重機・建機の種類 2024.08.15

リーチフォークリフトとは?種類、操作方法、免許を解説

フォークリフトは、「リーチフォークリフト」と「カウンターフォークリフト」の2種類に分類できます。このうちリーチフォークリフトは、オペレーターが立ったまま運転・操作するタイプのフォークリフトです。

本記事では、リーチフォークリフトについて、種類や操作方法、運転に求められる免許を中心に詳しく解説します。本記事を読めば、リーチフォークリフトに関する基本的な知識を習得し、安全で効率的な運用につなげられます。

リーチフォークリフトの基本から専門的な知識まで、わかりやすく説明していますので、初心者の方でも安心して読み進めてください。

リーチフォークリフトとは?

倉庫内を移動するリーチフォークリフト

リーチフォークリフトとは、オペレーターが車体右側に背中をもたれさせるように立った状態で操作を行うタイプのフォークリフトです。停止した状態でマストまたはフォークを前後に動かせます。

また、前後のタイヤ間が短く90度近くまで回るのも特徴で、小回りが利きやすいです。小さなスペースでも転回できるため、狭い場所でも活躍します。

なお、リーチフォークリフトと対をなすカウンターフォークリフトは、オペレーターが座ったまま運転・操作するタイプのフォークリフトです。後部にある鉄の重りが車体のバランスを取っています。前方のツメに重い荷物を載せても車体が前に傾かず、安定した状態で荷物の運搬が可能です。安定感があり、屋内外を問わず様々な場面で活躍します。

カウンターフォークリフトと比べた場合、リーチフォークリフトは狭い場所での作業に適しているのが特徴です。その反面、車体が小さく重心が高いため、安定感にやや欠けます。

カウンターフォークリフトについて、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ併せてご覧ください。リーチフォークリフトと並んで、よく目にするフォークリフトです。

カウンターフォークリフトとは?種類、操作方法、免許を解説

リーチフォークリフト各部の名称

下表に、リーチフォークリフト各部の名称とそれぞれの役割・特徴をまとめました。

各部の名称 役割や特徴
ヘッドガード リーチフォークリフトの屋根部分に取り付けられており、荷物が落下してしまった際にオペレーターを守る。
マスト フォークを上下させるために必要なレールとしての役目を果たすもの。
バックレスト パレットに積み重ねられた複数の荷物・袋物など、フォークの上に積載した物がマストの後方に落下することによる危険を防ぐための荷受けとしての役目を果たすもの。
バッテリー 充電することで電気エネルギーを化学エネルギーに変換して蓄え、再び電気エネルギーとして放電しフォークリフトを動かす仕組み。
ロードホイール 前方左右に付いているタイヤのこと。
フォーク 荷物を持ち上げる2本の爪部分のこと。

本項の冒頭に示した画像を参照しながら、リーチフォークリフト各部の場所を理解しておきましょう。

リーチフォークリフトの種類

リーチフォークリフトの作業風景

リーチフォークリフトの種類は、「構造・機能」によって、さらに細分化されます(リーチフォークリフトの動力は、バッテリーのみ)。

本章では、構造・機能で分けた場合のリーチフォークリフトの代表的な種類とその特徴について詳しく取り上げます。なお、ここでは、JIS規格に掲載されているものに絞ってリーチフォークリフトの種類を紹介しています。

構造・機能別

構造・機能で分けると、リーチフォークリフトには主に以下の種類が存在します。

  • プラットフォームスタッキングトラック
  • ラテラルスタッキングトラック
  • 三方向スタッキングトラック
  • オーダピッキングトラック

それぞれの種類の特徴を順番に解説します。

プラットフォームスタッキングトラック

プラットフォームスタッキングトラックは、車体から張り出したアウトリガー(フォークリフトを安定させるために、車体から地面にかけて伸ばす突っ張り棒のような装置)によって車体の安定を保ち、かつプラットフォームがアウトリガーの上に延びているタイプのリーチフォークリフトです。

さまざまな形状・サイズの荷物を載せて運搬するための広いプラットフォームを備えており、特に倉庫や物流センターなどで多く使用されています。

ラテラルスタッキングトラック

ラテラルスタッキングトラックは、車両の進行方向の両側または左右一方向に荷の積付けができるフォークリフトです。

全体的にスリムな設計がなされており、側方へ荷物を積み重ねることができるため、特に幅の狭い通路や限られたスペースでの作業に非常に有効です。

三方向スタッキングトラック

三方向スタッキングトラックは、車両の進行方向およびその左右両側に対して荷の積付けを行えるタイプのリーチフォークリフトです。

倉庫や物流センターといった比較的狭いスペースでの作業に適しています。高いマストを持ち、高所への積み上げや棚への収納が簡単に行えるので、垂直方向のスペースを有効活用できる点も特徴です。

オーダピッキングトラック

オーダーピッキングトラックは、荷役装置とともに動く運転台に位置するオペレーターによって運転・操作されるタイプのリーチフォークリフトです。

運転台が荷役装置と一緒に上下するのが大きな特徴です。主に高い場所に手作業で荷物を置いたり、取り出したりといったケースで役立ちます。

フォークリフト全般の種類については、以下の記事で詳しく解説しています。併せてお読みいただくことで、適切なフォークリフト選びにも役立ちますので、ぜひご覧ください。

フォークリフトの種類とは?構造・機能、動力、タイヤ別に解説[選び方あり]

参考:一般社団法人「日本産業車両協会 フォークリフトの種類」

リーチフォークリフトの操作方法

本章では、リーチフォークリフトの基本的な操作方法や、運転時に知っておくべきポイントについて説明します。

まず、リーチフォークリフトの操作に関わる各部名称と操作方法をまとめたので参考にしてください。

リーチフォークリフトのレバー・スイッチ各部の名称

各部名称 操作方法・ポイント
リフトレバー レバーを手前へ引くとフォークが上昇し、レバーを前方へ押すとフォークが下降する。

レバーの傾け加減に応じて反応するため、レバーの急激な操作は避けて、じんわり少しずつ倒すことが大切。

チルトレバー レバーを手前へ引くとフォークの先端が上へ傾き、レバーを前方へ押すとフォークの先端が下へ傾く。
リーチレバー レバーを手前へ引くとツメを車体側へ引き寄せ(リーチイン)、レバーを前方へ押すとツメを前に出す(リーチアウト)。

リーチアウトで荷を積載した状態での急旋回はリフトが転倒する可能性が高く非常に危険なので、荷を積載したらリーチインの状態で走行することが大切。

アクセルレバー 車両の前進・後進と速度を調節するレバーです。

ブレーキペダルを踏み込んでブレーキを解除し、前後進レバーを進行したい方向へ倒す。

レバーを前方へ押すと前進し、レバーを手前へ引くと後進する。

非常停止ボタン
(エマージェンシーストップボタン)
非常時にボタンを押すと電気回路が遮断され、すべての操作が停止します。

ボタンを時計回りに回すと元の状態に戻り、停止が解除される。

ホーンボタン ボタンを押すと警報器が鳴る。
前照灯スイッチ スイッチを入れると前照灯が点灯する。
方向指示灯スイッチ 車両の進行方向を知らせるためのスイッチ。

スイッチを右に倒すと右側の方向指示灯が、左に倒すと左側の方向指示灯が点滅します。

リーリフォークリフトのハンドル、ボディクッション、ブレーキ周り各部の名称

各部名称 操作方法・ポイント
ステアリングハンドル
ハンドルノブ
左手でハンドルノブを握り、右手はアクセルレバーに添える。
ボディクッション オペレーターの体格に応じて運転しやすい位置に調整が可能。
ブレーキペダル ブレーキペダルを踏むとブレーキが解除され走行でき、逆にブレーキペダルを放せばブレーキがかかる。
ペダル式プレゼンススイッチ 安全な乗車姿勢で走行するための装置で、運転席に正しく乗車していない場合や運転席から離れた場合に走行・荷役操作ができなくなるシステム。
キースイッチ OFF:キーの抜き差しと電源をオフにする位置。
ON :起動準備の状態で、OFFから右へ1段階回した位置。
スタート:ONからもう1段右へ回した位置で、パワーオンの状態となり起動ディスプレイが点灯する。

運転のコツ

リーチフォークリフトの運転風景

次に、リーチフォークリフトを運転する際のコツをご紹介します。

まず、リーチフォークリフトはバッテリー式なので、長持ちさせたいならばバッテリーに優しい運転を心がけましょう。つまり、バッテリーの消耗を抑える操作が大切です。なお、バッテリー液の温度はバッテリー寿命に影響を与えます。バッテリー液の温度とリフト操作には大きな関係があることを把握しておきましょう。

具体的なコツとしては、小さいハンドル回転での旋回が大切です。バッテリーへの負荷を軽減できる上に、オーバーハングによる接触事故の防止にもつながります。

リーチフォークリフトの操作を上達させるためには、荷物運搬の練習を積む必要があります。特にパレットの正面に車体を付けることは、基本中の基本となる操作です。効率的に仕事をこなすためにも、少しでも早くコツを掴みましょう。

注意点

リーチフォークリフトを操作する際、急発進や急旋回、急ブレーキなどは、非常に危険なので絶対に避けてください。

また、複数の操作を同時に行う(例:走行しながらリフトアップを行う)ことや、最大荷重の荷を持ったままでの長時間の作業なども避けましょう。そのほか、フォークの先で荷物を引き出すことも避けるべきです。

当然ながら、機械操作を行う際は、大事に扱うように心がけましょう。リーチフォークリフトを長持ちさせるためだけでなく、安全対策のためにも意識しておくことが大切です。

作業が終わったら安全な場所に停車させ、車両が完全に止まってから降りましょう。

リーチフォークリフトの免許

リーチフォークリフトの運転・操作には特別な技能が求められます。そのため、運転・操作するためには、定められた免許を取得しなければなりません。

リーチフォークリフトの免許には、大きく分けて以下の2種類が存在します。

免許の種類 取得が求められる業務内容
フォークリフト運転技能講習 最大積載荷重1t以上のリーチフォークリフトの運転
フォークリフト運転特別教育 最大積載荷重1t未満のリーチフォークリフトの運転

それぞれの資格によって、取得が求められる業務内容だけでなく、受験資格や取得方法なども異なります。

下表に、フォークリフト運転技能講習の概要をまとめました。

資格・教育の情報 内容
費用 【受講料】
11時間コース:14,000円〜23,000円前後
15時間コース:16,000円〜23,000円前後
31時間コース:33,000円〜42,000円前後
35時間コース:37,000円〜45,000円前後【テキスト代】
いずれのコースでも2,000円前後
日数 1日〜5日間前後
受講資格 【11時間コース】
以下のいずれかを満たす人
・普通自動車以上の運転免許証を有し、かつ1トン未満のフォークリフト特別教育を受け、その後3ヶ月以上の実務経験がある人
・大型特殊免許(カタピラ限定を除く)を有している人【15時間コース】
普通自動車以上の運転免許を持たず、かつ1トン未満のフォークリフト特別教育を受け、その後6ヶ月以上の実務経験がある人【31時間コース】
普通自動車以上の運転免許を有する人【35時間コース】
18歳以上で、普通自動車以上の運転免許を持たない人
申込先 都道府県労働局長登録教習機関

次に、フォークリフト運転特別教育の概要を示します。

資格・教育の情報 内容
費用 15,000円〜20,000円前後
日数 12時間(2日間)前後
受講資格 18歳以上
申込先 社内、社外の教習機関(都道府県労働局長登録教習機関など)

ちなみに、リーチフォークリフトとカウンターフォークリフトの運転・操作に必要な免許は、同じです。

リーチフォークリフトを含め、フォークリフトの操作に必要な免許について、詳しくは以下の記事で解説しています。

フォークリフト免許とは?取得方法、日数、費用、試験内容と対策を解説

まとめ

リーチフォークリフトとは、オペレーターが車体右側に背中をもたれさせるように立った状態で操作を行うタイプのフォークリフトです。停止した状態でマストまたはフォークを前後に動かせます。リーチフォークリフトはその特性から、特に高い棚や狭い通路での作業において優れた性能を発揮します。具体的には、倉庫や物流センターなどで使用されることが多いです。

リーチフォークリフトを適切に使用することで、安全に作業できるだけでなく作業効率の向上にもつながります。必要な免許を取得した上で、慎重に運転・操作しましょう。

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