モータグレーダとは?用途や構造、免許・資格を解説
モータグレーダは、道路建設や土地整備、農業分野などで使用される重機の一つです。主に地面を平らに整える作業を行い、高い精度での地形調整が可能です。舗装前の路盤工事や排水設備の基礎工事など、建設現場において重要な役割を果たします。
モータグレーダには特有の構造や用途があり、適切な機械選定と操作技術が求められます。また、操作には特定の免許や資格が必要となるため、建設業事業者の方にとっては、初めてモータグレーダを操作する際に基礎知識を押さえておくことが重要です。
本記事では、モータグレーダの基本的な構造や用途、操作に必要な免許・資格についてわかりやすく解説します。モータグレーダの特徴を理解し、効果的に活用することで、現場作業の効率化や品質向上を目指しましょう。
目次
モータグレーダとは?
モータグレーダとは、装備されたブレードを使って路面や地表を切削したり、材料を均一に敷きならしたりして成形・整正を行うホイール式の重機です。
モータグレーダの大きな特徴は、前輪と後輪の間に配置されたブレード(土工板)にあります。このブレードは、左右の昇降や傾斜、サークル旋回、横送りなど、自由自在に動かすことが可能で、ブルドーザーよりも精密な仕上げ作業に適しています。
ブルドーザーについて詳しく知りたい場合は、以下の記事をご覧ください。
また、運転席からブレードが見やすい構造になっており、オペレーターが座った姿勢や立った姿勢でも、作業の進行状況をしっかり確認できるのが利点です。
モータグレーダは、走行やステアリングの操作に加え、作業装置の微調整を行うことで高い施工品質と効率を実現します。しかし、モータグレーダの性能を十分に引き出すには、高度な運転技術が必要不可欠です。
近年では、ICTを活用した3Dマシンコントロールシステムを搭載したモデルが登場しています。このシステムは、衛星やセンサーを活用して機械の位置情報を正確に把握し、事前に設定した地形の設計データ(例えば、路盤の高さや勾配の情報)と連動させることで、作業ブレードの高さや角度を自動的に調整します。そのため、オペレーターの経験や技量にかかわらず、高精度かつ安定した施工が可能です。この技術により、初心者でも効率的に操作でき、作業の質がさらに向上しています。
モータグレーダの用途
モータグレーダは、主に以下のような作業に利用される多用途な重機です。
- 整地作業:工事現場や道路工事での路床や路盤の整地
- 仕上げ作業:広場や路面の精密な成形、法面の切り取りや仕上げ作業
- 掘削作業:L型側溝の掘削や整形
そのほか、積雪地では、追加のブレードを装備して除雪車(除雪グレーダ)として使用されます。除雪が難しい場所や、雪面を粗くしてスリップを防ぐ目的でも活躍します。
モータグレーダは、大きな車体ゆえに小規模な作業には適していませんが、大規模な土木工事で威力を発揮します。特に道路整地作業では、ロードローラーと組み合わせることで効率的に作業を進めることが可能です。
モータグレーダの構造
モータグレーダは、大まかに以下の3つで構成されています。
- アーティキュレート
- リーニング
- ブレード
それぞれの構造について順番に詳しく解説します。
アーティキュレート
モータグレーダは、1軸の前輪で操舵し、2軸の後輪で駆動する仕組みです。エンジンや運転席は、後輪側のフレームに配置されています。運転席の下付近には、車体を中央で折り曲げることができる「アーティキュレート機構」が備わっています。この機構は、車体の前部と後部を独立して動かすことを可能にし、狭い場所での小回りや複雑な作業での精密な操作を実現します。細長いフレームと前輪によるステアリングシステムと相まって、高度な旋回性能を発揮します。
アーティキュレート機構とステアリングの併用により、モータグレーダは小回りの利く動きができ、狭い場所でも旋回が容易です。また、車体を逆位相に操作することで、前後をオフセットさせることも可能です。この機能により、道路端の土砂のすき取りや法面の作業といった細かな作業にも対応できます。
リーニング
モータグレーダの前輪には、左右斜めに傾けられる「リーニング機構」(上記画像ご参照)が備えられています。
切削作業中、ブレードは推進方向に対して45度〜60度の角度で配置されます。この配置により、ブレードが地面にかかる圧力の一部が横方向に伝わるため、前輪には横方向の力が加わります。この結果、車両全体が横滑りしやすくなるのです。しかし、モータグレーダには前輪を左右に傾ける「リーニング機構」が搭載されており、この傾きによって横方向の力を相殺し、車両の直進性を保つことができます。この仕組みにより、切削作業を正確に進めることが可能です。
ブレード
モータグレーダの本体は4輪2軸で構成され、エンジンや操作キャビン、タイヤなどの主要な機能が搭載されています。本体の前方には長いアームが取り付けられており、このアームを動かすことでブレードの位置や角度を自在に調整できるため、整地や除雪作業の中心的な役割を果たします。
アームの下部、タイヤとタイヤの間に、ブレードが吊り下げられています。ブレードは、余分な土や雪を路肩に押しのけられるよう、斜めに取り付けられています。
アームを操作することでブレードを上下に調整でき、土や雪を効率的に片側に寄せる作業が可能です。
モータグレーダの免許・資格
モータグレーダの操作・運転にあたって取得が求められる免許・資格は、以下の2つが基本です。
- 車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転技能講習
- 大型特殊自動車免許
それぞれの資格について順番に詳しく解説しますので、モータグレーダの導入前に確認しておきましょう。
車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転技能講習
モータグレーダを操作するために求められる資格は、機体重量によって以下の2種類に分かれます。
機体重量 | 資格の名称 |
---|---|
3t以上 | 車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転技能講習 |
3t未満 | 小型車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)の運転の業務に係る特別教育 |
業務でモータグレーダを操作する場合、私有地で行う場合であっても上記の資格取得が求められます。
以下に、「車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転技能講習」の概要をまとめました。
資格の情報 | 内容 |
---|---|
費用 | 50,000円〜110,000円前後 |
日数 | 14時間〜38時間(2日〜6日間)前後 |
受講資格 | 18歳以上 |
申込先 | 都道府県労働局長登録教習機関 |
続いて、「小型車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)の運転の業務に係る特別教育」の概要は以下のとおりです。
資格の情報 | 内容 |
---|---|
費用 | 20,000円前後 |
日数 | 13時間(2日間)前後 |
受講資格 | 18歳以上 |
申込先 | 社内、社外の教習機関(都道府県労働局長登録教習機関など) |
大型特殊自動車免許
モータグレーダを移動(公道で走行)させるためには、道路交通法にもとづく以下の免許の取得が必要です。
- 大型特殊自動車免許:大型特殊自動車を公道で走行させるために必要
- 小型特殊自動車免許:小型特殊自動車を公道で走行させるために必要
基本的にモータグレーダは大型特殊自動車に該当するため、ここでは大型特殊自動車免許について取り上げます。以下に、大型特殊自動車免許試験の概要をまとめました。
免許の情報 | 内容 |
---|---|
費用 | 教習所での取得:70,000~130,000円前後 一発試験での取得:6,000円前後 |
日数 | 1日〜17日間程度 |
受講資格 | ・18歳以上 ・視力:両眼0.7以上、片眼0.3以上(片眼の視力が0.3に満たない場合は、他眼の視野が150度以上 ※眼鏡・コンタクト可) ・赤、青、黄の色彩の識別ができる ・10mの距離で90dBの警報器の音が聞こえる(補聴器で補われた聴力も含む) ・自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある四肢もしくは体幹の障害がない |
申込先 | 大型特殊自動車免許を取得可能な自動車教習所 |
モータグレーダをはじめとする建設機械・重機の免許・資格について、詳しくは以下の記事で解説していますので、併せてご覧ください。
参考:警視庁「大型特殊免許試験(直接試験場で受験される方)」
まとめ
モータグレーダは、道路建設、土地整備、農業など幅広い分野で活躍する重機です。舗装前の路盤工事や排水設備の基礎作業といった建設現場において特に重要な役割を担っています。
モータグレーダの活用によって高度かつ効率的な作業が可能となる一方で、操作には一定の技術・知識が求められます。導入前には現場のニーズを把握したうえで、適切な機種を選ぶことが大切です。また、操作資格を取得したオペレーターを確保することで、作業の安全性と効率性を向上させることが可能です。
モータグレーダの導入と活用を通じて、現場運営の最適化を目指していきましょう。