すでに普通免許や普通二輪免許を有している場合、小型特殊自動車免許は下位免許に該当することから、新たに取得しなくても小型特殊自動車の運転が可能です。
ただし、普通自動車である車両系建設機械を公道で走行させるためには、大型特殊自動車免許あるいは小型特殊自動車免許に加えて、普通免許、準中型免許、中型免許、大型免許のいずれかの取得が求められます。
ここまでに紹介した車両系建設機械に関する免許・資格について、詳細は以下の記事で解説しています。車両系建設機械の取り扱いに必要な免許・資格に関する理解を深めて、取得を目指す際は、ぜひお役立てください。
建設機械・重機の免許・資格一覧!費用や日数、受験資格
まとめ
車両系建設機械とは、「労働安全衛生法施行令第20条第12号の別表7」に掲げられている建設機械であり、動力を用い、なおかつ不特定の場所に自走できるもののことです。
車両系建設機械には、大まかに以下の6種類が存在します。
- 整地・運搬・積込み用機械
- 掘削用機械
- 基礎工事用機械
- 締固め用機械
- コンクリート打設用機械
- 解体用機械
それぞれの種類に応じて、運転と移動に求められる免許・資格は異なりますのでご注意ください。