重機・建機の種類 2024.09.27

ローディングショベルとは?特徴やバックホウとの違いを解説

ローディングショベルは、油圧ショベルの一種であり、アームの先にバケット(ショベル)を前向きに取り付けた建設機械(重機)のことです。主に建設工事や鉱山などで土砂・岩石の積み込みや運搬に使用され、強力なパワーと操作性から多くの現場で重宝されています。

本記事では、ローディングショベルの基本的な特徴やバックホウとの違いについて詳しく解説します。初めてローディングショベルに触れる方にも分かりやすく説明しますので、ぜひ参考にしてください。

ローディングショベルとは?

作業するローディングショベル

ローディングショベル(英語:Loading Excavator)とは、油圧ショベルの一種で、アームの先に前向きにバケットを取り付けた重機です。大きな特徴として、地表面よりも高い部分の採掘を得意としている点が挙げられます。

その一方で、「バケット容量が大きいものの、採掘できる範囲が狭い」という欠点も持っています。このことから、住宅街の狭い建設現場ではほとんど使われず、鉱山など広大な現場で活躍している重機です。

ローディングショベルを活用する際、高くすくい上げた土砂・岩石をダンプトラックに積み込むことが多く見られます。そのため、基本的には、バケット底部をゲート状にして、土砂・岩石の排出を容易にする構造が用いられているのが特徴です。

ローディングショベルのキャブ(建設機械を操作するオペレーターが乗車する部分のこと)は、大型ダンプトラックのベッセル(荷台)が見渡せるように、目線の高さ(アイレベル)が高くなっているのが特徴です。また、前方に傾斜している前窓タイプのローディングショベルは、下方の視界に強いです。

ローディングショベルとバックホウの違い

バックホウとローディングショベルは、ともに油圧ショベルに分類される点で共通しています。しかし、その他の特徴は大きく異なるので、ここで両者の違いを把握しておきましょう。

バックホウとは、油圧ショベルの中でも、先端に取り付けるバケットが運転手の方を向いているタイプの重機です。油圧ショベルの中で最も一般的な種類です。

バックホウの場合、クローラの足元近くまで深い掘削を行えます。これに対して、ローディングショベルの場合、掘削作業に関しては、地表上もしくは浅い場所から上に持ち上げる能力が高いのが特徴です。

また、バックホウとローディングショベルでは、フロント部の油圧シリンダにも違いが見られます。両者ともに「ブームからアームの部分」「アームからバケットの部分」の2カ所に油圧シリンダがありますが、バックホウでは上側に配置されているのに対して、ローディングショベルでは下側に配置されています。これは、押し出す力が強い油圧シリンダの特徴を応用するためです。

ちなみに、中型・小型の油圧ショベルの中には、ローディングショベル仕様とバックホウ仕様に付け替えできる機種も存在します。

これらの違いがあるバックホウについて、以下の記事で解説しておりますので、ローディングショベルに加えて理解を深めましょう。
バックホウとは?特徴やショベルカーとの違い、資格を解説

ローディングショベルおよびバックホウが分類される「油圧ショベル」について詳しく知りたい場合は、以下の記事で解説していますので、併せてご覧ください。
油圧ショベルとは?特徴や種類、アタッチメント、免許を解説

ローディングショベルの機種

砕石を運ぶローディングショベル

本章では、各メーカーから発売されているローディングショベルの代表的な機種として以下の4つをピックアップし、概要や特徴を順番に解説します。

  • 日立建機「EX1200」
  • 日立建機「EX8000」
  • コマツ「PC8000」
  • CAT「6030」

それぞれの特徴を把握しておき、現場に適したローディングショベルを選ぶ際にお役立てください。

日立建機「EX1200」

日立建機の「EX1200」は、大型のローディングショベルで、強力なエンジンと高い掘削能力を備えています。特に重作業において優れたパフォーマンスを発揮するため、大規模なプロジェクトに最適です。

2019年4月には、「EX1200-7」が発売されています。「EX1200-7」では、従来機と比較して作業量の増加や省燃費・操作性・整備性の向上、居住性の改善などに加えて、仕向地別の排ガス規制に応じたエンジンが選択できるようになっています。その結果、耐久性・信頼性が高まった「EX1200-7」は、鉱山・砕石現場や大型土木工事現場で真価を発揮します。

以下に、日立建機製のローディングショベル「EX1200-7」の概要をまとめました。

  • 型式 : EX1200-7
  • エンジン定格出力 : 567 kW (770 PS)
  • 運転質量 : 117,000kg
  • バケット容量 : 新JIS : 5.9–6.5㎥

日立建機製のローディングショベル「EX1200-7」の主な特徴は、下表のとおりです。

主な特徴 補足
省燃費化 ・バケット容量増加による作業量の増加
・放熱器サイズアップによるファン回転数低減
・油圧制御の最適化
操作性の改善 ・バケット再生回路追加
・フロント流量制御弁の最適化
・走行ステアリング時の自動シフトダウンの採用
整備性の向上 ・各フィルタのアクセス性最適化
・冷却ファン油圧駆動化によるラジエータファンベルト交換作業の廃止
・冷却ファン逆回転機能による放熱器コア清掃の自動化
・電子制御増加に伴い、電子部品の整備効率化のため整備中のエンジン誤始動を防止するスタータディスコネクトスイッチの追加
・オイルパン増量によるエンジンオイル更油間隔延長
・バックホウバケット自動給脂追加
居住性の改善 ・エアリアルアングル追加
・ロールカーテン追加
・「ZAXIS-6シリーズ」のキャブインテリア採用
仕向地別の排ガス規制対応 ・「北米EPA(Environmental Protection Agency:環境保護庁)排ガス4次規制適合エンジン」と「規制対象外の地域向け省燃費仕様エンジン」を選択可能

参考:日立建機「EX1200」
日立建機「日立評論 建設機械プロダクト 1. EX1200-7油圧ショベル」

日立建機「EX8000」

「EX8000」は日立建機が製造する鉱山掘削機で、ラテンアメリカで販売されています。現行モデルの「EX8000-7」は、日立建機のラインナップの中で最大の掘削機​​です。

高度な燃料最適化技術と簡単なメンテナンスおよび操作によるコスト削減や、最先端の安全機能による従業員の保護などを追求している点に特徴があります。

以下に、日立建機製のローディングショベル「EX8000-7」の概要をまとめました。

  • 型式 : EX8000-7
  • エンジン定格出力 : 1450kW(1971PS、1944HP)
  • 運転質量 : 827,000kg
  • バケット容量 : 40.0-45.0m³

日立建機製のローディングショベル「EX8000-7」の主な特徴は、下表のとおりです。

主な特徴 補足
高度な油圧 フロー再生バルブにより、油圧システムとエンジンの電力要件が軽減されることで燃料消費量を削減でき、ポンプの寿命が延びている。
シンプルな操作性 多機能ディスプレイには、主要なマシン情報とパフォーマンス指標が表示される。

統合された電子ジョイスティックにより、正確かつほとんど手間をかけず容易に操作できる。

耐久性 高度なコンピュータモデリングと特別に設計されたトラックシューにより、耐久性が最大限に向上。
メンテナンスの容易性 集中潤滑システムにより、地上から潤滑剤・水・グリース・燃料の補充と排出が可能。

スイングサークルカバーにより潤滑配管が保護される。

快適なキャビン 電子ジョイスティック、多機能ディスプレイ、先進のエアサスペンションシート、気候制御システムにより疲労が軽減される。
安全性を高める設計 広々とした通路と手すり、エンジンとバッテリーを個別に停止できるデュアルアイソレータスイッチが標準装備されている。

脱出シュートにより安全かつ迅速に脱出可能なほか、搭載された傾斜計によりオペレーターが安全に作業できる。

参考:日立建機「EX8000-7, FCO」
日立建機「EX-7 series EX8000」

コマツ「PC8000」

「PC8000」は、従来のコマツにおける最大のローディングショベルです(2017年4月時点)。現行モデルである「PC8000-11」は、コマツの製品群の中で最もパワフルな油圧ショベルとして位置付けられています。

ちなみに、「PC」という記号は、コマツのクローラー式の油圧ショベルに付けられているものです。油圧ショベル全般を意味する「P」は過去にこの重機が「パワーショベル」と呼ばれていたことに由来しており、「C」は「クローラー(Crawler)」の頭文字です。

タイヤ式の油圧ショベルの場合は、「ホイール(Wheel)」の頭文字から「PW」という記号が使用されています。「PC」の後に続く数字は機械の重さに関係しており、機械が大きくなるにつれて数字も大きくなります。最小のものはPC01(重さ300kg)で、最大のものがPC8000(720t)です。

以下に、コマツ製のローディングショベル「PC8000-11」の概要をまとめました。

  • 型式 : PC8000-11
  • エンジン定格出力 :1,448.93kW(電動駆動)
  • 運転質量 : 752,000-773,000kg
  • バケット容量 : 42m³

コマツ製のローディングショベル「PC8000-11」の主な特徴は、下表のとおりです。

主な特徴 補足
オペレーターと作業現場の保護 オペレーターに360度の視界を提供するLEDスクリーンが装備されているほか、滑り止め格子・革新的な緊急脱出システムを備えている。
カスタマイズ性 必要なバケットサイズに合わせてマシンをカスタマイズできるほか、暖房/冷房システムやトラックパッドのバリエーションなどを柔軟に選択することも可能。
持続可能で強力なエンジン 優れた持続性を備え、十分なパワーを発揮するエンジンを搭載。

後処理システムにより、粒子状物質・硫黄酸化物などが削減され、排出コンポーネントのメンテナンスも容易。

参考:小松製作所「PC8000-11」
小松製作所「コマツは何をつくっている会社?」

CAT「6030」

「6030」は、CAT(キャタピラー社)が手がけるローディングショベルです。クラス最高のパワフルなエンジン出力を誇るほか、300t級の重機に必要な機動性・柔軟性も備わっており、優れた生産性・信頼性を提供しています。

以下に、CAT製のローディングショベル「6030」の概要をまとめました。

  • 型式 : 6030
  • エンジン定格出力 : 1,230kW
  • 運転質量 : 294,000kg
  • バケット容量 :16.5m³

CAT製のローディングショベル「6030」の主な特徴は、下表のとおりです。

主な特徴 補足
安全性 緊急時に電気系統をシャットダウンするための緊急シャットオフスイッチが5つ用意されており、うち1つはキャブ内の容易にアクセス可能な場所に配置されている。
信頼性・耐久性 カーボディとクローラフレームが「CAT® HD」の足回りに統合されたことで、耐用年数の延長・耐久性の向上につながり、所有コストとオペレーティングコストが低減される。
生産性・性能 耐久性の高い「CAT C27エンジン」は、優れた性能・高い出力・定評ある信頼性を特徴としており、世界全体の採掘現場で見られる過酷な条件における耐性が実証されている。

ローディングショベルをはじめとする重機を開発・製造するメーカーについて理解を深めたい場合は、以下の記事をご覧ください。

重機メーカーの一覧【国内、海外別に30社】

参考:Caterpillar Inc「採掘用油圧ショベル 6030」

まとめ

ローディングショベルは、油圧ショベルの一種で、アームの先にバケットを前向きに取り付けた重機です。ローディングショベルの大きな特徴として、地表面よりも高い部分の採掘を得意としている点が挙げられます。

これに対して、バックホウはバケットが運転手の方を向いており、この点でローディングショベルと見分けることが可能です。

ローディングショベルに関する基本的な情報や特徴をしっかりと把握しておき、最適な機械選びと安全な作業を心掛けましょう。

おすすめの記事

関連記事 Related Articles