タンデムローラーとは?特徴、用途、マカダムローラーとの違いと機種紹介
建設現場や舗装工事などで使用されるロードローラーは、地盤や舗装材の締固め作業に欠かせない重機です。その中でもタンデムローラーは、アスファルト舗装や道路補修など幅広い用途で使用されるロードローラーとして知られています。
しかし、タンデムローラーがどのような重機で、同じロードローラーの一種であるマカダムローラーと何が違うのかを把握していないために、導入する重機の選定や活用方法などで悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、タンデムローラーの基本的な特徴や用途、マカダムローラーとの違いについてわかりやすく解説します。タンデムローラーの代表的な機種についても紹介しているので、導入する重機を選ぶ際にお役立てください。
目次
タンデムローラーとは?
タンデムローラーとは、タンデム式ロードローラーとも呼ばれており、車体の前後に大きな鉄製のローラー(鉄輪)が1つずつ付いているロードローラーの一種です。
前後に配置された2つのローラーによって、1回の走行で路面を均一に圧縮できるため、凹凸の少ない滑らかな仕上がりが得られます。そのため、特にアスファルト舗装の表層をならし、仕上げる作業に適しています。
日本国内でタンデムローラーが初めて開発・販売されたのは1922年、三菱造船によるものでした。当時のタンデムローラーは1923年の関東大震災では道路復旧作業に使用され、その有用性が広く認識されました。
ロードローラーには、タンデムローラー以外にもさまざまな種類があります。具体的には、以下のようなものがあります。
- マカダムローラー:ローラーを3つ(前に1輪、後ろに2輪)備えている
- タイヤローラー:アスファルト舗装の仕上げに適している
- ハンドガイド式ロードローラー:狭い道路の転圧に便利
- コンバインド式ロードローラー:道路舗装の転圧から仕上げまで1台で対応できる
このようなタンデムローラー以外のロードローラーについて理解を深めたい場合は、以下の記事をご覧ください。
タンデムローラーの特徴と主な用途
ここでは、タンデムローラーの特徴や具体的な用途について順番に詳しく解説します。
タンデムローラーの特徴
タンデムローラーの主な特徴を以下にまとめました。
特徴 | 説明 |
---|---|
前後の鉄輪による均一な締固め | 車体とほぼ同じ幅のローラーが前後に1つずつ合計2つ配置されており、1回の走行で広範囲の路面を均一に締固められる。 |
振動機能(※)による効率的な締固め | 多くのタンデムローラーには振動機能が搭載されており、振動によって内部までしっかりと締固められる。 |
優れた操作性 | 車体が比較的軽量で小回りが利くため、狭い現場や曲がりくねった道路でも使いやすい。 |
※振動機能が付いていないタンデムローラーは少ないものの、住宅街での舗装工事では、騒音や振動による住民への影響を避けるために使用されることがあります。また、橋梁工事では振動が橋の構造に悪影響を与えないよう、非振動タイプが用いられます。
タンデムローラー以外にも、振動機能のあるロードローラー(振動ローラー)は数多く存在します。振動ローラーについて詳しく知りたい場合は、以下の記事をご覧ください。
振動ローラーとは?土工用、小型など種類の特徴と用途を解説
タンデムローラーの用途
タンデムローラーの基本的な用途は、下表のとおりです。
用途 | 説明 |
---|---|
アスファルト舗装工事 | 道路や駐車場など広い範囲を均一に締固められる。 |
道路補修工事 | 道路の補修・舗装を滑らかに仕上げられる。 |
橋梁や建物付近での舗装工事 | これらの振動を避けたい場所では、振動機能のないタンデムローラーが用いられる。 |
タンデムローラーとマカダムローラーの違い
タンデムローラーとマカダムローラーの主な違いは、車輪の数と車体の重さにあります。
タンデムローラーは前後に1輪ずつの計2輪で構成され、小回りがききやすく狭い場所でも操作しやすいのが特徴的です。ただし、凹凸や段差には弱い傾向があります。
一方で、マカダムローラーは前方に1輪、後方に2輪の計3つのローラーを備えており、前輪が路面の凹凸に対応しながら後輪でしっかりと転圧するため、段差や不整地でも均一な締固めが可能です。そのため、不整地や未舗装路での施工に適しています。
車体の重さについても、タンデムローラーは小回りの利く機動力が優先されており、軽量化が図られています。これとは対照的に、マカダムローラーは広い面積を均一に締固められるよう、重い車体設計となっているのも特徴です。
それぞれの特徴を理解し、施工内容や条件に応じて適切なローラーを選択しましょう。マカダムローラーについてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事もご参照ください。
マカダムローラーとは?特徴やタンデムローラーとの違い、機種紹介
タンデムローラーの免許・資格
タンデムローラーの操作・運転にあたって取得が求められる免許・資格は、以下のとおりです。
- 締固め用建設機械(ローラー)の運転の業務に係る特別教育
- 運転免許(タンデムローラーのサイズに応じたもの)
まず、「締固め用建設機械(ローラー)の運転の業務に係る特別教育」を修了すれば、タンデムローラーを操作して作業を行えるようになります。
また、運転免許を取得すれば、舗装工事現場などでタンデムローラーを移動させる際に、公道を短距離走行することが可能です。運転免許は、タンデムローラーのサイズに応じた種類のもの(大型特殊自動車免許もしくは小型特殊自動車免許)が必要です。
作業現場間を移動する際や、舗装工事現場まで公道を走行する必要がある場合は、特別教育と自動車運転免許の両方を準備しておきましょう。
なお、タンデムローラーとマカダムローラーの操作や運転に必要となる免許・資格に違いはありません。
締固め用建設機械(ローラー)の運転の業務に係る特別教育の詳細は、以下の記事で解説しています。
ローラーの運転の業務に係る特別教育とは?内容、受講方法、費用
タンデムローラーの機種
本章では、タンデムローラーの機種の一例として以下の2つのモデルをピックアップしてご紹介します。
- 酒井重工業:SW354/504
- 日立建機:ZC35T-5/ZC50T-5
それぞれの機種における製品概要や特徴を順番に詳しく解説します。
なお、現在タンデムローラーは、多くのメーカーからさまざまな機種が発売されています。本記事で取り上げていないモデルも多数存在しますので、使用目的や現場のニーズに合ったタンデムローラーを選ぶことが重要です。
酒井重工業:SW354/504
SW354およびSW504は、酒井重工業が提供するタンデムローラーの製品ラインナップです。中規模舗装工事で活躍する低燃費かつ高効率の振動機能付きタンデムローラーとして位置づけられています。
以下に、酒井重工業「SW354」「SW504」の主な特徴をまとめました。
- ECOモードによる燃費向上
- CO2排出量を35%低減
- 超低騒音基準値より5dB低減
- メンテナンス性の向上:排ガス後処理装置未搭載(SW504を除く)
- 利便性の向上
- 節水対策の可能な散水モードを標準装備
- アクセサリーソケット(12V)を標準装備
- バックブザーオフスイッチを標準装備
- 安全性の向上:ハザードスイッチを標準装備
下表に、SW354およびSW504の基本的な仕様をまとめました。
商品名称(型式) | SW354 | SW504 |
---|---|---|
運転質量 | 2,940kg | 4,090kg |
エンジン定格出力 | 18.2kW | 32.3kW |
全長 | 2,675mm | 3,100mm |
全幅 | 1,290mm | 1,390mm |
全高 | 1,575mm | 1,705mm |
締固め幅 | 1,200mm | 1,300mm |
参考:酒井重工業「製品情報|SW354/504」
酒井重工業「TW,SW354/504」
日立建機:ZC35T-5/ZC50T-5
ZC35T-5およびZC50T-5は、日立建機が提供するタンデムローラーの製品ラインナップです。
以下に、日立建機「ZC35T-5」「ZC50T-5」の主な特徴をまとめました。
- ユーザー目線での使いやすさの追求
- 2段跳ね上げ式スクレーパーを装備
- 大容量散水タンクを装備
- インパネ配置
- 凍結防止装置(オプション装備)
- 運転席フロアとシートの防振構造化
- 整備性、耐久性の向上
- 多機能液晶モニタの採用
- シートの耐久性向上
下表に、ZC35T-5およびZC50T-5の基本的な仕様をまとめました。
商品名称(型式) | ZC35T-5 | ZC50T-5 |
---|---|---|
運転質量 | 3,115kg | 4,105kg |
エンジン定格出力 | 18.2kW | 18.2kW |
全長 | 2,630mm | 3,100mm |
全幅 | 1,290mm | 1,400mm |
全高 | 1,540mm | 1,620mm |
締固め幅 | 1,200mm | 1,300mm |
参考:日立建機日本「製品情報|コンバインドタンデム振動ローラ」
日立建機「ZC-5 シリーズ|ZC35C/ZC35T/ZC50C/ZC50T」
まとめ
タンデムローラーとは、車体の前後に大きな鉄製のローラーが1つずつ付いたロードローラーの一種です。均一な転圧を得意としており、特にアスファルトの表層をならす作業に適しています。アスファルト舗装工事や道路補修工事などでの使用が主な用途です。
作業内容や現場条件に応じて、タンデムローラーとマカダムローラーをはじめとする他のロードローラーを使い分けることが重要です。それぞれのローラーの特徴や適性を理解し、適切な機材を選定することで、作業効率やコストパフォーマンスの最適化に繋がります。