重機・建機の知識 2025.05.15

トラックとダンプの違いとは?用途・構造・走行環境で解説

トラックとダンプの違いを明確に理解できている方は多くないのではないでしょうか。トラックとダンプは荷物を運ぶ車両である点は共通していますが、用途や構造などに明確な違いがあります。

特に建設や運送の現場に関わる方、車両の導入やレンタルを検討している方は、トラックとダンプの相違点を正しく理解しておくことが非常に重要です。

本記事では、用途・構造・積載の方法・走行環境といった視点から、トラックとダンプの違いについてわかりやすく解説します。

トラックとダンプの違いをわかりやすく比較

トラックやダンプなどの車両

はじめに、トラックとダンプの主な違いを下表にまとめました。自社においてどちらの車両を使うべきか、判断する際にお役立てください。

比較項目 トラック ダンプ
主な用途 梱包された荷物や製品の運搬(配送・引っ越しなど) 土砂・砂利・廃材などバラ物の運搬(建設・解体現場など)
荷台の特徴 固定式(平ボディ・箱型など) 傾斜可能(油圧装置付き)
積載・荷下ろし方法 手作業や重機の使用(フォークリフト、クレーンなど) 重機で積載し、荷下ろし時は荷台を傾けて放出
走行環境 一般道・高速道路中心 一般道のほか未舗装路・起伏の多い現場など、悪路にも対応可能
積載物の種類 梱包された製品や家具、パレット荷物など 土砂や瓦礫、建設資材などのバラ物が中心

大きな違いは「荷台の構造」と「用途」

トラックとダンプの違いは多岐にわたりますが、中でも最も明確なのが荷台の構造です。トラックの荷台は固定されており、自動で荷物を下ろす機能はありません。そのため、荷下ろし作業には人力やフォークリフトなどの補助が必要です。一方、ダンプは油圧装置によって荷台を傾けることができ、土砂や砕石などの重い資材も効率よく一気に排出できます。

また、用途にも明確な違いがあります。トラックは主に物流や引っ越しなど、舗装された道路での物品輸送に適しています。これに対して、ダンプは主に建設や解体などの現場環境に適しており、耐久性や荷降ろし効率が重視される用途に向いています。

見た目が似ていて混同しやすいケースも

トラックとダンプは見た目が似ている車両もあるため、特に初心者の方は混同しやすい傾向があります。例えば、平ボディのトラックと平らな荷台を持つ小型ダンプは、外観だけでは区別がつきにくい場合があります。

こうした車両を見分ける際には、荷台が油圧で傾く仕組みを備えているかどうかをチェックしましょう。

ダンプには荷台を傾けて積載物を下ろす機構があり、この点が大きな判断基準になります。また、車両の登録区分や型式も異なるため、書類の確認も確実な判別方法のひとつです。

ダンプについて理解を深めたい場合は、以下の記事をご覧ください。

ダンプトラックとは?特徴・用途・必要な免許をわかりやすく解説

トラックとダンプの違い①用途

トラックとダンプは、使用されるシーン・業界が異なります。ここでは、それぞれが活躍する主な用途について、具体例を交えて解説します。

トラックは物流・配送向き

トラックは街中でもよく見かける、非常に汎用性の高い車両です。使用されるシーンは幅広く、例えば次のようなケースが挙げられます。

  • 宅配便や食品・日用品の配送
  • 引っ越しに伴う家具・家電の運搬
  • 木材や鉄骨といった建築資材の輸送

また、トラックには平ボディやバン型(箱型)、ウィング車、冷凍・冷蔵車など多彩なバリエーションがあり、運ぶ荷物の種類や用途に応じてタイプを選択できます。都市部の狭い道路にも対応しやすく、柔軟に運用できるのも大きな特徴です。

ダンプは建設・土木作業向き

ダンプは土砂や砕石といったバラ物の大量運搬に特化した車両で、スピーディーな荷下ろしが求められる現場で大いに活躍します。主な活用シーンは以下の通りです。

  • 土木工事:掘削した土砂の搬出
  • 建設工事:砂利や骨材などの搬入
  • 解体作業:瓦礫や廃材の運搬

ダンプは過酷な現場環境に対応できるよう、車体の耐久性や悪路での走行性能が重視された設計になっています。未舗装の道や起伏の激しい場所でも安定して走行できるため、建設業や土木業などでは欠かせない存在です。

使用事例でわかる使い分け

下表に、主要な作業内容別に、トラックとダンプどちらの車両の使用が適しているのかをまとめました。

作業内容 適している車両
倉庫間の製品運搬 トラック
工事現場での土砂搬出 ダンプ
引っ越し荷物の運搬 トラック
解体現場で出た瓦礫の搬出 ダンプ

トラックとダンプの違い②構造

ダンプの荷下ろし

トラックとダンプでは、荷台の構造に大きな違いがあります。本章では、構造から見たトラックとダンプの違いを詳しく解説します。

トラックの荷台構造と機能

トラックの荷台は、一般的に「固定式」が主流です。荷台が傾いたり可動したりすることはなく、荷下ろしは人力またはフォークリフトなどの機械を用いて行います。

トラックの荷台の種類には以下のようなタイプがあります。

荷台の種類 詳細
平ボディ 天井や側面の囲いがないオープン構造で、建材や機械類の運搬に適している。
箱型(バン型) 荷室が完全に囲まれており、雨風から荷物を守るため、食品や精密機器などの輸送に向いている。
ウィング車 側面が大きく開閉できる構造で、パレット積みなどの作業がスムーズに行える。
パワーゲート車 荷台後部にリフト機構があり、重量物の荷下ろし作業が効率化する。

このように、トラックは積載する荷物や用途に応じて、様々なタイプを選べる柔軟性に大きな特徴があります。

ダンプの荷台構造と機能

ダンプの大きな特徴は、油圧によって動く「可動式の荷台」にあります。スイッチで荷台を後方や横方向に傾け、積んだ土砂や資材を一気に排出できるため、作業効率が非常に高いです。

荷台部分は重たい資材にも耐えられるように強度の高い鉄板で造られているのが一般的で、現場での過酷な使用にも対応可能です。積み荷の排出時は、車両をしっかりと停止させた状態で荷台を傾けることが基本です。

また、荷台の傾く方向によって「リアダンプ(後方排出)」「サイドダンプ(側方排出)」などの種類に分かれており、作業環境に応じて使い分けがされています。例えば、後方にスペースがある現場ではリアダンプが、左右にしか排出スペースが取れない都市部の狭小地や仮囲い内ではサイドダンプが用いられます。

トラックとダンプの違い③積載方法

トラックとダンプでは、荷物の積載方法が大きく異なります。作業効率や必要な人手にも影響するため、積載方法の違いを把握しておきましょう。

トラックは手作業や機械を使って積み下ろし

トラックは荷台が固定されているため、積み下ろしの際には人力や重機を使って対応する必要があります。例えば、以下のような方法を取るのが一般的です。

積み込み方法の例 ・段ボールや小型の荷物:人力で積み込み
・パレット単位の荷物:フォークリフトを使用
・重量物や長尺物:クレーンやリフトなどの専用機器を使用
荷下ろし方法の例 ・手積みした荷物:手作業で丁寧に下ろす
・パレット単位の荷物:フォークリフトを用いる

このように、トラックの積み下ろしでは、手間や人手がかかる一方で、繊細な荷物を丁寧に扱える利点もあります。特に壊れやすい製品や傷つけたくない資材を運ぶ場面では、トラックを活用するメリットが発揮されます。

ダンプは重機で積み込み、荷台を傾けて一気に排出

ダンプは主に土砂や瓦礫などのバラ物を運搬する車両であり、積み込みや排出方法がトラックとは大きく異なります。

荷物を積み込む際は、油圧ショベルやホイールローダーなどの重機を使い、土砂などをすくってダンプの荷台に投入します。積み込み作業はスピーディーかつ効率的に行うことができ、短時間で大量の積載が可能です。

荷下ろしを行う際は、荷台を油圧で傾けるだけで、中身は重力によって一気に排出されます。所要時間は数秒から十数秒程度と非常に短く、作業効率に優れています。

このように、ダンプは積載から排出までの工程が迅速に完了するため、大量の資材を短時間で運び出す現場に最適な車両です。

トラックとダンプの違い④走行環境・使用環境

作業現場を走行するトラック

トラックとダンプは、走行環境や使用環境によっても以下のように特徴が異なります。

トラックは舗装路向き

トラックは、一般道や高速道路など舗装された道路での走行に特化して設計されています。走行中の安定性や燃費効率が重視されており、快適な走行を実現する工夫が随所に見られます。

例えば、サスペンションが柔らかめに調整されており、路面の凹凸を吸収して乗り心地を向上させています。また、タイヤも舗装路に適したパターンが採用されており、高速走行時のグリップ性能や静粛性にも優れています。

こうした特徴から、トラックは長距離の輸送業務にも適しており、ドライバーへの身体的な負担を軽減できるのが大きな強みです。

ダンプは悪路や現場でも走れる

ダンプは、舗装されていない道や傾斜のある坂道、ぬかるんだ地面など、過酷な走行環境でも安定して走行できるように設計された車両です。

悪路での走行を支えるために、強力なトラクション性能を持つタイヤが採用されており、滑りやすい地面でもしっかりと地面を捉えます。車体は頑丈なシャーシ構造を持ち、車高も高く設定されているため、凸凹道や障害物の多い現場でも走破性に優れています。

また、一部のモデルでは四輪駆動(4WD)や六輪駆動(6WD)といった駆動方式を採用しており、登坂力や悪路での安定性が一段と高められています。これらの駆動方式はすべてのダンプに備わっているわけではなく、特定の作業環境や用途に応じたモデルで採用されているものです。

なお、ダンプの中には、現場内などの限定されたエリアでのみ使用されるオフロードダンプやクローラーダンプも存在します。ダンプの種類について理解を深めたい場合は、以下の記事をご覧ください。

ダンプの種類とは?用途・構造・サイズ・走行環境で解説

トラックとダンプの違い⑤必要な免許や車両区分

トラックとダンプでは、必要な免許や車両区分も異なります。安全性やコンプライアンスへの配慮を行うためにも、法令に合った車両運用が欠かせません。

本章では、必要な免許や車両区分の観点からトラックとダンプの違いを解説します。

免許区分 条件 主な対象車両
普通免許 車両総重量:3.5t未満
最大積載量:2t未満
乗車定員:11人未満
小型トラック
準中型免許 車両総重量:3.5t以上、7.5t未満
最大積載量:2t以上、4.5t未満
乗車定員:11人未満
小型トラック〜中型トラック
中型免許 車両総重量:7.5t以上、11t未満
最大積載量:4.5t以上、6.5t未満
乗車定員:11人以上、30人未満
中型トラック
大型免許 車両総重量:11t以上
最大積載量:6.5t以上
乗車定員:30人以上
中型トラック〜大型トラック

免許の種類によって運転できるトラックの種類が異なるため、導入・使用予定の車両に応じて、あらかじめ取得しておくことが大切です。

なお、免許制度は法改正などにより条件が変更されることもあるため、最新の情報は運転免許センターや警察庁の公式サイトなどで確認することをおすすめします。

参考:公益社団法人全日本トラック協会「5.車種区分」

ダンプの免許区分

トラックと同様に、ダンプも車両総重量や最大積載量、乗車定員に応じて普通〜大型免許の取得が求められるのが基本です。

なお、ダンプの中でもオフロードダンプやクローラーダンプについては公道を走行できないため、上記の運転免許の取得は不要です。その代わりに、現場で作業を行う際は「車両系建設機械運転者」の資格取得が求められます。

以下の記事では、オフロードダンプや「車両系建設機械運転者」の資格について詳しく解説しています。導入を検討している場合は併せてご覧ください。

オフロードダンプとは?特徴や大きさ、運転に必要な免許を解説
建設機械・重機の免許・資格一覧!費用や日数、受験資格

ダンプカー表示番号の取得義務

公道を走る大型の普通ダンプトラック(最大積載量5t超または車両総重量8t超)には、通常のナンバープレートとは別に「ダンプカー表示番号(通称:ダンプナンバー)」の表示が義務付けられています。

このダンプカー表示番号はナンバープレートとは異なるものであり、公道を走行するためには、ナンバープレートと併せて両方を正しく取得して、車両に表示する必要があります。

なお、トラックについては、ダンプカー表示番号の制度は適用されません。

参考:国土交通省「大型ダンプ車両の届出について(ダンプ表示番号の指定)」

トラックとダンプの違い⑥価格・維持費

トラック・ダンプの購入費用

トラックとダンプでは、価格・維持費の面でも以下のように違いがあります。

車両本体価格(新品)

トラックは小型モデルであればおおよそ200万〜500万円程度と、比較的幅広い選択肢があります。これに対してダンプは、トラックと比べて油圧機構などの装備が加わる分、相場が高くなる傾向があります。小型モデルでも500万円を超えるケースもあり、中型・大型では1,000万円以上になることも珍しくありません。

維持費の違い

維持費の面でも違いが出ます。トラックは整備費や燃費の面でコストを抑えやすいです。

これに対し、ダンプは悪路や過酷な現場での使用が多いため、部品の消耗が早く、修理・交換費用が高くなりがちです。

トラックとダンプどちらを選ぶべき?判断のポイントを解説

「トラックとダンプ、どちらを選ぶべきか」という疑問の答えは、使用する目的やシーンによって大きく異なります。最適な車両を選ぶには、いくつかの判断基準を押さえておくことが大切です。

本章では、選定時に注目すべき3つのポイントを取り上げ、それぞれについて具体例を交えながらわかりやすく解説します。

使用目的で選ぶ

運搬するものによって、適した車種は以下のように異なります。

運搬するもの 適した車両 主な理由
家具・家電・製品類 トラック 梱包済みの荷物を安定して運べ、荷崩れもしにくい
パレット荷物 トラック フォークリフトでの積み下ろしに対応しやすい
土砂・砂利・瓦礫などのバラ物 ダンプ 荷台を傾けて一気に排出できるため効率的
解体現場の産業廃棄物 ダンプ 重量物や不整形な資材にも強く、過酷な環境にも対応できる

積み下ろし作業のスピードを重視するのか、それとも荷物の安全性を優先するのかによって、最適な選択肢は異なってきます。

使用期間と頻度で選ぶ

使用頻度や期間に応じて車両を選ぶことも、コストを抑えた運用には欠かせません。導入には多額の費用がかかるため、短期利用や使用頻度の低いケースではレンタルの方が合理的な場合もあります。

使用パターン 適した選択肢 理由
建設現場で1〜2ヶ月のみ使う ダンプのレンタル 高額な購入費を抑え、短期間でも即戦力として活用できる
定期配送で週5日以上稼働 トラックの購入 長期的な視点で見れば、保有した方が経済的メリットは大きい
月に数回だけ使う(季節業務など) トラックのレンタル 維持費や保険料をかけずに、必要なときだけ使用できる

特にダンプは購入価格が高く、使用目的も限られているため、スポットでの使用が中心であればレンタルを選ぶ選択肢も有効です。

使用環境・走行場所で選ぶ

使用環境や走行場所に応じて、適切な車両を選ぶことも重要です。車両の性能は、どこで使用するかによって大きく左右されるため、現場環境に合った選定が求められます。

使用環境 適した車両 理由
一般道・高速道路 トラック 安定性と燃費性能に優れ、長距離走行に適している
山間部・未舗装路 ダンプ 高いトラクション性能と頑丈な設計で、悪路でも安心して走行できる
都市部の住宅街 小型トラック 小回りが利き、狭い道や住宅街でもスムーズに運転できる

車両選びの際は、道路の幅や勾配、荷物の積み下ろしスペースの確保といった要素も含めて、現場条件に最適な一台を見極めましょう。

まとめ

トラックとダンプの違いは、見た目だけにとどまらず、構造や用途、積載方法、走行環境、必要な免許、導入コストなど、様々な要素に及びます。何を運ぶのか、どのような場所で使うのかといった目的に応じて、最適な車両を選ぶことが大切です。

トラックとダンプを選ぶ際のポイントは以下の通りです。

  • 本記事で示した選定基準をもとに適切な車両の種類を選ぶ
  • 使用頻度が少ない場合はレンタル、多い場合は購入を選ぶ

トラックとダンプにはそれぞれ強みがあるため、実際の現場環境をしっかり踏まえた上で最適な組み合わせを選びましょう。

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