重機・建機の種類 2025.11.04

解体機とは?種類ごとの特徴や使い分け、導入時のポイントを解説

近年、都市再開発や老朽化建築物の増加により、解体工事の需要が高まっています。建物の構造や規模、立地条件に合った重機を選ばなければ、作業効率が落ち、事故の危険性も高まります。特に解体機は機種によって用途や性能が大きく異なるため、基本的な知識を押さえておくことが導入判断において欠かせません。

本記事では、解体機の基本的な仕組みから種類ごとの特徴、用途に応じた使い分け方、導入時のポイントまでをわかりやすく解説します。自社の工事内容に合った最適な機種選びの参考として、ぜひ最後までご一読ください。

解体機とは?

解体機による作業

解体機とは主に油圧ショベルに取り付けて使用される解体用専用アタッチメントを指し、コンクリートの破砕や鉄骨の切断など解体作業の中心的役割を担います。なお、現場や文脈によっては、解体に用いる重機全体を指して「解体機」と呼ぶこともあります。

一般的には既存の油圧ショベルに専用のアタッチメントを装着することで、解体用の機能を持たせるスタイルが多く採用されています。アタッチメントを交換することで、1台で複数の作業に対応できる柔軟性があります。

また、対象となる建物の構造が木造・RC造(鉄筋コンクリート造)・S造(鉄骨造)など多岐にわたるため、状況に応じた解体機の選定が不可欠です。現場の安全性や作業効率、コスト面の最適化を図るためには、適切な機種選びと運用知識が求められます。

なお、「油圧ショベル」の基本的な性能や種類、操作に必要な資格については、以下の記事で詳しく解説しています。

油圧ショベルとは?特徴や種類、アタッチメント、免許を解説

主な解体機の種類と特徴

解体工事には、現場条件や対象建物に応じた解体機を選ぶことが重要です。機種ごとの特徴を理解することで、安全かつ効率的な工事が実現できます。

本章では、解体機の代表的な種類とその特徴を詳しく解説します。

圧砕機(クラッシャー)

圧砕機(クラッシャー)による解体作業

圧砕機(クラッシャー)は、油圧の力でコンクリートをはさみ込み、強力に砕くアタッチメントです。ビルやマンションなどに多く使われている鉄筋コンクリート構造物の柱・梁・壁などを効率よく崩すことができます。

圧砕機は、「大割タイプ」と「小割タイプ」の2種類に分けられます。大割タイプは建物の主構造部分を効率的に崩すのに向いています。一方の小割タイプは、主に破砕されたコンクリート片をより扱いやすいサイズに細分化(細かく砕くこともある)する用途で使用されますが、細かい処理工程の有無は、現場状況や設備により異なります。

また、一部のモデルには鉄筋切断用のカッターが装備されており、鉄筋コンクリートの分別解体が可能です。

鉄骨カッター

鉄骨カッターによる解体作業

鉄骨カッターは鋼材の切断に特化したアタッチメントで、鉄骨造建物の解体に活躍します。特に工場や倉庫、鉄骨フレームの建築物でよく使用されています。

厚みのある鋼材にも対応できる高い切断能力が大きな特徴です。用途に応じて、刃の形状やサイズを最適化する必要があります。

ブレーカ

ブレーカによる解体作業

ブレーカは、油圧による打撃で硬質な構造物を破壊するアタッチメントです。頑丈なコンクリート構造物や岩盤の破砕に力を発揮します。

そのため、ブレーカは主にコンクリート構造物の破砕や基礎部分の解体や施工で広く使われます。特に橋脚(橋を支える柱や土台)や擁壁(土を支える壁)、道路基礎の解体に力を発揮しますが、打撃音や振動が大きいため、住宅街や都市部では適切な防音・防振対策が求められる場合があります。

グラップル

グラップルによる解体作業

グラップルは、解体後に発生する鉄くずや木材、廃材などをつかんで移動させる作業に使われるアタッチメントです。分別や積込み作業の効率を飛躍的に向上させます。

爪の本数や開閉構造によって、幅広い用途に対応可能です。運搬対象の形や重量に応じて機種選びを慎重に行うことが重要です。

フォーク(つかみ機)

フォーク(つかみ機)による解体作業

フォーク(つかみ機)は、木造住宅など比較的軽量な建材の解体現場で広く使われるアタッチメントです。掴んだ素材を保持できるため、作業中の落下事故を防止しやすいのが利点です。

フォークには、「固定式」と「回転式」の2種類が存在します。固定式は、安定性を重視した作業に向いています。一方の回転式は、角度を調整しながら精密な掴み動作が可能です。

以上、解体機の代表的な種類と特徴を解説しました。現場の条件や作業内容に最も適したアタッチメントを選ぶことで、解体作業の安全性や効率、コスト削減を目指せます。

対象建物別:解体機の使い分け

解体作業は、対象となる建物の構造によって最適な解体機が異なります。下表に建物の構造ごとに適したアタッチメントの組み合わせとその理由を一覧にしてまとめました。

構造 適した解体機 解説
木造 フォーク、グラップル 軽量で扱いやすいアタッチメントが適しており、木材の柱や屋根の撤去に有効です。材料の掴みや積込み作業にも対応可能です。
RC造 圧砕機(大割・小割)、ブレーカ 大割クラッシャーで構造体を大まかに破砕し、小割で破片を処理する2段階の作業が効率的です。基礎部にはブレーカの打撃力が有効です。
S造 鉄骨カッター、ブレーカ 鋼材の切断には鉄骨専用カッターを使用するのが一般的です。基礎やコンクリート部分の処理にはブレーカを組み合わせて対応することが多いです。

建物の構造に合った機材を使うことで、作業スピードと安全性が大幅に向上します。

解体機の選定でよくある失敗と対策

2種類の解体機による作業

解体機の選定ミスは、作業効率の低下や事故リスクの増加につながります。本章では、解体機の選定でよくある失敗例と対策方法を解説します。

本体と解体機の不適合

解体機が重すぎると、油圧ショベルの動きが鈍くなり、バランスを崩して転倒する危険があります。

これらの失敗を防ぐには、メーカーが公表している「適合一覧表」を事前に確認することが大切です。解体機の重量だけでなく、油圧の圧力や流量が本体の仕様と合致しているかも必ずチェックしましょう。

作業対象に合わない機器の使用

鉄筋コンクリート造の建物に鉄骨用カッターを使い、破砕に手間取り時間とコストが増えた例もあります。

この失敗を回避するためには、解体対象の材質や構造(RC造・S造・木造など)を事前に調査したうえで最適な解体機を選定することが重要です。

性能過剰によるコスト増

高出力の大型機は、処理能力が高い一方で、レンタル費用や輸送コストが高額になる傾向があります。特に、木造住宅のような比較的小規模な現場では、必要な性能を超える大型機を使用すると、燃料消費や維持管理の面でもコストがかさむ場合があります。しかしながら、やや余裕を持った性能設定は、短期的な作業効率やトラブル対応力の向上につながることもあり、コストと効果のバランスを十分に検討することが重要です。

解体対象の建物の構造や延床面積、作業頻度を考慮し、必要な性能の目安を把握したうえで、総合的に最適な機械を選定しましょう。

多用途アタッチメントに頼りすぎるリスク

一見便利に思える万能型アタッチメントですが、全工程を1台で対応しようとすると、作業ごとに最適な性能を発揮できないため、結果的に効率が下がるケースがあります。

例えば、破砕・切断・運搬といった異なる作業では、それぞれに適したアタッチメントの機能や形状が必要です。解体工程を段階的に分け、それぞれに最適なアタッチメントを使い分けることで、作業効率と安全性を高められます。

以上、4つの失敗例と対策を把握しておき、解体機の選定ミスを防ぎつつコストや事故リスクを抑えましょう。

解体機を導入する際のポイント

最後に、自社で解体機を導入するうえで意識しておきたいポイントを4つ紹介します。

購入とレンタルの選択肢

解体機の使用頻度が少ない場合は、レンタルの活用が費用を抑えるうえで有効です。レンタル機は定期的に整備されており、初期投資やメンテナンスの手間も軽減されるため、スポット利用に適しています。

一方で、長期間の使用を前提とする現場や特別な仕様が必要な作業では、解体機の購入が、コスト面・作業効率の両面で有利になるケースもあります。

安全対策と日常点検の徹底

アタッチメントの破損や油圧系統の不具合は、重大事故につながるおそれがあります。作業前後には必ず点検を行い、油漏れや緩んだボルト、異音などの異常を見逃さないようにしましょう。

また、オペレーターは重機の操作に集中しているため、死角が生まれやすくなります。そのため、第三者の動線や資材の落下などに注意を払える誘導員を配置し、挟まれ事故や接触事故のリスクを軽減することが大切です。

現場環境との適合性

作業スペースが限られている現場では、小回りの利く軽量・コンパクトな解体機が選ばれる傾向にあります。反対に、広い現場で高負荷の作業を行う場合は、出力の高い大型機が必要です。

また、住宅地や商業地が近い場合には、騒音や振動が少ないモデルを選ぶことで近隣への配慮も可能になります。解体機を導入する際は、機器の性能だけでなく、現場特性との相性も見極めることが重要です。

まとめ

解体工事を円滑かつ安全に進めるうえで、解体機の的確な選定は欠かせません。単にパワーのある重機を導入するだけではなく、対象となる建物の構造や規模、作業環境に合わせて、最も適した機種とアタッチメントを選ぶことが重要です。

また、複数のアタッチメントを作業ごとに使い分けることで、作業時間の削減や限られた人員での対応にもつながります。

このような細やかな判断と準備が、結果的に工期の短縮や予算内での施工、安全管理の徹底につながります。現場条件を踏まえ、計画的に解体機を選定・運用することが、工事成功のカギです。

重機に取り付ける代表的なアタッチメントの種類や特性については、以下の記事でさらに詳しく紹介しています。

重機のアタッチメントとは?種類と特徴、使用時の注意点を解説

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