最大積載量とは?計算方法・車両総重量との違いを解説
建設現場で重機やトラックを導入する際、「最大積載量」という言葉を目にすることが多いでしょう。安全かつ効率的な作業を行うためには、最大積載量について正しく理解しておくことが非常に重要です。
なぜなら、各車両の最大積載量を超えて荷物を積んでしまうと、法律違反になるだけでなく、車両の破損や事故のリスクが高まり、現場の安全性と信頼性に大きく影響するためです。
本記事では、最大積載量の意味や計算方法、車両総重量との違いといった基本知識をわかりやすく解説します。建設業事業者の方が最適な貨物車両や重機を選定し、安全かつ効率的に現場を運営するための判断材料として、ぜひお役立てください。
目次
最大積載量とは?
最大積載量とは、トラックやダンプ、不整地運搬車などの車両が一度に安全に積載できる荷物の重量上限を指し、道路運送車両法に基づいて定められています。この数値は自動車検査証(車検証)に記載されており、安全かつ適正に車両を運用するための重要な基準となります。
最大積載量を超えて荷物を積んだ場合は「過積載」となり、道路交通法や貨物自動車運送事業法に違反する行為として厳しい罰則の対象となります。
特に建設業や運送業では、最大積載量を守ることが法令の順守や安全管理の基本です。以上のことから、最大積載量は、事故防止や業務の信頼性確保にもつながる非常に重要な指標と言えるでしょう。
最大積載量の確認方法
最大積載量は、車検証から容易に確認できます(電子化されている車検証を含む)。車検証には、以下のような情報が記載されています。
- 車両重量
- 車両総重量
- 最大積載量
これらの数値は、車検証の「仕様欄」や「備考欄」などに記載されており、荷物の積載計画や運行管理を行う上で欠かせない情報です。
なお、不整地運搬車やキャリアダンプなどは自家用登録されていることもあり、その場合は車検証に最大積載量が明記されていないケースもあります。その際は、車両の仕様書やメーカーが提供している資料を参照して確認する必要があります。
不整地運搬車およびキャリアダンプについて、詳しくは以下の記事で解説しています。これから導入を検討している場合、適切な運用を図りたい場合にはぜひ併せてご覧ください。
不整地運搬車とは?種類や用途、運転に必要な資格を解説
キャリアダンプとは?種類・用途・運転に必要な資格を解説
最大積載量の計算方法
最大積載量は、以下の計算式で求められます。
- 最大積載量=車両総重量 −(車両重量+乗員重量)
この計算式は、普通車両や一般的なトラックで広く使われている基本的な考え方です。ただし、特殊車両や構造変更車両など、一部のケースでは個別の審査や条件が加わる場合もあるため、詳細は車検証の記載やメーカーの資料をご確認ください。
それぞれの用語の意味は以下のとおりです。
用語 | 意味 |
---|---|
車両総重量 | 車両本体に乗員と最大荷物を積載した状態での合計重量 |
車両重量 | キャブ、シャシ、架装などを備えた、その車両がすぐに走行できる状態での重さ ※燃料・エンジンオイル・冷却水などの必要な液体類が規定量まで入っており、標準仕様の荷台も含まれた重量です。 一般的には、運転者や乗員、荷物のほか、工具やスペアタイヤなどの重量は含まれません。 (ただし、車検証に記載される車両重量には、工具やスペアタイヤなどの重量が含まれる場合があります)※メーカーのカタログに記載されている車両重量と、実際に荷台をカスタマイズしたり、クレーンなどの荷役装置を取り付けたりした車両の重量とは異なる場合があります。実車の重量が想定より増加しているにもかかわらず、そのまま積載を続けると、知らず知らずのうちに最大積載量を超えてしまい、過積載となるリスクがあります。そのため、実際の車両仕様を把握した上で、正確な積載計画を立てることが重要です。 |
乗員重量 | 1人あたり55kgとみなして計算するのが一般的(人数分を合算) |
例えば、車両総重量が5,000kg、車両重量が3,000kg、乗員が2名(110kg)とした場合の最大積載量は、以下のとおり求められます。
- 5,000kg−(3,000kg+110kg)=最大積載量1,890kg
上記で用いた数値はあくまでも一例であり、実際の数値は車種や仕様によって異なります。詳細は車検証やメーカーの資料をご確認ください。
最大積載量と車両総重量の違い
「最大積載量」と混同されがちな用語に「車両総重量」がありますが、両者には以下のように明確な違いがあります。
用語 | 意味 |
---|---|
車両総重量 | 車両本体・乗員・積載物すべてを含んだ、走行時の総重量 |
最大積載量 | 積載できる「荷物のみ」の重さの上限 |
つまり、車両総重量は車両全体でフル積載したときの重量であり、最大積載量はそのうち「荷物のみ」に許された重量を指します。
いずれも法令で上限が定められており、これを超えると道路交通法などの法律に違反する可能性があります。現場での誤った運用を防ぐためにも、この2つの違いを正しく理解しておくことが非常に重要です。
参考:公益社団法人 全日本トラック協会「8.車両総重量と積載量」
最大積載量と講習・資格の関係
不整地運搬車やキャリアダンプなどの特殊車両を業務で運転する場合、所定の講習を受講・修了してから、資格を取得する必要があります。一般的には、次のように最大積載量が1tを超えるかどうかが受講区分の目安となっています。
最大積載量 | 必要な講習 |
---|---|
1t未満 | 不整地運搬車運転特別教育 |
1t以上 | 不整地運搬車運転技能講習 |
そのため、現場に導入する車両の最大積載量を確認しておかないと、誤った資格での作業につながるリスクがあります。
不整地運搬車運転技能講習の詳細は、以下の記事にまとめています。不整地運搬車やキャリアダンプの導入を検討している際には、資格の取得も踏まえて、ぜひ併せてご覧ください。
不整地運搬車運転技能講習とは?料金や講習内容、免除学科・実技を解説
最大積載量が決まっている理由|過積載のリスクと罰則
最大積載量は、車両の安全な運行や道路インフラの保護などを目的として、法律により明確に定められています。
この基準を超えて荷物を積載すると、車両の操作性が低下し、ブレーキ性能や安定性に支障をきたすおそれがあります。また、道路や橋梁といった公共インフラにも過度な負担をかけて損傷や劣化を招く要因となるため、厳守が求められます。
なぜ決まっているのか?
道路や橋梁は、通行する車両の重量をあらかじめ想定して設計・施工されています。しかし、過積載の車両が走行すると、設計上の限界を超える荷重が加わり、以下のような問題を引き起こすおそれがあります。
問題 | 詳細 |
---|---|
道路や橋の損傷・劣化 | 過剰な荷重により舗装がひび割れる、路面が沈下する、橋がたわむ、ジョイント部が破損するなどの不具合が生じ、構造物の寿命が大幅に縮まります。 |
荷崩れや積載物の落下 | 荷台が不安定になり、走行中に荷物が落下するリスクが高まります。これが原因で後続車との事故につながる危険性もあります。 |
国土交通省の調査によると、過積載の大型車両は通行車両全体のわずか0.3%にすぎませんが、道路橋の劣化に与える影響の約90%を占めていると報告されています。これは、過積載によって一台ごとの車両重量が大きく増加し、道路や橋にかかる負荷が設計想定を大きく上回るためです。特に橋梁部では、繰り返される過大荷重が構造部材に深刻な疲労を与え、寿命を著しく縮める要因となります。それだけに、過積載がインフラに与える影響は深刻であると言えます。
なぜ危険なのか?
過積載はインフラへの影響だけでなく、車両の挙動にも大きな負担をかけるため、運転者自身や周囲の安全に以下のような深刻なリスクをもたらします。
リスク | 詳細 |
---|---|
制動力の低下 | 車両が本来の想定より重くなることで、ブレーキの効きが悪くなり、停止するまでの距離(制動距離)が延びます。その結果、追突事故の危険性が高まります。 |
横転や車線逸脱 | 荷重の偏りや重心の高さにより、カーブ・交差点・坂道などで車体が不安定になり、横転や車線逸脱につながるおそれがあります。 |
衝突時の被害拡大 | 車両重量が増すことで衝突時に発生する衝撃エネルギーが大きくなり、相手車両や歩行者への被害がより深刻になります。 |
このように、過積載は重大事故のリスクを高める危険な行為であり、安全運転の観点からも絶対に避けるべきです。
過積載に対する罰則(大型車の例)
過積載は、道路交通法や貨物自動車運送事業法などに違反する行為です。違反の程度に応じて、運転者には以下のような罰則が科せられます(大型車の場合)。
過積載の割合 | 違反点数 | 反則金・罰則 |
---|---|---|
5割未満 | 2点 | 30,000円 |
5割以上〜10割未満 | 3点 | 40,000円 |
10割以上 | 6点 | 反則金なし(※) 6か月以下の懲役または10万円以下の罰金 |
※反則金は比較的軽微な交通違反である反則行為に科されるもので、罰金は比較的重大な交通違反に対して科されるもの。
なお、過積載の責任は、ドライバー個人のみにとどまりません。運送会社や荷主にも監督責任があり、状況によっては指導・監査、営業停止命令などの行政処分が科される可能性があります。
最大積載量を守ることは、事故を未然に防ぐための基本的な安全ルールを遵守することであり、同時に道路や橋梁といった社会インフラを守るという公共的な責任でもあります。
たとえ少量の超過であっても、それが重大な事故や損害につながる可能性があることを、すべての関係者が十分に認識しておく必要があります。
よくある誤解と注意点(FAQ形式)
最後に、最大積載量に関して多くの方が誤解しやすいポイントを、Q&A形式でわかりやすくご紹介します。
Q1. 荷台にスペースが空いていれば積んでも大丈夫?
A. いいえ。
荷台にスペースが残っていても、最大積載量を超えれば過積載となり、法律違反になります。荷物の「体積」と「重量」は別の問題であるため、空間に余裕があっても安全とは限りません。
Q2. タイヤの種類や空気圧で積載量は変わるの?
A. はい、実質的な積載能力に影響します。
タイヤにはそれぞれ耐荷重の上限があり、空気圧が不足していると性能が十分に発揮されません。たとえ最大積載量内であっても、タイヤの性能を超えた使用は走行中のバーストや事故の原因となります。
Q3. 荷台を改造したら積載量はどうなる?
A. 改造内容によっては変わります。
荷台や車体の構造を変更すると、重量や重心に影響が出るため、積載量の再計算や構造変更の届出が必要になる場合があります。届出がなく改造したまま運行すると、違法改造車両として処罰の対象となる可能性もあるため注意が必要です。
Q4. 積載物の重心バランスはどれくらい重要?
A. 非常に重要です。
荷物の重心が偏っていると、カーブや坂道でバランスを崩しやすくなり、横転や荷崩れ、落下事故を引き起こすリスクが高まります。積載時には、バランス良く荷物を配置することが基本です。
まとめ
最大積載量は、車両に積載できる荷物の重さの上限を示す、非常に重要な指標です。車検証や車両の仕様書を確認し、車両総重量や車両重量と正しく区別することで、法令に沿った安全な運行管理が可能になります。
また、最大積載量は運転資格の区分にも大きく関わっており、講習の受講要件や車両の選定判断にも直結します。そのため、使用する現場や目的に応じて、最大積載量に関する正確な知識を身につけておくことが大切です。
なお、最大積載量を超える「過積載」は重大な法令違反にあたります。具体的には以下のような行政処分や罰則の対象となります。
- 荷主や運転者に対する罰金や違反点数の付加
- 運送事業者への運行停止命令
- 企業に対する行政指導や営業停止命令
過積載は単に安全性を損なうだけでなく、企業の信用や事業継続にまで深刻な影響を与える行為です。関係するすべての人がその危険性を理解し、法令を守った責任ある運行を徹底することが求められます。
なお、ARAVは、2025年6月18日(水)〜21日(土)に幕張メッセで開催される「第7回 国際 建設・測量展(CSPI-EXPO2025)」に出展いたします。
会場では、自動(無人)油圧ショベル RX「ヨイショ投入くん」の実機を披露予定です。「ヨイショ投入くん」は、建設現場の掘削・投入工程を自動化し、生産性と安全性の向上を実現するシステムで、電子制御式油圧ショベルに後付けするだけで無人稼働が可能になります。ARAVブース(屋内:小間番号07-49)にぜひお立ち寄りください。