重機・建機の知識 2026.03.13

掘削とは?種類・方法・必要な資格までわかりやすく解説

建設工事・土木工事の現場で不可欠な作業の一つが掘削です。建築の基礎や道路整備、上下水道や電気配線の管路設置まで、多様な場面で行われます。

見た目は単純でも、地盤特性や目的に応じた工法・機材の選択と、周辺安全を確保する体制が不可欠です。

本記事では、掘削の基本、代表的工法、作業手順、必要資格をわかりやすく解説します。

掘削とは

油圧ショベルによる掘削

掘削(読み方:くっさく)とは、地面を掘り下げて土や岩を取り除く作業のことです。建築の基礎、道路、ライフライン工事まで、幅広い現場で不可欠な工程です。

例えば、住宅建設では、地盤調査の後に基礎のために所定の深さまで掘削し、コンクリートを打設します。道路工事でも、表層の土を除去し、舗装や配管に必要な掘削を行います。

掘削は一般に施工初期に行われることが多く、ここでの掘削精度(根切り深さ・法面形状・底面の平坦性)や土留め・排水の適否が、その後の型枠・配筋・コンクリート品質、さらには近隣地盤の変状リスクに影響します。

初期段階での管理が甘いと不同沈下や出来形不良の原因となるため、入念な計画と管理が不可欠です。地域によっては軟弱地盤や地下水の多い条件もあるため、専門知識と高度な技術が求められます。

掘削の流れ

掘削は、計画に沿って段階的に進める工程です。前後の流れを把握しておくことで、掘削が担う役割や意義をより理解できます。

本章では、掘削の前後工程を順に整理します。

掘削前

掘削前には、以下のような準備を行います。

  • 地盤調査・測量で土質、地下水位、周辺環境を確認する。
  • 施工計画を立て、必要な重機・人員を手配する。
  • 仮囲い・標識の設置、交通整理などの安全対策を実施する。

掘削中

下表に、掘削中の主な作業を整理しました。

作業 概要
掘削方法の選定 機械掘削・手掘り・特殊掘削など掘削の手段を現場条件に応じて使い分けます(詳細は後述の「掘削の種類」で解説)。
施工方法の選択 「開削工法」または「非開削工法」を規模や条件に合わせて採用します(詳細は後述の「掘削の方法」で解説)。
安全確保 山留めや支保工を設置し、周囲の崩壊や事故を防止します。

掘削後

掘削後は、残土の区分・搬出計画の適否や、埋め戻し時の層状施工・適正含水比・締固め度(転圧)が、出来形の安定性と安全性を左右します。これらが不十分だと不同沈下や側壁の変形、配管損傷につながるため、再利用・処分計画を含めた工程管理と品質管理が重要です。

以下に、掘削後の主な作業をまとめました。

作業 概要
残土処理 建設発生土は、性状や発生要因によっては産業廃棄物とみなされる場合もあるため、再利用区分や処理区分を含め、法令や自治体の指針に沿った処理が求められます。
埋め戻し 基礎や配管の設置後に土を戻し、層ごとに転圧して沈下や側壁の変形を抑制します。
仕上げ整地 道路や地盤の高さを調整し、次の工事に支障が出ないよう整えます。

残土の搬出や処分費用は工事コストに大きく影響するため、再利用や処分計画まで含めた管理が不可欠です。掘削は「掘って終わり」ではなく、残土処理や埋め戻しの品質管理まで含めて、建物やインフラの安全性・耐久性を支える重要な工程です。

なお、掘削後に行う「転圧」は、埋め戻し土の空隙を減らして地盤の支持力や沈下特性を安定させるうえで重要な工程です。転圧が不十分だと舗装の轍(わだち)や段差、配管の不具合が生じやすくなるため、設計条件に応じた管理が求められます。転圧の具体的な手順や注意点について、詳しくは以下の記事をご参照ください。

転圧とは?種類、使用する機械、手順、注意点を解説

掘削の種類

掘削の手段は機械掘削・手掘り・特殊掘削に大別され、現在は機械掘削が主流です。ただし、作業環境や工事規模によっては他の手段も必要となるため、それぞれの特徴を理解しておきましょう。

機械掘削

重機を用いた掘削作業

現代の建設工事で最も一般的なのが機械掘削です。油圧ショベルやブルドーザーなどの重機を使うことで大量の土砂を短時間で処理でき、大規模工事や基礎工事に適しています。

ただし、大型の重機は作業音が大きく、振動や排気など周辺環境への影響が課題となる場合もあります。そのため、都市部や住宅街では、小型の重機を活用して騒音・振動・排気を抑制します。

代表的な掘削機械には次のようなものがあります。

名称 概要
油圧ショベル 最も汎用性が高く、基礎工事から道路工事まで幅広く利用されます。
クラムシェル バケットを開閉させて土を掴み取る仕組みで、深い場所や狭い場所での掘削に適しています。
ブルドーザー 表層の土を削ったり押し出したりする作業に強みがあり、大量土砂の処理に活用されます。

油圧ショベルやブルドーザーについて詳細は、以下の記事をご参照ください。

油圧ショベルとは?特徴や種類、アタッチメント、免許を解説
ブルドーザーとは?特徴や種類、規格、免許を解説

手掘り

つるはしを用いた掘削

手掘りは、スコップやつるはしを使い、人力で地面を掘り進める方法です。現在では大規模工事での採用はまれですが、狭小部や微調整が必要な現場で役立ちます。

機械に比べ効率は下がる一方、目視で確認しながら精度高く施工できます。そのため、小規模な住宅工事や庭先の配管工事など、重機では対応しにくい現場では欠かせない手法となっています。

特殊掘削

浚渫工事

特殊掘削は、軟弱地盤、深掘削、水中、密集市街地など、特殊条件下で実施する掘削です。そのため、安全計画と高度な施工管理が前提となります。

代表的な工法には以下があります。

工法 概要
山留め掘削 支保工を設置し、周囲の崩壊を防ぎながら進めます。
トンネル掘削 シールド工法やNATM工法で山岳・都市部地下にトンネルを構築します。
浚渫(しゅんせつ)工事 河川・港湾の堆積土砂を除去し、水深を確保します。

掘削の方法

掘削工事では、地表をどのように開けて施工するかという観点から、「開削(かいさく)」と「非開削(ひかいさく)」の二つに大別されます。開削は、道路や地盤の表面を広く掘り開き、上から直接基礎や管路などを施工する方法です。一方、非開削は、地表を大規模に掘り返さずに地中にトンネルや管路を構築する方法で、推進工法やシールド工法などが代表例です。

前節で述べた「掘削の種類」は作業手段(手掘り・機械掘削・特殊掘削)を指します。これに対し、「掘削の方法」は工事全体の進め方を示す施工スタイルの分類です。両者は組み合わせて用いられるため、違いを整理して理解しておきましょう。なお、特殊掘削は現場条件によって「開削」にも「非開削」にも属する場合があります。

開削工法(オープンカット工法)

開削工法(オープンカット工法)の作業現場

地表を広く掘り開き、上から直接施工する方法で、基礎・道路工事に広く採用されます。

掘削の種類 補足
機械掘削 油圧ショベルやブルドーザーによる一般的な開削です。
手掘り 狭小部や小規模工事での補助的開削です。
特殊掘削 都市部の開削では周辺地盤の安定確保が特に重要となるため、山留め(支保工)の設計・施工や計測管理を組み合わせて安全性と出来形を確保します。

開削工法は地表から直接施工できるため、一般的には手順が比較的単純で、条件によってはコストを抑えやすい場合もあります。

非開削工法

非開削工法の作業現場

地表を大規模に開削せず、地下に管路やトンネルを構築する方法です。代表的な工法には、地中に管を押し進めて敷設する推進工法と、大断面トンネルを掘り進めるシールド工法があり、上下水道・ガス管・地下鉄などの施工で広く用いられます。

掘削の種類 補足
機械掘削 推進機やシールドマシンによる掘進です。
特殊掘削 トンネルや水域の施工でも地表からの立坑構築などで部分的に開削を併用するケースがあるため、区間ごとに最適工法を選定します。

非開削工法は、交通量が多く長時間の通行止めが困難な道路横断部や、河川・鉄道・幹線道路直下、地中埋設物が密集する都市部など、地表への影響を抑えたい場面で多く採用されます。専用機械と高度な施工管理が必要なためコストが上がる場合もありますが、社会的影響や占用条件を踏まえて総合的に判断されます。

掘削に必要な資格

ここまで掘削の種類や工法を説明しましたが、実際の作業には適切な資格が不可欠です。重機の規模や作業環境により必要資格は異なるため、事前確認が重要です。

以下に、掘削作業で関わりの深い代表的な資格を整理します。

車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転技能講習

機体質量3t以上の油圧ショベルやブルドーザーなどを運転する際に必要となる基幹的な技能講習です。労働安全衛生法令で定められた「車両系建設機械(整地・運搬・積込用及び掘削用)」に該当する機体質量3t以上の建設機械については、この技能講習の修了が運転業務の前提条件となります。

小型車両系建設機械の運転特別教育

機体質量3t未満の小型車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)を運転する際に必要となる特別教育です。特別教育を修了しておくことで、狭小地や小規模工事などでの小型建機の運転業務にも従事できるようになります。

酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者

地下や密閉空間など、酸素欠乏・硫化水素のおそれがある場所での作業では、所定の技能講習を修了した者を酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者として選任しなければなりません。

さらに、当該作業に従事する労働者には労働安全衛生法に基づく特別教育の実施が求められており、主任者技能講習の修了者については特別教育と一部内容が重複するため免除される取り扱いがある点にも留意が必要です。

参考:東京労働基準協会連合会「酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習のご案内」

土木施工管理技士(1級/2級)

施工計画・品質・安全管理を担う国家資格で、工事の規模・工種・発注者区分に応じて主任技術者/監理技術者の配置要件に関係します。

具体の要件は、発注者の仕様書・入札公告や、各省庁・自治体の技術者資格要領などで個別に定められており一律ではありません。受注前に一次資料で条件を確認しておくことが重要です。

※「土木施工管理技術者」は職種名の用法であり、資格名は「土木施工管理技士(1級/2級)」です。

参考:厚生労働省「土木施工管理技術者」

以上の資格は作業員の安全を守るだけでなく、工事全体の品質確保にも直結します。掘削に関わる際は作業範囲・重機規模・環境条件を特定し、必要資格の有無と配置要件を事前確認した上で、教育・点検・記録まで含めた体制を整備します。

掘削工事の注意点

掘削作業を実際の工事として行う場合は「掘削工事」と呼ばれます。掘削工事は計画・安全・環境を両立させる設計が前提です。

不適切な管理は重大事故や品質低下のリスクを招きます。具体的には、以下の点に十分配慮する必要があります。

地盤調査の徹底

土質・地下水位・支持層を把握し、崩壊・不同沈下のリスクを抑制します。軟弱地盤では山留め工法を組み合わせるなどの対策が求められます。

安全対策の実施

作業中に土砂が崩れるのを防ぐため、支保工・山留めの適切な設計・施工が前提です。基準逸脱は転落・埋没などの重大災害につながります。

周辺環境への配慮

掘削に伴う騒音・振動・粉じんを抑える工夫が必要です。防音シートや散水による粉じん対策、作業時間の調整などを行い、近隣住民への説明や苦情対応も計画段階から準備しておくことが大切です。

埋設物損傷リスクの管理

地中にはガス管や電線などが埋設されている場合があります。占用図面や探査、試掘で位置を確定し、立会い・標示・保護を実施します。また、万一に備え、緊急連絡・遮断手順を定めておくことが重要です。

ガス・酸欠対策

地下や閉鎖空間では、酸素不足や有害ガスの発生リスクがあります。換気計画や連続測定、入坑前後の確認を作業主任者の指揮下で実施しましょう。

重機の安全管理と運用

重機は強力な作業力を持つ反面、操作ミスや整備不足が事故の原因となります。

有資格者による操作、始業点検・定期点検の記録化、誘導員の配置と合図の統一、立入禁止区域の明示と後方死角対策などを徹底しましょう。

掘削工事では「安全・環境・効率」のバランスを取ることが重要な要素の一つです。適切な管理と準備が、現場全体の品質と安全性を支える基盤となります。

掘削の最新技術(ICT施工)

ICT施工による掘削現場

こうした安全・品質管理の徹底に加えて、最新のデジタル技術を導入し、作業精度や効率を高める取り組みも進んでいます。国土交通省が進める「i-Construction(※)」の施策により、掘削工事でもICT技術の導入が進みつつあります。

※:「ICTの全面的な活用」などの施策を建設現場に導入することによって、建設生産システム全体の生産性向上を図り、魅力ある建設現場を目指す取り組みのこと。

従来は作業員の経験や勘に大きく依存していた掘削作業も、デジタル技術を活用することで計測精度の向上や手戻り抑制によって効率と安全の改善が期待できます。

ICT施工は、本来「測量・設計・施工・管理」を一貫してデジタル化する仕組みですが、掘削工事においても以下のような活用が進んでいます。

活用例 概要
ドローン測量 短時間で高密度の地形データを取得でき、工程短縮と精度向上に寄与します。
ICT建機(マシンガイダンス/マシンコントロール) 油圧ショベルやブルドーザーに3D設計データを組み込み、自動制御や誘導機能で高精度な掘削を実現します。
施工の効率化と安全性向上 人手不足の補完・省人化、接触リスク低減に貢献し、現場生産性の向上が期待されています。

ICT施工はもともと測量・設計・施工・検査を3次元データで一体的に管理する取り組みとして整理されていますが、近年は国土交通省が掲げる『ICT施工から自動化施工・遠隔施工へ』という方針のもと、その延長上で建設機械の自動制御や遠隔操作を組み合わせた高度な施工も推進されています。油圧ショベルなどを対象にした自動化施工・遠隔施工は、ICT施工や i-Construction 2.0 で示される建設現場のデジタル化の一要素として位置づけられています。

将来的には、危険箇所での無人施工や、複数台の建機を遠隔から統合管理するといった運用も視野に入れながら、掘削作業の安全性と省人化の両立が図られつつあります。

ARAVでも、建設機械の自動化や遠隔操作技術に取り組み、掘削を含む建設現場の安全性向上と省人化に貢献していくことを目指しています。

今後、ICT施工は掘削工事においても普及が一層進むと期待されていますが、現場規模や地域によって導入状況には差があるのが実情です。こうした技術を活用しながら、施工管理の精度を高め、現場の安全性と効率性を両立させる手段として注目されている状況です。

掘削と親和性の高いICTの仕組みや導入によるメリット・課題を詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

ICT建機とは?種類や仕組み、メリットをわかりやすく解説
ICT施工のメリット・デメリットとは?課題も解説

まとめ

掘削は建設工事において地盤を掘り下げる基本的な作業であり、建物や道路、ライフラインなどの基盤をつくる上で欠かせない工程です。掘削には「機械掘削」「手掘り」「特殊掘削」といった種類があるほか、施工方法としては「開削工法」と「非開削工法」に大別されます。また、作業の内容によって必要な資格が法律で定められており、リスクに応じた安全管理の計画・実施・記録が求められます。

近年は、国土交通省が推進する「i-Construction」を背景にICT施工の導入が進み、掘削作業においても効率性と安全性の大幅な向上が実現しつつあります。今後はデジタル技術を活用した施工管理が、標準的な施工管理手法として活用されていくでしょう。

掘削の基本知識を正しく理解し、適切な手法・管理を徹底することで、安全で効率的な工事が実現します。

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