重機のクローラーとは?移動を支える構造やキャタピラーとの違い
クローラーは、バックホウ・ブルドーザー・ローダーをはじめ、さまざまな重機の支持・走行のための「脚」として広く採用されています。クローラーの採用によって接地面積を増やし、浮力を向上させることで、舗装されていない不整地でも、重機がスムーズに走行できるようになります。
本記事では、重機のクローラーとは具体的にどのようなものなのか、分かりやすく解説します。クローラーの移動を支える構造やキャタピラーとの違い、サイズのチェック方法についても紹介していますので、クローラーの基礎知識を身につける手助けとなれば幸いです。
目次
重機のクローラーとは?
クローラーとは、重機が不整地を走行し、作業するうえで欠かすことのできないメカニズムです。「履帯」「無限軌道」「トラックベルト」などとも呼ばれており、自動車でいうところの車輪に当たる部分です。
クローラーが発明されたのは1801年のイギリスです。その後、1904年にはアメリカの企業で農耕用トラクタの走行装置として用いられたことで、初めて商品化されました。
なお、クローラーが用いられる重機に関して理解を深めたい方は、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
接地圧について
軟弱地やスラブ(鉄筋コンクリートで作られた床)といった構造の地面に重機を入れる場合、たびたび接地圧の問題が指摘されます。
接地圧とは、接地面に作用する単位面積当たりの荷重のことです。一般的に、1c㎡あたりの重量(kg)で表されます。
一般的に重機の接地圧が小さいほど、軟弱地やスラブなどでの沈下が少なくなり、作業が容易になります。
クローラーを使用することで、ホイールと比較して重機の接地圧が小さくなります。クローラーはホイールに比べて広い接地面積を持ちます。接地面積が広くなることで、重機の重量がより大きな範囲に分散され、接地圧が小さくなるのです。
このように、地盤が不安定な場所でも安定した作業が可能な点がクローラーの大きなメリットです。
クローラーの構造
クローラーのベルトは、連結部分(リンク)に複数の履板「シュー」を取り付け、円筒状のブッシュを通したピンで連結し、輪状にすることで作られています。
上記を踏まえて、ここからは、クローラーの代表的な構成物である以下の3つについて紹介します。
- シュー
- スプロケット
- アイドラ
それぞれの構成物について順番に解説しますので、クローラーの構造を理解するうえでお役立てください。
シュー
シューとは、重機が地面に接する部分のことです。「シュープレート」と呼ばれることも多いです。
シューとシューはピンで結合されていますが、密着しているわけではないので、一つひとつに可動性があります。この可動性が、地盤の不安定な場所での走行性を向上させる働きをしています。
また、荷重時の反力(荷重に耐えるために支点にかかる力)を受ける役割も担っています。これにより、重機は安定して地面に接地し、移動時・作業時にバランスを保つことが可能です。
なお、鉄クローラー(詳細は後述します)の場合、路面保護とシューそのものの耐摩耗を目的に、最近ではゴムパットを装着して使用するケースが多くなっています。
スプロケット
スプロケットとは、重機のエンジン(走行モーター)からの動力をクローラーに伝える歯車のことです。スプロケットの働きによってクローラーが回転し、重機が移動できるようになります。
スプロケットは、以下の要素から構成されています。
- 歯車: クローラーのリンクと噛み合うための歯が付いている
- シャフト: スプロケットを支える軸で、エンジンからの動力を受け取る
- ハブ: スプロケットの中心部で、シャフトに固定される部分
スプロケットは、重い荷重や激しい動きにも耐えられるように設計されています。主に鋼鉄や高強度合金で作られることが多く、耐久性が高いのが特徴です。
アイドラ
アイドラとは、クローラーのベルトの張りを調整し、適切なテンションを維持することで、クローラーのスムーズな回転をサポートするものです。また、真っ直ぐに走らせるガイドとしての役割を担っており、重機の脱線や不適切な動きの防止にもつながります。
別名、「誘導輪」とも呼ばれています。
クローラーとキャタピラーの違い
クローラーとキャタピラーに構造上の違いはなく、同じ意味を持つ言葉として捉えて問題ありません。
キャタピラーは、米国キャタピラー社(Caterpillar Inc)の登録商標であり、他社による使用が不可能な呼び方です。英語で「芋虫」や「毛虫」を意味します。これに対して、クローラは一般的な呼称であり、いかなる会社でも使用できます。
つまり、「キャタピラーは、キャタピラー社製のクローラーである」という関係性にあります。これは、フランスのユンボ社(旧:SICAM社)製の油圧ショベルが「ユンボ」と呼ばれていることと似ています。
油圧ショベルは、クローラーを使用する代表的な重機となります。以下の記事で、呼び方の違いだけではなく、重機としての特徴や使用するアタッチメントなど様々な観点から解説していますので、ぜひご一読ください。
クローラーの種類
クローラーには、主に以下の2種類があります。
- ゴムクローラー
- 鉄クローラー
それぞれに見られる特徴を順番に解説します。
ゴムクローラー
クローラーの中でも、ゴム製のものを指します。ゴム製のクローラーは、路面保護や走行時の騒音軽減、振動軽減効果があり、オペレーターの疲労軽減や重機への損傷軽減にも寄与します。アスファルトやコンクリート上での作業に適しています。
鉄クローラー
クローラーのうち、鉄製のものが該当します。鉄クローラーは、主として走破性や耐久性が優れているのが特徴です。
重機が大きくなればなるほど、クローラーへの負荷は大きくなるのが一般的です。また、大きな重機を必要とする現場では、岩や鉄などが落ちている悪条件のもとで作業を遂行しなければならないケースも珍しくありません。
こうした状況では、ゴムクローラーを超えた耐久性を持つ、鉄クローラーが採用されることが多いです。
クローラーのサイズ確認方法
ここでは、ゴムクローラーを例に挙げて、サイズの確認方法を簡単に解説します。
はじめに、クローラーにある打刻を見て、装着サイズをチェックしましょう。基本的には、ゴムクローラーの内側に、サイズ表示の刻印があります。「幅×ピッチ×リンク」もしくは「幅×リンク×ピッチ」 の刻印で表示されているのが一般的です(メーカーやサイズにより、表示方法や桁が異なることもあります)。
なお、メーカーやサイズによっては打刻がない場合や、使用状況・経年によって打刻が消えている場合もあります。その場合は、実測で計測しましょう。
まずは、ゴムクローラーの全幅を測定します。次に、ゴムクローラーの内側を見て、芯金(受金)1周分を数えましょう。これで、リンク数が分かります。
最後に、芯金の中心から隣の芯金の中心までの距離を測ります。これにより、ピッチ(間隔)が分かります。
このように、幅・リンク数・ピッチを実測すれば、現在装着しているゴムクローラーの実寸法を知ることが可能です。
クローラーの廃棄方法
ここでは、ゴムクローラーを例に挙げて、廃棄方法を簡単に紹介します。
不要となったゴムクローラーを廃棄したい場合、産業廃棄物として扱います。産業廃棄物は、廃棄物を発生させた事業者が責任をもって処理しなければなりません。
ゴムクローラーは、スチールコード、芯金、それらを覆うゴムなどで構成されており、廃タイヤと同様に「廃プラスチック」に分類されます。
処理の過程には、保管、運搬、処分(焼却や埋立)などがあります。各自治体の許可を受けた専門業者に委託して処理するのが一般的です。
処理の過程は産業廃棄物伝票(マニフェスト)で管理され、事業者には運搬・処分が確実に完了したことを確認し、送付された伝票を5年間保管する義務があります。
まとめ
重機のクローラーとは、重機が不整地を走行し、作業するうえで欠かすことのできないメカニズムです。「履帯」「無限軌道」「トラックベルト」などとも呼ばれ、自動車でいうところの車輪に当たる部分を指します。
クローラーの構造は、大まかに以下の3つから成り立っています。
- シュー
- スプロケット
- アイドラ
それぞれクローラーが移動するために欠かせない構成物です。
なお、クローラーとキャタピラーに構造上の違いはなく、同じ物と捉えて問題ありません。
重機のクローラーに関して理解を深めることは、建設業界に従事する人々にとって非常に重要です。本記事で紹介した知識を基に、より効果的に重機を運用し、安全かつ効率的に作業を行いましょう。