重機・建機の種類 2024.10.15

クローラークレーンとは?種類や4.9tクラスの需要、免許を解説

クローラークレーンは、クローラー(履帯)を使用して移動するクレーンで、主に建設現場や大型土木工事などで活躍しています。クローラークレーンの特徴は、重い荷物を持ち上げながら移動できる点や、不整地や泥地などの悪条件でも安定して作業できる点にあります。地盤が不安定な場所や、長期間にわたる大規模な工事などで重宝される重機です。

この記事では、クローラークレーンの基本的な特徴や種類について詳しく解説します。クローラークレーンを操作するために必要な免許・資格についてもまとめました。クローラークレーンの導入を検討している方や、クレーンに関する知識を深めたい方は、ぜひ参考にしてください。

クローラークレーンとは?

作業するクローラークレーン

クローラークレーンとは、移動式クレーンのうち、走行体が起動輪・遊動輪・下部ローラー・上部ローラーおよびクローラー(履帯)を巻いた装置で構成された台車の上にクレーン装置(上部旋回体)を架装した形式のものを指します。なお、移動式クレーンは、以下のように定義される重機です。

  • 荷を動力を用いてつり上げ、これを水平に運搬することを目的とする機械装置で、原動機を内蔵し、かつ、不特定の場所に移動させることができるもの

クローラークレーンは、ホイールクレーンと比べて左右のクローラーの接地面積が広いため接地圧が低く、荷重分散が均一になるため安定性に優れており、不整地・比較的軟弱な地盤での作業や重い物を持ち上げる作業などに適しています。

その一方で、走行速度が遅い上に公道を走行できず、現場間の移動はトレーラなどに搭載して輸送しなければなりません。一定以上の質量になると、道路走行や積載の制限によって分解して輸送し、現場で再び組み立てる必要があります。

クローラークレーンは、起動輪の回転力によってクローラーの上を下部ローラーが転がっていくことで走行する構造です。ディーゼルエンジンで駆動される油圧ポンプで発生した油圧が、ロープの巻き取りをはじめ、旋回や走行など各作業装置の油圧モーターに伝達することで作動します。この技術は、1970年代に日本で開発され、普及しました。

そのほか、原動機・巻上装置・運転室など、操作装置を含む全装置が上部旋回体に装備されているのもクローラークレーンの特徴です。

クローラクレーンの中にはテレスコピック(※1)ブームを取り付けたものもありますが、4.9tクラスを除くほとんどの機種がラチス(※2)ブームであるため、「Lattice Boom Crawler Crane」の頭文字を取って、クローラクレーンを「LBCC」と呼ぶこともあります。

※1:重なり合った筒が伸び縮みする構造のこと。
※2:井桁を連続に組んだ構造のこと。菱格子とも呼ばれる。

クローラークレーンの移動を支えるクローラーについては、以下の記事で詳細に解説しています。クローラークレーンへの理解を深めるために併せてご一読ください。

重機のクローラーとは?移動を支える構造やキャタピラーとの違い

参考:一般社団法人 日本クレーン協会「移動式クレーンの知識」
一般社団法人 日本建設機械工業会「建設機械紹介一覧|クローラクレーン」

クローラークレーンの種類

クローラークレーンには、アタッチメント(重機に取り付けることが可能な装置・ツール)の種類によって様々なタイプがあります。

本章では、クローラークレーンの代表的な種類として、4つのタイプの概要・特徴を解説します。

ジブ付きクローラークレーン

ジブ付きクローラークレーンの全体像

最も基本的な斜ブーム(主ジブ)付きのクローラークレーンです。

ジブとは、移動式クレーンの上部旋回体の一端を支点とした腕のことです。主ジブの先端にさらにジブを取り付けたものを補助ジブと呼ばれています。移動式クレーンの主ジブは、一般的にブームと呼ばれることが多いです。

参考:厚生労働省「小型移動式クレーンに関する知識」

補助ジブ付きクローラークレーン

補助ジブ付きクローラークレーンの全体像

主ジブの先端にさらにジブを取り付けたクローラークレーンです。

工場建築の鉄骨建方(現場で鉄骨などの構造部材を組み立てる作業)のようなケースでは、先に左右の柱を建て、次に大梁をかけ、その上で大梁を越えて小梁をかけることになります。このような作業では、柱や大梁を主ジブで吊り、小梁は補助ジブで吊るのが基本です。

タワークレーン

主ジブを垂直に立ててタワーとして固定し、その先に非常に頑丈なジブを取り付けたクローラークレーンです。補助ジブ付きクローラークレーンとの大きな違いは、主ジブに取り付けたジブを動かして引き込みをする点にあります。

タワークレーンは、コンクリートプレファブ住宅の組み立て作業のように、吊り荷の質量が揃っているケースでの使用に適しています。

ラッフィングタワー

ラッフィングタワーの作業風景

ラッフィングタワーは、タワークレーンのタワーを少し傾けた形で、いわば可傾式のタワークレーンです。通常のクローラークレーンよりも建物に接近して作業でき、より大きな揚程・作業半径が得られるため、ビルの建設などに使用されることが多いです。

ラッフィングクレーンには、頑丈な補助ジブや補助ジブ用の起伏装置が付いているタイプもあります。このタイプは補助ジブも起伏する上に、主ジブで吊ることも可能なので非常に便利です。

油圧ショベルやブルドーザー、ホイールローダなどクローラークレーン以外の重機に取り付けられるアタッチメントについて詳しく知りたい場合は、以下の記事をご覧ください。

重機のアタッチメントとは?種類と特徴、使用時の注意点を解説

クローラークレーンの4.9tクラス

クローラークレーンには、小さいものから大きいものまで様々なサイズがあります。その中でも4.9tクラスの機種については、メーカー各社が開発・製造・発売している上に、中古車も数多く出回っており、日本国内での需要が高いです。

本章では、4.9tクラスのクローラークレーンの需要や具体的なメーカー・機種、ブームの構造に採用されるテレスコピックについて詳しく解説します。

4.9tクラスの需要

日本において4.9tクラスのクローラークレーンの需要が高い理由として、まず法規制への対応が挙げられます。日本の労働安全衛生法に基づき、吊り上げ荷重が5t以上の移動式クレーンを操作するためには、「移動式クレーン運転士」免許の取得が必要です。

しかし、4.9tクラスのクローラークレーンは吊り上げ荷重が4.9t以下であるため、上記条件には該当せず、操作にあたって「移動式クレーン運転士」の免許は求められません。4.9tクラスのクローラークレーンを操作する際は、比較的取得が容易な「小型移動式クレーン運転技能講習」の資格で済みます。

つまり、4.9tクラスのクローラークレーンを採用すれば、操作にあたって求められる資格要件が緩和されます。そのため、より多くの人がクローラークレーンを操作できるようになり、現場での人材確保が容易になるメリットがあります。

また、都市部や小規模な建設現場では、大型のクローラークレーンが必要ないケースも多く、4.9tクラスのクローラークレーンが採用されやすいです。狭いスペースでの作業や軽量な物を持ち上げる作業には、4.9tクラスのクローラークレーンが特に適しています。

参考:公益財団法人 安全衛生技術試験協会「受験資格(移動式クレーン運転士)」
一般社団法人 労働技能講習協会「小型移動式クレーン運転技能講習」

メーカーと機種

次に、4.9tクラスのクローラークレーンを開発・製造・提供する主要なメーカーと機種の一例をピックアップして紹介します。

  • 日立建機日本
  • コベルコ建機
  • 前田製作所

なお、クローラークレーンには様々な機種があり、本章で取り上げていないメーカー・機種も数多く存在します。本記事を参考に、ご自身・自社の用途に適したクローラークレーンを選びましょう。

日立建機日本

日立建機日本では、クローラークレーンをはじめとする重機の販売・レンタル・メンテナンスまで、日本全国に建設機械の総合サービスを提供しています。

下表に、日立建機日本が提供する4.9tクラスのクローラークレーンの基本的なスペックをまとめました。

型式 最大定格総荷重 ブーム長さ
TX75US- 4.9tx2.1m 4.5m〜16.07m

参考:日立建機日本株式会社「4.9tテレスコピッククレーン|TX75US-B」

コベルコ建機

コベルコ建機では、高強度のテレスコピックブームを搭載した小型クローラークレーンを開発・製造しています。地下鉄工事をはじめとする狭い現場で、ふところの深いクレーン能力が期待できます。

また、独自開発したiNDrシステム(「ノイズ除去」「ダスト除去」という2つの機能を併せ持つ冷却システム)の搭載によって、大幅な低騒音効果も期待されています。

下表に、コベルコ建機が提供する4.9tクラスのクローラークレーンの基本的なスペックをまとめました。

型式 最大定格総荷重 ブーム長さ
CK80UR-3 2.93t×3.0m 3.56m~10.80m
CK90UR-3 4.9t×2.1m 4.25m~14.77m
CK120UR-3 4.9t×2.5m 4.25m~14.77m

参考:コベルコ建機株式会社「荷役作業用|小型テレスコピッククローラクレーン」

前田製作所

前田製作所では、以下のような観点からオペレーターの立場に立った快適装備をアピールするクローラークレーンを開発・製造しています。

  • 砂・埃などが詰まりにくいリンクスライドドア採用
  • 走行ペダル廃止による運転席足元のスペース拡大
  • アクセサリ電源の標準装備

また、従来の機種と比べてコンパクト化やメンテナンス性の大幅アップも実現しています。

下表に、前田製作所が提供する4.9tクラスのクローラークレーンの基本的なスペックをまとめました。

型式 最大定格総荷重 ブーム長さ
CC1485S-1 4.9t×3.2m 4.745m~7.625m~10.505m~13.385m~16.265m

参考:株式会社 前田製作所「マエダ製品|【クローラクレーン】CC1485S-1」
株式会社 前田製作所「テレスコピッククローラクレーン |CC1485S-1」

テレスコピック

テレスコピックの全体像

4.9tクラスのような小型のクローラークレーンのブームについては、テレスコピックが採用されているケースが多いです。

テレスコピックは、大きさの異なる箱や筒を重ね合わせ、引き出すと伸び、収納すると縮むことで全長を変えられる構造です。望遠鏡から派生した技術ですが、クレーンなどの重機をはじめ、カメラのズームレンズやラジオのアンテナなどにも活用されています。

メーカーや機種によってテレスコピックの伸縮には様々な方法が採用されていますが、基本的には油圧シリンダやワイヤロープで伸縮する構造です。

テレスコピックの構造は、クローラークレーンのほか、ラフタークレーン・オールテレーンクレーンのブームや、油圧ショベルのアームなどにも用いられています。

ラフタークレーンやオールテレーンクレーンについて詳しく知りたい場合は、それぞれ以下の記事で解説していますので、併せてご覧ください。

ラフタークレーンとは?サイズやメーカー、免許を解説
オールテレーンクレーンとは?ラフタークレーンとの違い、免許を解説

クローラークレーンの免許

クローラークレーンを操作するためには、移動式クレーン運転士に関する資格が必要です。操作するクローラークレーンの吊り上げ荷重によって、必要な資格は以下の通り異なります。

吊り上げ荷重 必要な資格
5t以上 移動式クレーン運転士免許
1t〜5t未満 小型移動式クレーン運転技能講習
1t未満 移動式クレーンの運転の業務に係る特別教育

クローラークレーンの場合、吊り上げ荷重2.9t以上の機種がほとんどであるため、基本的には「移動式クレーン運転士免許」もしくは「小型移動式クレーン運転技能講習」のいずれかの取得が求められます。

移動式クレーン運転士免許の概要は、下表の通りです。

資格・教育の情報 内容
費用 130,000円〜160,000円前後
試験内容・日数 【学科(13:30~16:00、2時間30分)】

・移動式クレーンに関する知識:10問(30点)
・原動機及び電気に関する知識:10問(30点)
・関係法令:10問(20点)
・移動式クレーンの運転のために必要な力学に関する知識:10問(20点)

【実技(時間は午前・午後に分けて受験票に記載)】
・移動式クレーンの運転
・移動式クレーンの運転のための合図

受験資格 18歳以上
申込先 公益財団法人安全衛生技術試験協会、各地の安全衛生技術センターなど
参考HP https://www.exam.or.jp/exmn/H_shikaku232.htm

続いて、小型移動式クレーン運転技能講習の概要をまとめました。

資格・教育の情報 内容
費用 25,000円〜50,000円前後
日数 通常20時間(学科13時間、実技7時間)
受講資格 18歳以上
申込先 都道府県労働局長登録教習機関
参考HP https://www.komatsu-kyoshujo.co.jp/KkjReservation/Subjects/CourseListSkillSmallCrane.aspx

移動式クレーンの免許について、以下の記事で取得の流れや試験の内容についてまとめています。クローラークレーンを運転する予定がある方はぜひご一読ください。

移動式クレーン免許とは?取得の流れや費用、学科・実技試験の内容

なお、クローラークレーンについては、道路交通法に基づく各種運転免許(例:普通免許、中型免許、大型免許など)を取得しても公道は走行できません。

建設現場ではクレーン以外にも様々な重機が活躍しており、それぞれの運転・操作に応じた免許・資格が設けられています。

建設機械・重機の操作・運転に必要な免許・資格について理解を深めたい場合は、以下の記事で詳しく解説していますので、併せてお読みいただくことをおすすめします。

建設機械・重機の免許・資格一覧!費用や日数、受験資格

まとめ

クローラークレーンは、クローラー(履帯)によって、様々な地形で安定した作業を行える重機です。特に不整地や軟弱地盤での作業において、優れた機動力と安定性が評価されています。

クローラークレーンを導入・運用する際は、現場の状況や作業内容に応じた適切な機種を選択することが重要です。また、操作には高度な技術が求められるため、適切な免許を取得し、安全に運用することが求められます。

クローラークレーンの特徴を十分に理解し、正しく活用することで、作業の効率化や安全性を確保しましょう。

おすすめの記事

関連記事 Related Articles